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Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

2018年5月

パナソニック株式会社 様


点群データとGP4の融合検証により、
CPSを実現したレイアウト・工程シミュレーションへ

-点群データ+GP4により、精度の高い工程シミュレーションを実現-

パナソニックは、1918年に松下幸之助が創業した松下電気器具製作所を起源とし、人の暮らしの向上と社会の発展に貢献することを掲げた事業活動を進めてきた。2018年に創業100周年を迎えた同社は、今日まで蓄積してきたノウハウや知見、手法、ソリューションなどを総動員し、国内外の全製造拠点強化を目指した『SMARTManufacturing』を推進中だ。各工場のモノづくりQCDの飛躍的向上を牽引する生産技術本部では、点群データとGP4の融合を図り、製造拠点強化を具現化する工程シミュレーションの工数削減と精度アップを同時に実現した。

導入事例キーワード
設計品:
部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、住宅関連機器
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS(DMU,MFG,GP4)

セル生産方式への移行に伴って検証ツールを駆使


小柴 慎一 様
生産技術本部 設計・製造プロセス革新センター
製造革新ソリューション開発部
製造ソリューション開発二課
主任技師

パナソニックの中で、開発・製造を担う各事業部は、市場変化に対応した生産体制形成を目指し、恒常的な革新を継続してきた。さらに、その進化に呼応する形で、工場内のレイアウトや工程シミュレーションのためのツールを成長させ続けてきたのである。

生産技術本部設計・製造プロセス革新センターは、パナソニックの各工場のモノづくりQCDの飛躍的向上を実現することを使命とする部門だ。そこで、革新的ソリューションを築き展開することで、各事業部門の経営に貢献。具体的な先進事例を築きながら、その啓蒙と普及に努めてきた。

同社は2001年、20世紀型の大量生産型コンベア生産から、多品種小ロットに対応し、軽くて速いものづくりを目指した『セル生産革新』を断行。さらに2005年には、最速/最安モノづくりに向けた『Nextセル生産革新』に歩を進めた。ここで、整流化されたモノの流れや標準作業、材料物流の効率化、在庫適正化などのために、Excelベースで検証ツールを作成。生産ラインや材料の荷姿などの情報から、材料運搬情報などを算出する仕組みを築いたのである。製造革新ソリューション開発部製造ソリューション開発二課主任技師小柴慎一氏はこう語る。

「この段階の検証は、まだ静的なものでした。そこで、さらに生産革新を加速させるために、動的な検証を実現するシミュレーションに取り組みたいという思いが膨らんでいきました」

というのもSCM全体に着目する中、生産性向上を検討するためには、構内物流、工場内のレイアウト配置を考える必要が高まり、人の動きを中心とした動的な検証が不可欠となっていたからだ。


動的な検証を目指してGP4の導入・活用を進める

2009年には、『Nextセル生産革新』の思想を継承しながら、さらに「イタコナ」思想を導入した『A(Advanced)-Nextセル生産革新』がスタートした。これは、原価を構成する部材を金属やプリント基板、樹脂やダイカストなどの原材料である板金や積層板、ペレット、粉体など、文字通り「イタ」や「コナ」レベルまで遡って検証・分析。よりきめ細かく「あるべき原価」を見つめ直すことで、経営の質的変革を追求しよう、という考え方だ。

「2013年、そんな流れの一環として、より『人の動き』にフォーカスした動的な検証を進めることを目指しました。そこで、高精度な解析で明確な根拠を示し、視覚的把握により改革を加速させるツールとしてGP4を導入したのです」

GP4による材料物流プロセスの一例として、図「材料物流でのムダ取り(下部)」にある工場で従来2名の人員が、左右2方向2名で搬入していた動線の最適化を検証した案件が上げられる。ここでは、材料運搬の動線が一筆書きになるようレイアウト変更し、1名での作業に絞り込んだ。それに伴って、歩行距離も470mから359mに削減することができたのである。


レイアウト検証により歩行のムダを見える化し、動線を「2名:470m」⇒「1名:359m」に改善。

また図「工程編成をシミュレーション(下部)」では、従来8名で運営されていた工程を、作業手順やレイアウトなど工程バランスを見直し5名にできないだろうか、という工程最適化案件でもその妥当性を検証・証明した。

「この案件では、振り向き作業や最終工程の人員を排し、コンパクトなレイアウトに変更しました。簡単にレイアウト変更が行え、作業者の動線も追従して変化してくれるので、さまざまな条件によるトライアルが可能になる点もGP4の魅力ですね」

