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Fujitsu

Japan

FTCP SignalAdviser 導入事例


富士通アドバンストテクノロジ株式会社

電気シミュレーションでノイズ対策
極限設計を実現、設計工程人・月を大幅に削減のケースも

LSIやプリント基板(PCB)の設計に不可欠なのがノイズ対策。富士通アドバンストテクノロジ株式会社は、従来の設計規約ベース中心の設計方法に替え、電気シミュレーションによるノイズ対策設計システムの開発とユーザー支援に取り組んでいる。伝送波形解析ソフト「FTCP SignalAdviser-SI」による超GHz伝送設計や3D電磁波解析ソフト「Poynting」による静電気対策、さらには電源ノイズ解析ソフトの「FTCP SignalAdviser-PI」を使ったLSI-PCB一体解析による電源ノイズ対策などでも効果を挙げている。ツールを統合解析環境としてまとめた総合対策にも着手した。

電子機器の動作周波数の高速化とLSIの動作電圧の低下に伴い、LSIやPCBで構成される機器のノイズ問題はますますシビアになっている。ノイズにはシグナルインテグリティ(波形ノイズ)やパワーインテグリティ(電源ノイズ)、さらにはEMI(電磁波干渉)やESD(静電気)などがあり、今や設計上、これらのノイズ対策は極めて重要なテーマになっている。

設計規約ベース設計から電気シミュレーションベース設計へ

case-02-01 超GHz伝送バックボードのシミュレーション。アイパターン解析しながら、信号波形補正(プリエンファシス)をかけ、さらに配線長を合計200mm短縮してマージンを確保

富士通アドバンストテクノロジ株式会社では、これらのノイズ対策設計システムの開発とユーザー支援に取り組んでいる。富士通アドバンストテクノロジ株式会社 複合回路技術統括部 電気シミュレーション技術開発部 部長の佐藤敏郎は、「富士通では過去、何十年にもわたり設計規約ベースの設計を行ってきたが、現在はそれとシミュレーションベースの設計を組み合わせたノイズ対策設計が主流になった」と語る。

もちろん、規約ベース設計には大きな長所がある。CADの中にデザインルールチェックを組み込むことによって、短時間で設計制約条件の検証・決定が行える。しかし、ノイズ問題が深刻さを増す中で、一般化された設計制約条件では厳しすぎになりがちで、それが足かせになってきていた。しかし、単に規約の制約を緩和すると、ワースト(最悪)条件でノイズ問題が発生しかねない。そこで同社では、設計規約ベースの設計にシミュレーションによる検証を組み合わせることで対策設計を行うようにしたのである。

信号波形補正と配線長改善で超GHz伝送を極限設計

シグナルインテグリティ対策として有効なのが、回路信号の伝送波形解析「FTCP SignalAdviser-SI」を用いた設計シミュレーションである。富士通では、これを光通信装置の超GHz伝送設計(3.125Gbpsバックボード伝送)などに活用している。

ここでは、解析法には、必要な伝送特性をどれだけ確保できているかを検証するアイ(EYE)パターン解析を使用。全体の配線長を700mmに設定してデータ損失値を調べると、72mVのマージン不足が分かった。そこでとった対策は、信号波形補正(プリエンファシス)をかけ、マージン不足を45mVにまで縮めた上で、配線長を200mm短くすることだった。

「規約ベースのみでは困難だった個々のケースに極限まで対応できるのは、シミュレーションならではのもの」と佐藤は話す。実際、これにより高速伝送が可能となった。

電磁界解析を駆使したESD対策、設計工程人・月を大幅に削減

佐藤 敏郎 佐藤 敏郎
富士通アドバンストテクノロジ株式会社 複合回路技術統括部 電気シミュレーション技術開発部 部長

一方、従来、過去の経験やノウハウに基づいて試行錯誤してきたのが静電気の総合検証。しかし、静電気の放電現象(ESD)は目で追うことが難しいため、対策にばらつきが生じやすかった。同社ではこれらの問題を解決するため、3D電磁界シミュレータ「Poynting」を利用した可視化技術および対策の定量化技術を開発した。

この技術は、従来、冬場などにESDの影響を受けやすかった携帯電話端末のシミュレーションなどで効果をあげている。

この静電気シミュレーションでは、ESDにより発生したノイズ電流が装置内部をどのように流れるか、また、LSIのピンに発生するノイズ電圧などを求めることができる。さらにこのノイズ電流を可視化することで、PCB上でグラウンドを分離して誘導路を形成し、PCBに流れる電流を減少させるなどの対策を講じることができる。

ESDの可視化により、静電気の伝送経路を正確に把握した上で、影響を受けやすいLSIをどこに配置すべきか、シールド構造はどうあるべきか、などを検討することが可能になったわけである。

この技術によるフロントローディング設計により、設計工程の人・月を大幅に削減できたケースもあるという。

LSI-PCB一体解析で、LSIリメーク回避、PCB試作回数削減

このほか同社は、LSI-PCB一体解析による電源対策も導入している。これは、LSIとそれをPCBと一体化したLSI-PCB統合モデルでシミュレーションを実施、LSI仕様やPCB設計制約(IO種類、ピン位置など)に反映するもの。実際の解析ツールとしては、電源ノイズ解析ソフト「FTCP SignalAdviser-PI」を使用する。

具体的には、まずLSIの設計データを基にLSI内部モデルを作成してFTCP SignalAdviser-PIに取り込む。FTCP SignalAdviser-PIでは、これらのLSI内部モデルとPCBモデルを接続し、LSIとPCBを一体化したシミュレーション・モデルを作製。これをシミュレーションすることで、ノイズ解析を実行する。

解析結果として電源インピーダンスの周波数特性や同時スイッチングノイズ、電源バウンスの過渡解析波形を出力する。また、FTCP SignalAdviser-PIで算出した電流波形を3D電磁波解析ソフト「Poynting」に取り込むことで、LSIとPCBを一体化した形で放射ノイズを解析できる。

LSI-PCB統合ノイズ解析の導入により、LSIのリメークの回避、PCBの試作回数の削減、部品点数の削減、さらに評価・設計期間の短縮が実現している。

富士通では、このように、効果的なツールが揃ってきたことで、今後、ツールを統合解析環境として一つのプラットフォームに乗せ、総合対策に役立てる考えである。

事業概要】

富士通アドバンストテクノロジ株式会社 複合回路技術統括部

富士通アドバンストテクノロジ株式会社 複合回路技術統括部は、富士通および関係会社の設計部門に対して、電気的・機械的シミュレーション技術や回路技術などの先行テクノロジを開発する組織。このうち電気シミュレーション技術開発部は、各種シミュレーションツールの開発およびシミュレーションを駆使した開発支援やコンサルティング業務を行う。