現代美術を未来の「資産」に。
約8700点の所蔵品と
展覧会情報を含む
膨大な関連情報の
横断検索システムを構築
国立国際美術館様 導入事例
約8700点にもおよぶ国内外の現代美術作品を所蔵する国立国際美術館。同館では富士通Japanの「FUJITSU 文教ソリューション Musetheque V4」を導入し、所蔵作品や作家、展覧会など同館の活動に関わる膨大な情報を横断的・複合的に検索・公開できるシステムを構築。同館ホームページで「NMAO(エヌマオ)サーチ」として公開しました。全国6つの国立美術館の中で、所蔵品とそれに関連する情報を横断的に検索できるシステムを構築したのは同館が初めてです。その取り組みを紹介します。
【導入事例概要】
業種 | 博物館・美術館 |
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ソリューション | FUJITSU 文教ソリューション Musetheque V4 |
【課題と効果】
1 | 美術館の所蔵品について、自前の検索・公開システムがなく、所蔵品の詳細情報を発信する仕組みが求められていた | → | Musethequeで所蔵品と関連情報を横断的に検索・確認できるシステムを構築、所蔵品や作家についてより詳細に知ることが可能に |
2 | 所蔵品の展覧会出展歴や作家へのインタビュー、展覧会の設営記録、ポスターなど美術館独自の情報がバラバラに管理・保管されていた | → | 所蔵品や作家に関連する貴重な資料を複合的に把握できる仕組みを構築、詳細で多角的な情報に迅速にアクセスできるようになった |
3 | 開館から約半世紀にわたる美術館の取り組み、保管してきた資料群を管理・活用する仕組みがなかった | → | 所蔵品と関連する膨大な資料群をデジタルアーカイブとして「資源化」、美術館の歴史と資産を「未来に残す」基盤を構築 |
【導入の背景】
所蔵品と関連する膨大な資料を
横断的に検索・閲覧できる機能が必要
国立国際美術館は1977年、国内外の現代美術作品の収集・保管・展示と調査研究をおもな目的として開館しました。日本万国博覧会(1970年)のパビリオンとして建設された万国博美術館(大阪・吹田)がその前身です。そ の 後、2004年に現在の大阪市北区中之島に移転。同館の学芸課主任研究員の福元 崇志氏は、「おもに1945年以降の現代美術を中心に、約8700点のコレクションを有する完全地下型の美術館です」と説明します。美術館には作品の収集、保存・保管、調査研究、そして調査研究で得られた情報を広く公開し、社会に還元することが求められます。こうした役割を果たすにあたって、同館にはいくつかの課題がありました。福元氏は「まずは、当館の所蔵品を広く知ってもらうための検索システム、検索した所蔵品を見てもらうための公開システムがありませんでした」と振り返ります。同館のような国立美術館の所蔵品検索には、独立行政法人国立美術館が提供する国立美術館6館の所蔵品を一括検索できる「所蔵作品総合目録検索システム」を活用できますが、そのシステムでは「検索結果に当館ならではの詳細な情報を付加して発信することができません。当館自前の検索・公開システムの必要性を強く感じていました」(福元氏)
また、同館が企画展などを開催する際に実施した作家へのインタビューなど、同館独自の貴重なコンテンツについては、公式YouTubeチャンネルやホームページのアーカイブなどを個別に閲覧しないと確認できないことも課題でした。「所蔵品にまつわる情報が所蔵品とは別個に、いわば『バラバラに』保管されている状態でした。所蔵品と関連情報を横断的に検索して情報を収集し、所蔵品を多角的に理解できるようにする、そんな仕組みも求められていたのです」(福元氏)。

国立国際美術館 学芸課 主任研究員
福元 崇志氏
【導入の経緯】
「美術館プラットフォーム」構築を目指し
Musethequeの導入を決定
こうした課題がある中、同館は2022年に美術館のデジタルアーカイブシステムをリニューアルする検討を開始しました。その際、重視したのが所蔵品とそれに関連する情報を横断的に検索できる機能を実装することでした。福元氏は、この機能の重要性を次のように説明します。「美術館で開催される企画展やコレクション展は、作品・作家・キュレーターをはじめ作品の運搬・展示、会場設営、パンフレットやポスターのデザインなど、それぞれの分野のプロフェッショナルが協働することで初めて成立します。会場設営の様子を撮影した写真、ポスター、展覧会のチケット1枚にしても、全てが所蔵品の価値を多角的に伝え、当館の歴史を形成する重要な資料です。そうした重要な資料を横断検索して一覧表示で確認できる機能は、所蔵品や作家の価値を正しく知らしめ、当館が歩んできた歴史をきちんと伝える意味でとても重要です」。
