トレンド&デジタルテクノロジー解説【MaaS】

第6回 MaaS車両のリースビジネスが誕生

MaaSが広がることによって生まれる可能性のある金融ビジネスに、MaaS車両を対象とする車両リースビジネスがあります。このリースビジネスは、現在、航空会社が航空機を手当てする場面で頻繁に利用されている航空機リースのMaaS車両版に相当する金融サービスです。

航空機リースとは、リース会社が航空機メーカーから大量に航空機を購入し、その購入した航空機を一定の条件の下で、期間を区切って航空会社に貸し出すビジネスです。期間の終わった航空機は、別の条件で他の航空会社に貸し出されます。このようにすることで、航空機メーカーは安定した大手顧客(リース会社)を獲得できますし、リース会社は航空機メーカーからボリュームディスカウントを引き出せます。また、航空会社は必要な期間、必要なだけの航空機を大きなコストをかけることなく手に入れることができます。航空機リースは、航空会社にとって節税効果などの収益確保の側面もあり、世界での旅行市場の拡大を背景に活発に利用されているため、新たにリース事業に参入する企業が登場するなど発展しているビジネスです。

航空機リースの仕組み

MaaSが本格化して競争が激化すれば、オンデマンド配車事業者やタクシー事業者は、ユーザーにとって魅力的な車両を調達したくなりますが、大量の新車両を一括購入するのは経費負担が重くなるだけでなく、需要予測を見誤ると無駄な投資になってしまいかねません。特に地域限定型の事業を計画する場合、需要にあった数の車両を期間限定で借り受けることが出来ると、事業計画を立てやすくなります。

MaaS車両の開発はまだ始まったばかりです。最新技術を装備して、新たな需要を掘り起こすような魅力的な車両がどんどん登場してくる可能性は十分にあります。例えばスイスのリンスピードは、乗客が乗り込んだり物品を格納したりする部分「ポッド」とポッドを取り付けて走行する部分「スケートボード」で構成する新しいタイプのMaaS車両「SNAP」を開発しています。ポッドはスケートボードから取り外すことができて、ポッドはスケートボードが無い状態でも利用できますし、スケートボードはポッドが無い状態で自走することができます。ポッドを移動させるときだけスケートボードに取り付ければいいという考えです。

リンスピードのSNAP(上)とmicroSNAP(下) ポッドをスケートボードに取り付けて走行する(出所:リンスピード)

変わったところでは、走行中に車両を連結することで、さまざまな用途に柔軟に対応することを狙ったMaaS車両も登場しています。開発しているのはシリコンバレーに開発拠点を置くネクストフューチャートランスポーテーション。必要なときに必要なユニットを連結したり切り離したりすることによって、バスやシャトル、タクシー、トラックなどの移動手段の代替にも対応するという特徴を持つ「next」です。走行中に連結した車両間を移動できるので、例えば食堂の車両を呼び出して連結し、車両を移動して食事するといった用途が想定されています。

ドバイでテスト走行するnext(出所:ネクストフューチャートランスポーテーション)

今後開発される新型のMaaS車両は、MaaS事業者がサービスの競争力を高める際の最も効果的な差異化ポイントになります。サービス価値を高めるためにも、最新車両が登場するたびに適切な台数の車両を確保したいというニーズは強まるはずです。航空会社の激しい競争が航空会社向けの飛行機リース市場を大きくしたように、MaaS事業が大きくなり、魅力的なMaaS車両の開発が活発になれば、MaaS車両リースという新市場が誕生するでしょう。

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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