トレンドテクノロジー解説【ブロックチェーン】

第4回 ブロックチェーンが生み出す新たな価値を持つ地域通貨

ブロックチェーンは、仮想通貨の1つである「ビットコイン」を実現するために考案された技術です。いまでは、多種多様な特長を持つ仮想通貨が登場し、取引されるようになりました。中央銀行の発行ではなくても信頼性の高い通貨を造ることができるのならば、自治体が発行する地域通貨や企業が発行するポイントサービスなど、これまで通貨のように使われてきたものの信頼性や利便性を高めることにも活用できるはずです。この発想から、地域通貨の価値を裏付ける仕組みにブロックチェーンを活用する動きが活発化しています。

ブロックチェーンを活用した地域通貨で地域振興

富山県の企業や投資家を中心に発足した「Yell TOYAMAプロジェクト」では、2018年11月、ブロックチェーンを活用した地域振興の取り組みを開始しました(図1)。ブロックチェーンを活用した地域通貨「Yell」を発行し、これと連携したスマートフォンのアプリを活用して、観光客の誘致、地域消費の促進、中小企業の資金調達に役立てることを目指したものです。

図1 ブロックチェーンを活用した富山の地域通貨「Yell」の仕組み 出典:Yell TOYAMAプロジェクトのリリース

富山県は、恵まれた自然環境とおいしい海の幸、製薬や鋳物など伝統産業を持ち、幸福度ランキング上位の常連でもあります。Yellは、一般的な商品の売買に利用するだけではなく、これまで商品として売買されなかった地域の体験や出会い、文化や技術に親しむ権利などを購入するために活用できます。そして、この仕組みの運用にブロックチェーンを導入することによって、地域企業が出店する際の費用を無料にし、売買時の決済手数料を1%と極めて低水準に設定できました。

これまで発行されてきた地域通貨には、狭い地域でしか使えない、使えない店がある、偽造防止や安全な管理にコストがかかるといった課題がありました。ブロックチェーンの活用によって、これらの課題を解決し、地域通貨発行のハードルを下げることができます。地域通貨の対象となる自治体よりも、さらに狭い地域で通用する通貨を発行することさえできます。2017年3月、福島県会津若松市にある会津大学が、学内で通用する仮想通貨「白虎コイン」を発行し、より小規模な集団で通用する通貨の実証実験を行いました。

さらに、ブロックチェーンを活用すれば、これまでにない価値を持つ通貨を造ることもできます。イベント期間中だけ有効な通貨や、時間の経過によってあらかじめ決めたルールに従って価値が変動する通貨、所得や年齢など使う人の属性に応じて価値が変わる通貨といったアイデアも出てきています。一定の条件で価値が変動する通貨を上手に使いこなせば、ビジネスや社会活動にイノベーションが生まれる可能性があるのではないでしょうか。

著者情報

林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

伊藤元昭
エンライト 代表

1989年東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 材料科学専攻 修士課程修了。同年、富士通に入社。人工衛星搭載用の耐放射線デバイス、SOIデバイスの研究開発に従事。1992年、日経BP社に入社 日経マイクロデバイス、日経エレクトロニクスの記者として、半導体、電子部品の業界・技術に関する記事を執筆、1997年編集委員、1998年 副編集長。2003年より、三菱商事と日経BPが合弁で設立したコンサルティング会社、テクノアソシエーツ プリンシパル 技術戦略担当として、電子・機械分野の事業・技術戦略のコンサルティング事業に従事。2007年、日経エレクトロニクス、日経マイクロデバイスにて、編集委員、副編集長。2009年、電子・機械局広告に企画編集委員として転属。2014年、日経BP半導体リサーチ 編集長。同年、株式会社エンライトを設立。

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