Digital Disruption Tech(トレンド解説)【ブロックチェーン】

第3回 生産管理や品質管理に効果を発揮するブロックチェーン

医療機器と自動車は、数ある工業製品の中で最も厳しい品質管理が求められる品目だと言えます。医療機器を生産する際には、法令や規制で求められる要件を満たす生産体制であることを、生産する機器ごとに検証する必要があります(図1)。また、自動車の生産でも、部品のサプライヤーの生産体制が安全確保に足るものであるのかを自動車メーカーの担当者が出向いて検証し、工場を認定しています。この工場認定は、一度認定された後には、いくら生産性向上が望めたとしても勝手に製造装置や製造工程を変更できない厳格なものです。ただし、医療機器や自動車の生産で行われている厳格な検証や認定には多額のコストがかかっており、メーカー側もユーザー側もかなりの負担になっています。

図1 医療機器や自動車の生産体制の検証や工場認定の負担をブロックチェーンで軽減 出典:AdobeStock

ここにブロックチェーンとIoTを活用することで、工場内の製造装置の稼働状況や生産条件、品質データなどをリアルタイムで取得し、厳密に記録することが可能です。医療機器や自動車の生産で求められる要件に合わせて生産していることをシステムでつぶさに検証・記録することで、メーカー側とユーザー側双方の負担を劇的に軽くできます。

日本の製造業が抱える品質不安の危惧を払拭

ブロックチェーンによる生産管理や品質管理が効果を発揮するのは、医療機器や自動車の分野だけではありません。

これまで日本の製造業は、高品質な製品を作ることで世界中の信頼を得てきました。しかし近年、国内の多くの企業で製品の品質に関わる改ざんや不正が相次いて発覚。日本の製造業に対する信頼が揺らぎつつあります。海外の消費者やユーザー企業に、「日本製品だから高品質に違いない」と黙っていても思ってもらえる時代は終わりつつあります。

この状況を憂慮した経済産業省は、2017年12月に「製造業の品質保証体制の強化に向けて」と題した対応策を公表しました。この中で、日本の製造業企業には、高品質な製品を提供していること証明するデータを、サプライチェーン内、業界内の企業間で共有する仕組みの構築が求められていると指摘しています。そして、要求に応える情報システムを確立・社会実装すべく、実証事業の実施を補助する予算を確保しました。補助が出る実証事業の採択では、ブロックチェーンなど分散型の情報技術を活用するものを加点評価することが明言されています。ブロックチェーンは分散型台帳システムで作られ、しかも改ざんが困難な特長を備えています。業界や企業を超えた情報共有の信頼性を高めるために適した技術だと言えます。

著者情報

林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

伊藤元昭
エンライト 代表

1989年東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 材料科学専攻 修士課程修了。同年、富士通に入社。人工衛星搭載用の耐放射線デバイス、SOIデバイスの研究開発に従事。1992年、日経BP社に入社 日経マイクロデバイス、日経エレクトロニクスの記者として、半導体、電子部品の業界・技術に関する記事を執筆、1997年編集委員、1998年 副編集長。2003年より、三菱商事と日経BPが合弁で設立したコンサルティング会社、テクノアソシエーツ プリンシパル 技術戦略担当として、電子・機械分野の事業・技術戦略のコンサルティング事業に従事。2007年、日経エレクトロニクス、日経マイクロデバイスにて、編集委員、副編集長。2009年、電子・機械局広告に企画編集委員として転属。2014年、日経BP半導体リサーチ 編集長。同年、株式会社エンライトを設立。

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