株式会社アマダ(以下:アマダ)は、後工程で生じる負荷をより上流工程で解決しておくことで、出図後の設計変更やそれに伴う手戻りなどを排除するために「フロントローディング」を指向。そのためのツールにVPSを選定した。負荷を出図前にもってくる同施策は見事に功を奏し、製品開発期間半減を達成。さらに、従来から実施していた組立検討に加えて、ハーネスの事前検討やバーチャル試作などにもVPSを活用し、間接業務の16%削減や物流経費19%カット、保守サービスの効率アップなど、大きな成果を獲得した。
導入事例キーワード | |
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設計品: |
金属加工機械・器具
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ソリューション: |
PLMソリューション
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製品: |
VPS
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川口 晃司 様
株式会社アマダ
板金機械製造本部
プロト推進部 部長
アマダは、約80社の子会社・関連会社によるグループ・シナジーを発揮しながら、金属加工機械・器具の製造・販売・賃貸・修理・保守・点検・検査などを広範に推進。板金機械事業、プレス事業、切削・構機事業、工作機械事業などの加工機械を中心に、制御ソフトウェアや周辺装置、金型、メンテナンスに至るトータル・ソリューション・サービスを提供する金属加工機械の総合メーカーだ。
主力となる富士宮工場(静岡県)が製造する、レーザー加工機やベンディングマシンなどの板金機械は国内シェアの約65%を占めており、同社のリーディング・カンパニーとしての地位を揺るぎないものとしている。
このようなアマダの優位性を担ってきたのは、高い製品開発力や技術力とそれを支える積極的なICT戦略だ。
「当社は強力なトップダウンの下、2004年に3D-CADを導入。以降『出図はすべて3Dで行う』というルールの徹底を図りました」と板金機械製造本部 プロト推進部 部長 川口 晃司氏は語る。
「例えば、NC制御で板金の打ち抜きを行うタレットパンチプレス製品などは、2,000点に及ぶ部品を要します。実は3D-CADを導入して間もなく、モジュール組立図を作成するとレスポンスが重たくなってまったく動かない…、という状況が問題化しました。その解決策を探ろうと訪れた展示会でVPSに出会い、早速導入を決定。3Dデータによる仮想的なものづくりや動作検証への活用を進めました」
同社はこれらの環境整備を基盤として、2007年に設計・製造部隊を富士宮に結集したのを契機に、VPSの活用を一層進化させていった。
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出図までのVPS活用シーン
VPSによる組立動画で徹底的な事前検証を実施
以上の経緯によってフロントローディングを推進したアマダでは、旧来出図後にかかっていた負荷をより上流工程に前倒しすることによって、出図までに多くの問題点の洗い出しとその解決対応が実現した。そのおかげで、以前は概ね2年を要していた開発~市場投入までの流れを、約11カ月にまで短縮することができたのである。
「国内外の大きな製品展示会は、10~11月の時期に実施されるケースが多くなっています。そこでモニター展示した新製品を、半年後の翌6月にリリースすることができるので、市場における競争優位性をさらに強化することができました」
もちろん、フロントローディング導入による恩恵を享受したのは、開発や設計部門だけではない。不具合対応などを前倒しして、後工程での手戻りを排除することができた結果、生産技術部門では全体業務の17.3%、リソース・工数に関しても月平均495時間の削減を実現した。資材部門でも同様に、全体業務の9.6%、月平均400時間カット。生産管理部門においても、全体業務30%、月平均480時間の削減を達成した。
「事前検証を実施したことによって設計の手戻りが低減でき、間接業務全体で約16%の業務削減が可能になりました」
VPSを物流形態の事前検証に活用しコスト低減につなげる
最後に川口氏は、今後の展望を以下のように締めくくった。
「現在、開発に忙しい設計者をサポートする意味で、構想段階からVPSによる3D評価を進め、彼らにフィードバックしています。しかし今後さらに、設計者自身が上流段階から自らのデスクトップ上でハーネスの3D検討を実施していく流れが定着していけば、さらに大きな効率化が図れるはずです。そんな開発文化の醸成や環境支援にも力を注いでいきたい、と思っています」