三建産業株式会社 様

3D設計と自社解析で、見えない熱の流れと現象を「見える化」 ~お客様に納得と満足を提供し、設計技術者が育ちやすい仕組みづくり~

加熱・溶解・冷却など、多様なものづくりシーンに欠かせない工業炉設備のプラントメーカーとして、企画・設計・施工・メンテナンスのトータルエンジニアリングサービスを展開する三建産業株式会社様。株式会社富士通九州システムズ(以下、FJQS)が提供する三次元CAD・iCAD/SXと熱流体解析ソフトウェア・Autodesk CFDを導入し、設計フェーズの3D化と熱流体の解析シミュレーションの内製化を推進されていますが、さらに今回、構造解析ソフトウェア・Jupiter-Designer for iCADも新たに採用されました。FJQSは3D設計・自社解析ツールの導入支援を通して、設計スキルの見える化や品質向上、リードタイムの短縮と業務効率化、営業提案・メンテナンス力の強化など、持続的なサポートで貢献を果たしています。

課題
効果
課題
  • 複雑な工業炉は、二次元の設計図では実物の立体像をイメージする力が必要で、設計形状が基本性能を満足しているか、周辺設備との干渉の有無の見極めも相当の経験と勘が不可欠、若手の設計技術者が育ちにくい。
  • 外部の専門家に解析を委託してきたが、解析以前の打ち合わせや資料作成などのリードタイムが必要で、費用も高額なため気軽に利用できない。
  • 流体の挙動や熱の移動など、複雑な炉内のメカニズムを定量的につかめず、お客様の「納得」につながる根拠を示しにくい。
効果
  • 熱流体の流速や圧力の分布を解析ツールで「見える化」し、手計算では不可能だった輻射伝熱の相対計数も簡単かつ高精度に試算。お客様に裏付けとなる解析データを提供可能に。
  • 熟練を要する二次元の設計スキルを3D設計で「見える化」し、経験の浅い若手でも一定レベルの仕事が可能になり成長しやすくなった。
  • 自社解析の仕組みを確立し、解析を内製化。設計だけでなくメンテナンスにも気軽に解析を活用することが可能に。
導入の背景

高度で専門的よりも、設計技術者が「電卓代わり」に使える解析を

1,300℃の高温をコントロールし、大型は体育館並みのスケール感もある工業炉。鉄鋼・アルミ分野を中心に省エネ・省力・省資源の技術革新をリードしてきた三建産業様は、2014年から3D設計と自社解析の導入プロジェクト(PJ)を始動しました。

「三次元CADは時流が生んだ今までにはなかった新しい山域のように感じました。はじめはどの頂上を目指そうという明確な目標を決めるのはなかなか難しく、とりあえず登ることだけは決めた感じでした。でも、解析とセットで登山道へ一歩踏み出し、少し標高を上げてみたら見える景色が変わってきて、凄いことができそうだ、あっちの高い山にも登ってみよう、こっちのもっと切り立った山にも登れるのではないか、と手応えをつかむようになった。そんな感じですね」笑顔でそう語るのは、PJを推進するテクニカルセンター(TC)の万代悠輔氏です。
閉空間の工業炉の設計で、特に難しいのが熱と流体の挙動の見極めです。加熱したい材料に、熱風がどんな流速で当たるのか。輻射熱の加減はどうか。複雑なメカニズムの解析は従来、経験と実績に基づき外部の専門業者に相談してモデルをつくってもらい、解析も外部の専門に委託していました。「炉の蓋を閉めてみないと、熱の流れや分布の本当の姿はわからない。解析すれば明確な根拠となる定量的なデータが得られますが、手計算には限界があるし、外部委託も高額で資料作成の手間も多く、長い納期を要求され、気軽に頼めない。限られた時間、労力、費用で、お客様の納得と満足につなげ、私たちも効率よくパフォーマンスを発揮するには、自社解析しかないな、と」

 FJQSの大野裕二は、三次元CAD・iCAD/SXと、連携する解析ツールとしてAutodesk CFDを提案。専門的で高度な解析よりも、設計技術者が簡単に操作できる「身近な解析」が最適だと考えていました。「解析モデルも与える条件も、こうしたい、という方向性が明確で、提案しやすかったですね」と語る。
「プレゼンテーションを聞いて、まさに私たちがめざしているものだ、と。設計が電卓代わりに使える。そんな解析ツールと仕組みづくりへの期待が、決め手になりました」(万代氏)

三建産業株式会社
技術本部
テクニカルセンター
エネルギー管理士
万代 悠輔 氏
富士通九州システムズ
エンジニアリングソリューション本部
エンジニアリング営業部
大野 裕二
導入の効果

