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Fujitsu

Japan

VPS 導入事例

パナソニック コミュニケーションズ株式会社 様


試作レスに向けてVPSを活用  開発リードタイムを短縮

パナソニックグループのパナソニック コミュニケーションズは、顧客価値の創出を目標に全社的にTRIZ、タグチメソッド等を用い商品開発プロセスの革新を推し進めてきた。その一環として、設計段階で試作レスに向け、デジタルエンジニアリングを駆使し開発リードタイムの短縮を図ってきた。中でも富士通のデジタルモックアップ(DMU)ツール「VPS(Virtual Product Simulator)」によるバーチャルデザインレビュー(VDR)が、設計部門と製造部門の連携強化に大きく貢献。より良い商品をいち早く市場に提供してきた同社の商品開発力をVPSが支えている。

導入事例キーワード
設計品: ファクス、コピー機、スキャナ など
ソリューション:
PLMソリューション
製品:
VPS

パナソニック コミュニケーションズ(以下、PCC)は2003年1月1日に、九州松下電器と松下電送システム、松下通信工業の固定通信事業、松下電器の研究所の一部が統合して誕生した会社である。電話機、Fax、IP-PBX、PLCなどのコミュニケーション事業、複合機、スキャナーなどのドキュメント事業、光ディスクドライブ、精密・材料デバイスなどのオプティカル・デバイス事業を3本柱とし、これらを有機的に結合させた付加価値の高いソリューションの提供に力を入れている。

設計部門と製造部門の意思疎通がカギに

case-12-pre01 松田 光栄 様
パナソニック コミュニケーションズ株式会社
経営品質推進本部 開発プロセス革新グループ
バーチャル開発推進チーム
チームリーダー

PCCの存続会社で1955年設立の九州松下電器は当初、松下グループの商品開発・製造会社だったこともあり、早くから技術開発力を売り物にしてきた。そんな同社が商品競争力の強化に向けて、開発プロセスの革新に乗り出したのは2001年4月のことだ。まずその基盤となる技法として、問題解決を支援する「TRIZ」、および技術開発・新製品開発を効率的に行う「タグチメソッド」を導入。そうした技法とバーチャル開発の核となるデジタルエンジニアリングを融合、同社ならではの開発プロセスを構築していった。そしてPCCが設立された後、この取り組みは経営品質推進活動の一環として顧客価値の創出を図ることが最大の目標となった。

とりわけ、部門トップが開発プロセスの革新に求めたのは、開発リードタイムを短縮することだった。どうすれば、それが実現できるのか。当時を振り返って、経営品質推進本部 開発プロセス革新グループ バーチャル開発推進チーム チームリーダーの松田光栄氏は次のように語る。

「商品の設計段階で開発リードタイム短縮の大きなネックになっていたのは、設計部門と製造部門の意思疎通がうまくいかず、試作と評価の工程が幾度も繰り返されることでした。金型製作後に、修正が入ると再設計してまた試作するのですが、金型修正に相応の時間とコストがかかります。設計部門と製造部門の意思疎通をスムーズに行い出図前の設計完成度を向上させ、開発納期の遅延解消できる方法はないのか、と探してみたところ、VDRを実施すればこの問題を解消できると考えました」

同社がデジタルモックアップのツールとしてVPSを導入した背景には、こうした経緯があった。


VPS採用の決め手になった使い勝手の良さ

case-12-01 ファクスデータを最大100件保存可能。紙やインクをむだにしないデジタルコードレス普通紙ファクス「おたっくす607DL」

3次元モデルによるVDRを実施すれば、製造部門が設計部門に対して具体的な問題点を指摘するのに役立ち金型修正費を削減できる。また、シミュレーションなどと併用すれば金型手配前の試作数削減ができる。さらに、作業手順書やサービスマニュアル作成などにも流用することができる。PCCの狙いもまさにこうした点にあった。

とはいえ、3次元モデルによるVDRを行えるツールはほかにもある。その中で同社がVPSを採用した理由は何なのか。

「VPS採用の決め手になったのは、誰でも簡単に操作できる使い勝手の良さです。これがなぜ重要かというと、VPSは設計部門だけでなく、製造部門、さらにはサービスや品質保証部門等でも利用するからです。そうすることで、すべての部門がモノづくりにかかわることができるのです。また、VPSは制御系ソフトの開発が可能なIO Connectorや、組立性検証が可能なManufacturingといったオプションモジュールが用意されており、3次元データをより有効に活用できるのも大きなメリットを感じました」(松田様)

実際、VPSによるVDRによって、設計部門と製造部門の意思疎通が図れるようになり、VDRの場が非常にアクティブなものになったという。


開発リードタイム削減を実感

case-12-02 (左)スキャナーとインターネットFaxを装備したカラー複合機「WORKiO(ワーキオ) C3040V」
(右)カラー複合機「WORKiO C3040V」の「VPS」画像

VPSを本格活用して今では多くの商品開発に活用されているが、当初は特定の商品開発におけるパイロットプロジェクトからスタートし、その成果を踏まえて全社へと着実に横展開を図っていった。その過程では、松田様率いるバーチャル開発推進チームがそれぞれの現場に出向いて、初期導入支援を実施。同時に金型修正費用削減といった具体的な効果を示しながら、VPSによるVDRの普及に努めたという。

その甲斐あって、今では開発リードタイムの短縮にも貢献している。

「VDRではシミュレーションを組み合わせているケースが多いので、VPSだけの導入効果というのは一概に言えませんが、試作レスへ向けて着実に効果を上げており、開発リードタイムをかなり削減している商品も出てきております」

こう語る松田様に、今後さらに取り組んでいきたいことを聞いた。

「まだ、すべての商品開発でVPSによるVDRがフルに効果を上げているわけではないので、それぞれの現場での支援活動をあらためて強化していきたいですね。VPSによって3次元データが幅広く利用できるようになってきたので、今後はさらに下流工程のバーチャル化などにも取り組んでいきたいと考えています。また、電子情報技術産業協会(JEITA)の3次元CAD情報標準化専門委員会のメンバーとして標準化および普及に努めている3D単独図を使える環境づくりも手がけ、更なる開発効率化を目指したいと思っています」

PCCのVPS導入効果は、同社の商品開発力、さらには顧客価値となって表れてくるだろう。それはまさしく日本の製造業の強さを示すものとなりそうだ。

【会社概要】

パナソニック コミュニケーションズ株式会社

  • 本社:福岡県福岡市博多区美野島4-1-62
  • 設立:1955年12月
  • 資本金:298億4,500万円
  • 従業員:1万7,500人(連結、2008年3月31日現在)
  • 事業内容:
    コミュニケーション事業、ドキュメント事業、オプティカル・デバイス事業の3つの事業分野で新たな技術を創造。3つの事業を有機的に結合させながら、より付加価値の高いソリューション提供を目指す。