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VPS 導入事例

富士通株式会社 モバイルフォン事業部


VPS活用で携帯電話機の多様な解析を統合化
解析工数・試作回数の半減化を達成

毎年2∼3回は新モデルが登場する携帯電話機の世界――。そのトップブランドの一つを設計・開発・製造している富士通の モバイルフォン事業本部は、設計・開発以降の工程を短縮することによって、商品の企画を練るための時間を できるだけ確保したいと考えていた。そのためのツールとして選ばれたのが、 3次元仮想設計支援シミュレータ「VPS(Virtual Product Simulator)」。 従来は電磁界、伝送路、熱、応力などと別個に行われていたモデリングと解析実行を統合化することにより、 工数と時間を削減し、現物試作の回数を減らすことに成功した。 VPSは、「“知”の蓄積と継承」や「バーチャル製造」にも活用されている。

導入事例キーワード
設計品: 産業用ロボット、自動認識機器、プログラマブルコントローラ等の機器およびシステムの開発、製造、販売
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS

case-17-03.jpg 岩渕 敦
富士通株式会社
モバイルフォン事業本部
ビジネス推進統括部長
兼 業務改革推進部長

富士通がコアコンピタンスとしている3つの事業領域のうち、「ユビキタスプロダクト」では 携帯電話機などの設計・開発・販売を行っている。この市場はコンシューマーをターゲットとするだけに、 メーカー間の競争は激しさを極め、製品の登場サイクルが短いのが特徴。 富士通 モバイルフォン事業本部でビジネス推進統括部長と業務改革推進部長を兼務する岩渕敦は、 「1年で2回から3回に分けて、次々に新モデルを出さなければ他のメーカーに追い抜かれてしまいます」と 製品の開発サイクルの短い点を強調する。 その一方で、携帯電話の設計は年々難しくなっている。「FeliCa、GPS、Bluetooth、地デジとアプリケーションが増えた結果、 本体に内蔵するアンテナは7~8本にもなります。近く登場するLong Term Evolution(LTE)では Multi-Input Multi-Output(MIMO)技術が使われるため、アンテナ本数はさらに増えるものと予想されています。 また、一定の物理サイズに高画質の内蔵カメラや大型の表示デバイスを詰め込まなければなりませんから、 基板やチップの小型化も必至。それに加えて、ローコスト化も求められています」と岩渕は語る。 製品発表のサイクルを死守しつつ、消費者に好まれる携帯電話を作るには、商品の企画力を徹底的に高めることが 鍵になるとモバイルフォン事業本部は考えているのである。

個別モデリング/解析を統合化 解析工数と試作回数を削減

それでは、どのようにすれば、企画力を練るための時間を上流工程に確保できるのか――。

モバイルフォン事業本部が編み出したのは、現物試作によって行っていた膨大な検証工程を 設計上流のシミュレーションに置き換えて、リードタイムを大幅に短縮するという方策だった。 そのため、モデリングと解析実行の作業を3次元仮想設計支援シミュレータ「VPS」で統合化し、 それによってシミュレーション普及のネックになっていたモデリング時間の大幅な短縮と 検証精度の向上という相反する要素の両立化を図った。 従来は電磁界、伝送路、熱、応力、衝撃……と個別に行われていた一品料理的なシミュレーションを、 共通の基本モデルに基づく統合作業へと転換。解析モデルを個別に作成するための 工数・時間を減らすとともに、「当たるシミュレーション」によって現物試作の回数を減らすことを 目指したのである。 「VPSは、大きなデータベースから目的別の軽量な3次元データを取り出すのが容易。 その特性が、モデリングと渕は振り返る。

この統合化を実現するための方策として、「電気系と機構系のプラットフォーム化」 「ライブラリ間のシームレスな連携」「解析モデルの共通化」「解析ソルバー間のデータ共用」などの サブ目標を設定。統合化に向けたサブ目標ごとの取り組みは2004年度から始まり、 2009 年度の「製造連携」で一応の完成をみた。

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設計検証工程の日数を半減 総部品点数の約30%削減も達成

モデリングと解析の作業を統合化し、試作回数を減らして「モノを作らないものづくり」を実践した結果、 モバイルフォン事業本部では大きな定量効果を手にすることができた。 まず挙げられるのが、モデリングと解析に要する日数を大幅に減少できたこと。 設計・検証工程の全体では40∼50%の削減効果があったと岩渕は見ている。 最も効果が高かったのは、伝送路解析での90%削減。 アンテナ性能解析でも、15%の削減を達成している。

また、部品点数も大幅に削減。「取り組みを開始した2004年度以降、機構部品で約50%、 貼物部品で約50%、総部品数でも約30%を削減することができました」と岩渕は話す。

若手技術者向けノウハウ共有やバーチャル製造にVPSは貢献

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このほか、VPSは設計・検証工程での「“知”の蓄積と継承」や後続の製造工程における 「バーチャル製造」にも役立っている。

モバイルフォン事業本部が「“知”の蓄積と継承」を重視しているのは、「シミュレーションを駆使する現在のものづくりでは、 設計の基礎を知らなくても携帯電話機を作れるようになってしまうため、他社にはない貴重な要素技術や高度な設計知識が 知らぬ間に廃れてしまい、品質の低下を招いたり技術的競争力を失ったりしてしまうのでは」(岩渕)と懸念したため。 実機試作で不具合が多発しないようにするには、熟練技術者のノウハウを若手技術者が共有できるようにし、 疑似体験によってアドバイスを受けられるようにする仕組みを用意する必要があると判断したのだ。

この目的で2007年度に導入されたのが、オンラインでノウハウが凝縮されたデータベースを共有できる 「VPS/KnowhowShare」。PDMや解析情報などの既存システムから自動登録したデータを基に、 形状とノウハウを関連付けしたり、3次元形状から知りたい技術情報を検索したりできるので、 不具合の未然防止に効果があったという。「現在は設計ノウハウだけを対象にしていますが、 将来的には、企画や製造のノウハウ共有にも応用していこうと考えています」(岩渕)。

また、バーチャル製造ではVPSを「上流工程からの製造連携によるバーチャルMR(VMR)」 「作業指導書の作成」「作業工数試算の自動化」「工程間バランスの自動試算」などに活用中だ。

例えば、「作業指導書の作成」では、VPS/Manufacturingで製作したアニメーションの ストップモーション画像を張り付けることによって、2次元図面と注意書きによる説明ドキュメントを廃止し、 作成に要する手番を80%以上も減らすことに成功した。「将来は、製造ラインの作業者ごとにモニターを用意し、 その人の作業スピードに合わせて実施すべき作業のアニメーション画像を表示することで、 作業ミスや作業バラツキを軽減するようなことも考えています」と岩渕は言う。

また、「作業工数試算の自動化」と「工程間バランスの自動試算」はVPS/Knowhow Shareの機能を利用した適用例。 現状ではトライアルの段階にとどまっているが、面倒な工数計算を自動化したり、作業者の能力に合わせて 工程を割り振ることによってタクトサイクルを最適化したりといった効果が得られるものと同事業本部は 見込んでいる。

【USER PROFILE】

  • 社名:富士通株式会社 モバイルフォン事業本部
  • 事業内容:携帯電話機の開発・製造が主で、札幌、仙台、川崎、明石、横須賀の 全国5カ所に開発拠点を持つ。製造拠点は栃木県にある那須工場。