じつは同館では、以前(2018年)のシステム導入の際にも同様の機能の実装を検討しました。しかし、システム開発会社から「技術的に難しい」とされ、断念した経緯があります。だからこそ、「(リニューアルでは)所蔵品とそれに関連する情報、例えば展覧会の出展歴や会場の記録写真、パンフレットやポスターなどを全てデジタルアーカイブとして保管・管理し、所蔵品のタイトルや作家名から横断的に検索して一覧表示できる『新たな美術館プラットフォームの構築』を実現したいと強く考えたのです」(福元氏)。
そこで、同館では、今回のリニューアルでデジタルアーカイブシステム「FUJITSU 文教ソリューションMusetheque V4」の導入を決定し、これらの機能の実装を実現しました。福元氏は「所蔵品に関連するさまざまな情報を横断検索できる機能はもちろん、クラウド管理なので導入しやすく、検索スピードも速く、職員も一般利用者も使いやすいシステムです」と評価しています。
【導入の効果】
美術館が残してきた膨大な資料群を
デジタルアーカイブで「資源化」
同館ではMusethequeで所蔵品に関する情報を横断的に検索できるシステム「NMAO(エヌマオ)サーチ」を構築、2023年6月から同館のホームページの「コレクション&リサーチ」での公開を開始しました。NMAOサーチでは、フリーワードでの検索に加えて、作品・展覧会・資料・作家の4つのカテゴリーでキーワードによる詳細検索が可能です。作品をフックにして展覧会や資料などの情報を往来しながら、さらには公式YouTube、同館ホームページの展覧会アーカイブページ、同館の蔵書検索システムOPACまでを含めて検索できます。こうした機能を実現できたことで、福元氏は「一般利用者の利便性向上はもちろん美術に興味のある人、研究者、美術専攻の学生、同館や他館の学芸員など専門性の高い人たちにとって有益な仕組みを構築できました」と成果を示します。例えば、作品を検索すると、その作品が出展された展覧会、その展覧会のパンフレットやポスター、会場の記録写真、参考文献などを一覧で確認できます。「ある作品や作家について、専門家や研究者が、より詳細な情報に素早くたどり着ける、その道筋が開けたのです」(福元氏)。
現在、国立美術館は全国に6つありますが、NMAOサーチのように所蔵品と関連情報を横断的に検索できるシステムを構築したのは同館が初めてです。福元氏は、「半世紀近い当館の歴史の中で蓄積されてきた資料には、作品に劣らない価値があります。作家へのインタビュー、展覧会に関する情報など当館が残してきた膨大な資料群をMusethequeとNMAOサーチで『資源化』できたことはとても意義深く、美術館としてのプレゼンスが向上したと感じています」と語ります。
【将来の展望】
Musethequeを活用し美術館の資産を未来に残す
NMAOサーチでは、現在、複数の種別で検索・閲覧が可能ですが、今後はその拡充を目指しています。同館では教育機関としての役割を果たすために学校や先生のための教育プログラム、ワークショップなどの体験型プログラムなども実施しています。これらのプログラムのポスターや実施要項、実際の様子を記録した動画などを資料として蓄積していますが、NMAOサーチでの検索カテゴリーには含まれていません。「当館のさまざまな取り組みをNMAOサーチを通じていかに可視化していくか、それが今後の課題です。富士通Japanにはシステム構築だけでなく、約8700点の所蔵品のデジタルアーカイブ化などでサポートしてもらいました。一緒にプロジェクトに取り組んだパートナーとして、今後もぜひ協力していただきたい」(福元氏)。美術館が、所蔵品をはじめ関連する膨大な情報や美術館の独自の取り組みなどをデジタルアーカイブとして資源化することは「美術館の資産を未来に残していく取り組みともいえます。その視点に立てば、これからが始まりです」(福元氏)。Musetheque利活用の新たな姿が見えているようです。

【お客様情報】
施設名 | 独立行政法人国立美術館 国立国際美術館 |
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URL | https://www.nmao.go.jp/ |
所在地 | 大阪府大阪市北区中之島4-2-55 |
館長 | 島 敦彦 |
所蔵品数 | 約8700点(2022年3月時点) |
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