フレキシブルな自社解析で、お客様に高い満足度を提供

キックオフから2年後に立ち上げたTCで自社解析が本格始動し、着実にノウハウを蓄積しています。
「解析するのは現時点では年間50~100件の受注案件のうち、25件程度です。今後はどんどん解析を実施する比率を上げてゆきます。3D設計から解析モデルをつくって解析条件を設定し、許容範囲内かどうかがひと目でわかる。本当に電卓代わりで、気軽に解析を利用する習慣が社内に根づいてきました」

最大のメリットは、お客様に必要な解析に絞り込み、極めて限られた時間内に、より良い選択肢をフレキシブルにアウトプットできることです。また、社員の意識も変わりました。営業やメンテナンスにも「間違いがない」「できなかったことができる」という「解析ありき」の信頼と共感が生まれ、シナジー効果は全社に広がっています。「営業もメンテナンスも、お客様に一番近い存在。そこで受けた相談やご要望に、解析データという確かな根拠で応えることで、高い満足度を得ています。想定外の熱現象に悩まされた現場施工のトラブルも、大幅に減少しました」

3D設計も、質の高い形で定着が進んでいます。煉瓦や耐火材の施工形状、強度を保つ鋼材、作業デッキなど複雑な炉の立体像をイメージし、周辺設備との干渉の有無も、経験と勘で導き出す。そんな二次元の設計図に必要だった頭の中の「見えない熟練スキル」が、三次元で「見える化」しました。
「圧倒的な、見えやすさとわかりやすさ、ですね。若手の設計技術者も高いレベルの仕事ができるようになり、技術資産である過去の図面からの流用設計もしやすくなって、生産性も向上しています」

新入社員がTCで、3D設計を学ぶ試みもスタートしました。人事総務部の三好祐司氏は「工業炉の基本設計構造に何が必要かを学びつつ、3D設計のスキルを身につける。そんなOJTの育成ができるのも三次元CADを導入した成果ですし、これからの成長が楽しみ」と期待を寄せます。それはまた、団塊世代の熟練技術者の退職という課題の解決にもつながっています。

三建産業株式会社
管理本部
人事総務部
三好 祐司 氏
富士通九州システムズ
エンジニアリングソリューション本部
エンジニアリング営業部
エキスパート
井上 靖
今後の展望

頼もしいサポート力を評価し構造解析も導入。後工程の技術情報管理も充実へ

自社解析では2017年、新たに構造解析ツールとしてJupiter-Designer for iCADも導入しました。1000℃以上にのぼる高温炉内で動作する搬送機械の熱応力チェックなど、失敗が許されない部位の強度解析が始まっています。
「FJQSさんは、営業・販売力以上に凄いのがサポート力。難解な解析の質問にもすぐに答えが返ってきて、できないとは言わず、こうしては?と一緒に考えてくれる。Jupiterの導入も、このサポートがあれば大丈夫、と思えたからですし、経営層がゴーサインを出したのも成果を認めている証しです」。技術支援を続けるFJQSの井上靖は「自ら手を動かして使いこなす万代様は、いつも質問が具体的。FJQSの社内でサポート役を務める野村征爾も『だから、的確にサポートできる』と言っています」と、確かな成果につながった要因を紐解きます。

設計技術者が育ち、生産性も向上する仕組みにも磨きをかけています。標準図面データを集約する「標準図面ライブラリー」を社内サーバに開設。技術資産をいつでも検索、活用できるようになりました。FJQSの大野も「設計の前工程の解析だけでなく、後工程の技術情報管理も力強い進め方をご提案していきます」と抱負を語ります。

3D設計と解析を駆使する業界の先駆者として、三建産業様は航空宇宙産業向けの熱処理設備など、さらに高精度で緻密な熱コントロールに挑み続けていきます。「熱のプロフェッショナルとして、我々の右に出る者はいない。そう断言できる優位性を保ちながら、自らの力で高みに登り、見えなかった世界や見たことのない景色に出会えるように。FJQSさんには引き続き、頼もしいサポートをお願いしたいですね」

三建産業株式会社 様

事業内容工業炉と周辺設備の企画・設計・製造・施工・メンテナンスなどの一環エンジニアリングサービス事業
設立1949年8月
所在地広島市安佐南区伴西3-1-2
代表者代表取締役社長 大田 公生
社員数160名(2018年2月時点)
ホームページhttps://www.sanken-sangyo.co.jp/
概要「熱とエネルギーのプロフェッショナル」を自負する工業炉設備のプラントメーカーとして、世界30カ国以上に省エネルギー・省力・省資源・リサイクル技術をベースとするエンジニアリングサービスを提供しています。工業炉はアルミ分野と鉄鋼分野を中心に、重工業・自動車など多岐にわたる産業に貢献しています。日本初のセラミックファイバーブランケットを採用した省エネルギー型大型炉の開発など、工業炉の大型化や省エネ化の先駆者として業界をリードし、自動車部品生産用のアルミ溶解設備では国内シェアのトップ企業です。

[ 2018年4月5日掲載 ]


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