また、計算上の予想値を提示するだけだった旧来のExcelベースのツールに対して、人の動きがアニメーションで視覚化できるので、生産サイドからもより深い理解を得られた。さらに、経営層の意思決定支援にも役立つので、ゴーサインまでのアイドルタイムも圧縮された。


GP4によるコンパクト化、省人化の検討。


現実の生産環境に則したシミュレーションに点群データを活用

2015年には、第3ステップとして、工場内の空間や設備などの実物形状を捉えたXYZ座標値の集まりを、データとして捉えた点群テクノロジーに着目。点群データを取り込んだ3D空間の中で、設備やラインの変更、新たな設備導入、人の動きの検証を図るために、点群データとGP4を連携させた検証を行った。

まず3Dレーザスキャナで、実際の工場空間やその内部の柱や配管などをスキャンし、そこで得られた3D点群データを『InfiPoints』(株式会社エリジオン)で可視化した。

「レイアウト検証のために、ある工場内の設備を仮想的にすべて撤去しました。次いで、何もなくなったその空間に新しい設備モデルを配置して、設備の可動部と照明や配管など天井構造物との干渉の事前確認を実施しました。さらにGP4で工程構成をシミュレーションして、時間内の生産可否の確認を行いました」

またある工場では、レイアウトや干渉とともに、現状10名の陣容を4名に省人化するプランの妥当性の評価・定量化を実施した。

「ここでは、レイアウト図面や現場作業手順の撮影など、事前調査を実施。GP4で人の動きを解析しながら、点群データをベースに干渉などをチェック。GP4と可視化された点群データ相互の摺り合わせの中で、検証アウトプットを導きました。その結果、天井高や配管等の干渉の影響を受けることなく、4人体制でも生産が可能であることが判明しました」

こうして、工場設備の刷新という大がかりな事案の着工前に、あらかじめ問題の芽を摘む動きが実現した。新たな投資効果の定量化や妥当性を確認することができた結果、工数削減と量産立ち上げの早期化で検証通りの成果を達成。自動化効果・150%アップ、生産立ち上げ期間・50%カットが実現したのである。


さらに自在でシームレスな検証環境の創出へ

とはいえ、点群データを扱うツールとGP4がそれぞれ別個に併存している状況は、使い勝手に問題が残る。つまり、2つのツール間で反映を繰り返すキャッチボールの中で、モデルの制作や修正の手間が2重作業になるなど工数的負荷が大きく、さらに相互ツール間での反映時に精度が下がることなどが課題となっていたのである。

「可視化された点群データの生産エリア内で、そのままGP4を動かすことができれば、さまざまな課題が一挙に解決します。そこで、富士通グループの『GP4』開発の方々と『InfiPoints』の提供元であるエリジオンの協力を仰ぎ、両ツール間をシームレスに架橋する環境の構築をお願いしました」

元来別々に開発されたソリューション同士の連携は、相応の難しさを伴う。しかし、パナソニックを中心に、三位一体となった連携プレイが功を奏し、GP4上で点群データとの融合検証を行う環境が完成。工場の床面や天井・柱に設置された配管や掲示物まで、リアル空間そのままに再現された点群空間で、スムーズなGP4の活用が可能になり、操作性と工数、正確性が飛躍的に向上した。

「以前は工場内の設備をすべてモデル化していました。しかし、実際のGP4での検証には、人が動いたり作業したりする空間の形状だけをモデル化すれば十分なわけです。そこで、リアルな現場感を残しつつ、GP4のモデルを必要最小限に絞り込むことで、大幅な工数削減が図れます。この取り組みが功を奏し、ある案件では、従来30時間を要していたモデリング時間を、3時間にまで圧縮することができました」

製造革新ソリューション開発部では今後、IoTやAR/VR等の技術融合を進め、フィジカル空間の各種データを基盤に、サイバー空間で大規模なデータ処理を実行。そこで得られた成果を、再度リアルなビジネスに反映させるCPS(Cyber-Physical System)の進化を牽引していきたいとしている。

【会社概要】

社名:パナソニック株式会社

  • 本社:〒571-8501 大阪府門真市大字門真1006番地
  • 会社設立:1918年3月7日
  • 従業員数:257,533人(2017年3月31日現在)
  • 事業内容:部品から家庭用電子機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器等に
    至る生産・販売・サービスを行う総合エレクトロニクスメーカー
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