トレンドテクノロジー解説【MaaS】

第9回 自動運転技術やMaaS技術の活用でドライバーの負荷を軽減

ここ数年、物流現場で深刻さを増している課題はドライバー不足です。このため、ドライバーレスの自動トラックを期待する声は、特に物流企業の経営幹部から聞こえてきます。ただし、その実現は簡単には進みそうにないのも事実です。

配送を担当するトラックドライバーは、運転業務だけでなく、荷物の積み卸し作業や荷扱いも重要な仕事です。例えば、花や果物には積み方や組み合わせを間違えると商品価値を損なうものがあり、運転とは異なる専門知識が求められています。また、また自動運転の開発にしても、目的地に安全に到着すればいいというものではありません。走り方に注文が付く荷物もあるため、運ぶ荷物に応じて走り方を変えなければならないからです。トラックドライバーは、荷物の特性を踏まえた積み付けや走り方を日々、正確に実行しているわけです。

このような高い専門性が求められるため、すぐには世の中のトラックがすべて無人トラックになり、ドライバー不足が解消されることにはなりません。

無人トラックが街中を走り回る世界はかなり先になりそうですが、だからといって自動運転技術やMaaS技術がドライバーの負荷軽減に何ら貢献できないというわけではありません。例えば自動駐車を安全に実行できる機能が用意されれば、それだけでも大きな負荷軽減になります。倉庫に着いて、指定された駐車スペースにクルマを停車させてボタンを押せば、後はクルマが自走して積み卸しスペースに自走し、センチメートル単位の精度で理想的なスペースに駐車できる仕組みが備われば、ドライバーは駐車業務から開放され、積み卸しの作業効率も高まるでしょう。

駐車場でクルマが自走して適切な場所に駐車する「自動バレーパーキング」は、一般自動車向けでは実用化が見えています。例えば独ダイムラーと独ボッシュは共同で、Mercedes-Benz博物館の駐車場に自動バレーパーキングを導入しました。ドライバーが乗降車エリアでクルマから降り、スマホアプリで操作すると、クルマは乗降車エリアから実際の駐車スペースまで自走するという仕組みです。

ダイムラーとボッシュが共同開発した駐車場向けの自動バレーパーキングの様子(出所:ダイムラー)

自動運転トラックの実用化という観点では、現在、物流会社は自動車メーカーや自動車部品メーカーと共同で車両開発や配送現場での実証実験を進めています。これらの共同開発や実証実験を進める中で、どのような形でなら自動運転技術を役立てることができるのか、利用時にはどのような問題が生じるのか、ドライバーの役割はどうなるのかなどを検証しています。

例えば、独Deutsche Post DHL Group(DPDHL)は自動車部品メーカーの独ZF Friedrichshafen、車載コンピューターメーカーの米NVIDIAと提携し、配達品の輸送と配送を自動化するために自動配送トラックの試験車両の開発を進めています。配送実験については、ヤマト運輸がディー・エヌ・エーと共同で、自動配送トラックを用いた配送実験プロジェクトを実施しています。実験では受け取り方を検証する2つのサービスを実施しました。一つは、車内に保管ボックスを設置した専用EVを使用し、利用者が望む時間帯に望む場所で荷物を受け取ることができるオンデマンド配送サービス「ロボネコデリバリー」。もう一つは、地元商店の商品をインターネット上で一括購入して運んでもらう買物代行サービス「ロボネコストア」です。

ロボネコデリバリーの操作画面例(出所:ディー・エヌ・エー)

自動運転トラックの技術開発は、トラックメーカーや自動運転開発ベンダーが積極的に技術開発を進めています。世界初のロボタクシーサービスを開始した米ウェイモも自動運転トラックの開発に着手しました。物流ネットワークの高度化の実現を目的に、米国最大級のロジスティクス・ハブであるジョージア州アトランタにおいて、自動運転技術を備えたトラックの公道走行を実施しています。

公道走行中のウェイモの自動運転トラック(出所:ウェイモ)

自動運転トラック専門のスタートアップも登場しています。例えばスウェーデンのEinrideは自動運転EVトラックとリモート運転システムを開発し、輸送業界に新しいソリューションを持ち込むことを目指している。開発しているのはドライバーレスの電動トラック「T-Pod」。2020年までにスウェーデンのヨーテボリとヘルシンボリを結ぶルートに200台のT-Podを投入する構想を持っていて、充電ステーションも建設するそうです。

Einrideの自動運転トラック「T-Pod」(左)とリモート運転システム(右)(出所:Einride)

物流の世界で自動化を進めるには、トラックから配達先のオフィスや家までの間をどう自動化するかも考えなくてはなりません。自動車メーカーからは、自動運転トラックと協調動作する配送ロボットや配送ドローンが提案されています。例えばダイムラーは、同社の配送トラックと組み合わせて利用することを前提とした配送ロボットと配送ドローンを発表しています。

Starship Technologiesの配送ロボットを搭載するMercedes-Benz Van(出所:ダイムラー)
ドローンを搭載する自動配送トラックで配達する様子(出所:ダイムラー)

物流の世界における自動運転開発はまだ開発途上にあり、無人配達の実用化には時間がかかるでしょう。それでも、部分的であれ自動運転技術や運転支援技術を活用すればドライバーの負荷軽減は確実に実行できます。ドライバーの安全を守り、作業時のストレスをやわらげ、作業効率を高めてもらうためにも、ドライバー支援機能をどれだけ効果的に導入できるかが物流会社に問われることになりそうです。

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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