高砂工業株式会社 様

三次元設計とデータ活用で、業務効率化と生産性向上を実現
使いやすくわかりやすい3Dデータを、全社の「共通語」に

ものづくり産業に欠かせない熱処理設備・システムの専門メーカーとして、高砂工業株式会社(以下、高砂工業)は、企画・提案から設計、試験・開発、製造、設置・試運転、アフターメンテナンスまで、自社一貫体制のトータルサポートをグローバルに展開しています。

少量多品種や省エネルギーなど顧客ニーズが多様化するなかで、効率的で質の高いオーダーメイドの設計開発・製造を目指して、株式会社富士通九州システムズ(以下、FJQS)が提供する三次元(3D)CADソフトウェア FUJITSU Manufacturing Industry Solution COLMINA 設計製造支援 iCAD SX(以下iCAD SX)を導入。二次元設計から3D化へ転換する取り組みを推進し、設計技術者の基本スキルとして定着。技術・製造両部門のミス削減や生産性向上の成果にもつながっています。また新たに改善プロジェクトを始動し、設計業務を効率化する分業体制を構築。自動設計化や熱流体・構造解析シミュレーション、製造現場・営業提案での活用も検討が始まっています。

導入・定着から活用促進へと、着実に歩みを進める3D化の管理・運用フェーズで、FJQSは持続的なサポートに貢献しています。

課題
効果
課題設計業務の効率化や時間短縮を目的に、二次元(2D)の図面設計から三次元(3D)CADへの転換を計画。当初、3D化を目的に汎用CADを導入したが、部品点数など要素数が多くクライアントPCが動かないトラブルが発生した。
効果熱流体解析用に導入済のiCAD SXは非常に使い勝手が良いことや、3Dモデルの組立図・寸法線・図面展開がスピーディーかつワンタッチで簡単に作成できることを再確認。技術部門での本格導入を決定し、期待通りに機能している。
課題一品一様のオーダーメイドのキルン(炉)には1万点を超える機械部品が必要だが、3Dモデルの部品データが揃わないと、組立図を描くのに時間も手間もかかる。また、従来通りに2Dの方が使いやすいと感じると、3D設計が浸透しにくい状況が生まれてしまう。
効果初期導入支援として、FJQSが機械部品約2万点の標準3Dモデルを受託作成。社内でも2万点の新たな3Dモデルを増やすことで、設計者が使いたくなり、実際に使いやすさを実感できる利用環境を整備。
課題3D化の定着により、技術部門と製造部門のミス削減や生産性向上を実現し、さらに全社的に活用できる運用管理につなげたい。
効果ひと目でわかりやすい3D設計データで、製造ミスや設計への問合せが減少。さらに業務改善プロジェクトを始動し、設計業務の効率化も推進。営業展開においても顧客から高評価を受け、受注提案からアフターメンテナンスまで、活用シーンが広がり始めている。
導入の背景

機械部品の3Dモデルを揃え、「2Dよりも使いやすい」環境を整備しスムーズな導入へ

世界40ヶ国以上にTAKASAGOブランドの工業炉・真空炉を供給し、ものづくりの発展を支え続ける高砂工業。設計業務を担う技術部門で三次元(3D)CAD化を推進し、2013年1月にiCAD SXを本格導入しました。

「二次元(2D)CADのライセンス更新のタイミングで、3D設計に変えようと考え、最初は他社のCADを試しましたが、機械部品点数が多いので負荷がかかり、PCが動かなくなる問題が生じて。熱流体解析用に導入済だったiCAD SXは、非常に使い勝手が良く動きも滑らかだったので、これを本格導入しようと決めました」

そう語るのは、3D設計の定着・活用を推進する業務改善プロジェクトリーダー 鈴木 基晴氏です。ただ、慣れ親しんだ2DCADからの転換には、一つの壁がありました。熱処理設備は機械部品の組立加工が中心で、特に工業炉は顧客ごとに異なる要望を満たす一品一様のオーダーメイドです。「一つのキルン(炉)に必要な部品は1万点を超えますが、部品の3Dモデルが揃っていないと、組立図を描けないのです。新たに描き始めると余計に時間がかかり『これまで通り、2Dの方が便利だよね』となりかねない不安がありました」(鈴木氏)。

リスクを解消しスムーズな導入を図るために、FJQS は3ヶ月間にわたる導入支援で、使用頻度の高い部品約2万点の3Dモデルを作成しました。「一定数の機械部品で、標準の3Dモデルを揃えることがポイントと考えました。また、3Dモデルの登録名や属性の決定も、効率的な運用につなげましょう、とご提案しました」(FJQS 吉田 保博)。導入推進メンバーだった松井 崇氏(現在は総務部に異動)も、当時を振り返ります。

「FJQSに委託後も、私自身で2D図面から部品の3Dモデルを組み上げ、さらに2万点増やしました。モデルの登録は当初、製品コードを利用しましたが、12桁のコードを覚える人は少ないので、製品名に変えました。設計技術者が『使ってみたい』『使いやすい』と思える環境を一緒につくっていくことが大事だと思います」

高砂工業株式会社
業務改善プロジェクト
リーダー
鈴木 基晴 氏
高砂工業株式会社
総務部
主任
松井 崇 氏
高砂工業株式会社
工業炉事業部 技術部
3課
藤原 大輔 氏
導入の効果

