トレンド&デジタルテクノロジー解説【MaaS】

第10回 ドライバー不足を補うシェアリングの活用が始まっている

ドライバー不足を補うために物流現場で始まっている取り組みはシェアリングの活用です。

第一のシェアリングはこれまで荷主ごとに手配していた配送業務を、異なる荷主が共同で実施する共同配送です。同じ業界のライバル同士が手を組んで配送業務を共同で実施する取り組みも出てきました。

例えばビール大手4社は、2017年9月から北海道で共同配送を実施しています。トラックの運転手不足に対応するためで、長距離トラックの運行台数を年800台減らすことができるといいます。

参加したのは、アサヒビール、キリンビール、サントリービール、サッポロビールの4社。ビール系飲料80万ケースのほか、各社のグループ企業が手掛ける清涼飲料も対象とし、日本通運やJR貨物と連携し、トラックと鉄道貨物を組み合わせて効率を高めています。

ビール業界の他にも、食品業界や医薬品業界で共同配送に向けた体制整備が進められています。例えば味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループは北海道地区の物流を手掛ける合弁会社を2016年に発足させて共同配送体制を整備していますし、アステラス製薬、武田薬品工業、武田テバファーマ、武田テバ薬品は札幌市内に共同物流センターを設立し、2018年から稼働させています。

第二のシェアリングは、これまで法律の壁があって認められていなかった貨物と人を一緒に運ぶ貨客混載です。人口減少に伴う輸送需要の減少が深刻になっている過疎地域を対象に、人とモノの輸送に関する持続可能性を確保することを目的に、従来の自動車運送事業のあり方が2017年9月に見直されました。

これまでは人を運ぶサービスは「旅客自動車運送事業者」の仕事で、モノの輸送は「貨物自動車運送事業者」の仕事とされていました。これが、両事業の許可をそれぞれ取得することを前提に、乗合バスは全国で、貸切バス、タクシー、トラックは過疎地域において、それぞれ一定の条件下で事業をかけもちできるようになりました。

バス、タクシー、トラックなど、それぞれ旅客、貨物に特化していた運送が、貨客混載可能に。
2017年9月の制度改定によって実現した貨客混載(出所:国土交通省)

貨客混載の代表的な取り組みとしては、運送会社と地域のバス会社が提携し、各バス会社の路線バスを宅配便の配送に活用しています。

共同配送と貨客混載という二つのシェアリングは、まだ始まったばかりの取り組みです。今後、それぞれの運用状況から改善点が見つけられ、さらなる効率アップが実施されることでしょう。

共同配送や貨客混載の動きが大きく広がって、MaaSの世界にもごく普通に取り入れられるようになるかもしれせん。そして、昨日までの競合企業がコストを分け合う仲間になったり、事業領域が別だった企業が強力なライバル企業やビジネスを補完し合うパートナー企業になったりするケースが増えるでしょう。

新しい動きとしては、シェアリングの本命である配車プラットフォームの物流版を構築するというものが具体化しています。オンデマンド配車サービスは、移動したい人と、人を運びたいドライバーをマッチングして効率化を図ったわけですが、トラック業界向けの配車プラットフォームでは「運びたいモノ」と「モノを運びたいトラックドライバー」のマッチングを試みます。配車プラットフォームを活用することで、トラックドライバーは空車での走行時間を減らすことができ、運送業者は必要に応じて配送リソース(トラックドライバーとトラック)を動的に手配できるようになるわけです。例えばオンデマンド配車サービス大手の米ウーバーテクノロジーズは2017年5月にトラックドライバー向けのマッチングサービス「Uber Freight」を開始しています。

Uber Freightのアプリ画面(出所:ウーバーテクノロジーズ)

物流版の配車プラットフォームについては、国内企業の中に先進的な取り組みが見られます。ラスクルが提供する物流のマッチングサービス「ハコベル」です。ラスクルは印刷会社の印刷機の非稼働時間が多いことに着目し、ネットで受注した印刷業務を非稼働時間の印刷機で実行する印刷マッチングサービスを提供する企業です。非稼働時間のリソース活用という観点をトラックおよびトラックドライバーに持ち込んで、2015年12月から物流マッチングサービスの提供を始めています。ハコベルは大手運送業者も活用しており、物流業界の生産性向上に貢献しています。

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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