設計技術者は使いやすく、製造ミスも減少。設計業務の生産性向上へ業務改善プロジェクトが始動

段階的に導入が進んだ3D設計は2020年4月、技術部門の設計技術者40人全員が使いこなすようになり、定着しています。

「難しかった配管の干渉が見やすくなり、修正も簡単。使うほどに誰もが、前向きな評価に変わりましたね。3D設計データをそのまま使える3Dレーザー加工機を導入できたのも、大きなメリットです」と鈴木氏。「最優先で期待したのは設計部門のミス削減でした。干渉の不具合が減ってわかりやすい3Dの組立図になり、作り直しのムダが減り納期短縮にもつながっています。図面の不明点で問い合わせを受けた設計技術者が、工場へ説明に走る。そんなシーンも減りましたよ」と、松井氏も笑顔で語ります。

実は製造部門や外注委託先では紙図面が主流であり、設計技術者が3D設計データから2D設計データを作成していました。設計技術者は納期管理やコスト管理、顧客との仕様打合せ等、多岐の業務をこなします。そのため、設計技術者が受け持てる数に限りがあり、設計業務の時間短縮が課題でしたが今春、解決に向けてキックオフしたのが「業務改善プロジェクト」(以下、PJ)です。組立図の3D設計は設計技術者、2D化作業は女性のオペレーター、それぞれが専任で担当する分業体制を新たに構築。オペレーターは、新入社員に図面研修を実施して育成し、期待を上回る習熟度で生産性が向上しています。

3D設計スキルの育成指導を担当するPJメンバーの技術部 藤原 大輔氏は、若手の設計技術者の成長が著しい、と実感しています。「40代以上は標準の手順通りに設計しますが、20代・30代は新しい機能をどんどん使いこなして『もっと、こんなことしたい!』と。すぐにFJQSに相談し、レスポンスよく回答をいただけるので助かっています」

PJでは、iCAD SXの設計画面に表示する部品表のカスタマイズも進めています。「部品点数が増えると設計技術者が部品の選択に迷う時間が増えました。購買実績データから部品データに絞り込みの機能を追加し、優先的に在庫があるものから使うように改良をしています。設計者の迷う時間が減ると設計業務のスピードアップにつながります。それが標準フローになって部品の共通化や在庫のムダ削減にもつながれば、と期待しています」(鈴木氏)。

株式会社富士通九州システムズ
エンジニアリングソリューション本部
PLMインテグレーション部
吉田 保博
株式会社富士通九州システムズ
エンジニアリングソリューション本部
エンジニアリングDX推進部
松村 隆晴
今後の展望

営業提案やアフターメンテナンスにも、3D設計・データ活用の可能性を追求

3D設計とデータ活用の可能性を追求するPJの挑戦は、現在進行形で続いています。

「製造部門でも、役職者は技術部門と同じように3D設計データを見て寸法や細部のチェック。現場の社員もPDF化したデジタルデータをタブレットで確認するなど、紙の図面からの脱却が今後の目標のひとつになると思います」(松井氏)

営業部門でも、顧客から「3Dは見やすいし、とてもわかりやすい」と高評価を受けています。「ここに手すりが付くのか、それなら通路は狭いよね。そんな感じで、お客様もリアルなイメージが浮かびやすく、フィードバックも早いですね」(鈴木氏)。今後は、受注に向けたプレゼンテーションツールや、アフターサービスにも役立つ運用マニュアルへの活用も、検討を進める予定です。消耗部品を交換する修理サービスは従来、2Dの紙図面に色を塗り確認し合っていましたが、3Dデータという「わかりやすい共通語」を持つことで、スピーディーで間違いのないコミュニケーションが可能になります。

「より良いデータの管理・活用に、自動設計、付加価値が生まれるDX(デジタルトランスフォーメーション)へつながるご提案を、これからも続けていきます」とFJQS 松村 隆晴。その姿に、鈴木氏も大きな期待を寄せています。

「まずはPJを軌道に乗せることです。技術部門では設計業務のスピード化と省人化、設計ミスの削減、人材の育成。製造部門も、伊万里工場を含めて上手な使い方ができればと思います。3D設計が可能性のまま終わることのないように、これまで通りにレスポンスよく力強いサポートをお願いしたいですね」


左から、高砂工業株式会社 藤原氏、松井氏、鈴木氏、常務取締役 工業炉事業部長 勝股 忠明氏、FJQS吉田、松村

高砂工業株式会社 様

事業内容工業炉・真空炉など熱処理炉・熱処理システムの設計開発・製造・アフターメンテナンス
設立1953年9月
所在地岐阜県土岐市駄知町2321-2
代表者代表取締役社長 鈴木 達也
資本金1億円
社員数300名(2020年10月1日現在)
ホームページhttp://www.takasago-inc.co.jp新しいウィンドウで表示
概要陶磁器にタイル、半導体、自動車、化粧品、リチウムイオン電池等の生産設備を設計・製造し、多岐にわたるものづくり産業を支える熱処理設備・システムのリーディングカンパニーとして、工業炉や真空炉など各種キルン(炉)を販売。30種類以上の試験装置を用いて、製品開発の試作評価を助力することにより、新しい製品化をサポートするとともに、試作評価を助力することで新しい製品化のサポートをします。試験評価をもとに大量生産する大規模の熱処理炉も手がけるなど、世界トップレベルの省エネルギー・生産性を実現しています。本社と伊万里(佐賀)、佛山(中国)に製造拠点を構え、「期待をカタチに変えていく。」を企業ブランドに掲げています。

[ 2020年12月9日掲載 ]

本製品に関するお問い合わせ

Webでのお問い合わせ

  • 入力フォーム

    当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。

お電話でのお問い合わせ


記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。
本事例中に記載の肩書きや数値、 固有名詞、またダウンロード資料等は取材当時のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

ページの先頭へ