トレンド&デジタルテクノロジー解説【MaaS】

第4回 自動車産業はモビリティサービス産業にシフト

2015年1月、米フォード・モーターは、モビリティサービスを新しい基幹事業にする構想「Ford Smart Mobility」を発表しました。モビリティを基幹事業にする理由は、「自動車産業の市場規模が2.3兆ドルであるのに対し、モビリティ産業の市場規模は5.4兆ドル」という市場規模の違いです。

このモビリティに向けた動きはフォードに限ったものではありません。米GMは2016年1月に大手オンデマンド配車事業者である米リフトに5億ドルを出資しましたし、独フォルクスワーゲンは2016年12月にモビリティサービス全般の事業ブランドとして「MOIA」を立ち上げました。そして2018年5月、トヨタ自動車の豊田章男社長は、2018年5月の決算発表の席上で「トヨタを、自動車をつくる会社からモビリティ・カンパニーにモデルチェンジする」と宣言しました。

MOIAが2018年7月からドイツのハノーバーで開始したモビリティサービス(出所:MOIA)

このように大手自動車メーカーは新車販売に頼るビジネスモデルから脱却し、モビリティサービスを基幹事業にするための活動を急いでいます。これは、製造業からサービス業への転換を意味します。ここで重要になる考え方が「サービスドミナントロジック」です。

サービスドミナントロジックは、ビジネスの根幹を「モノ売り」から「(モノを含んだ)サービス売り」に変えることで、ユーザーに提供する商品価値を「モノの所有」から「サービスを利用することで得られる体験」に置き換えることです。

サービスドミナントロジックとは、商品や販売方法、提供価値などにおいて、旧来の「モノ売り」から「(モノを含んだ)サービス売り」に置き換えることです。
製造業からサービス業への転換で求められる「サービスドミナントロジック」

販売方法も変わります。モノを売る場合は売り切りが一般的でしたが、サービスを売る時は、サービスを使った期間に応じた料金を徴収するサブスクリプション型となります。サブスクリプション販売では、利用者がサービス価値を常時評価し、サービス契約を続行するかどうか決めます。最初は納得してサービスを導入した利用者でも、実際にサービスを使って不満を感じれば、すぐに契約は解除されます。モビリティサービスにおいてクルマは、サービスをユーザーに届ける重要な構成要素ではありますが、提供するサービス価値の一部にすぎません。サブスクリプション販売で大きな売上を確保できるかどうかは、サービス全体の品質向上と使い勝手の改良を、積極的かつ継続的に進められるかどうかにかかってくるわけです。

大手自動車メーカーの中にも販売面でサブスクリプションを取り込む動きが出てきています。例えばトヨタ自動車は2019年から個人向け愛車サブスクリプションサービス「KINTO」を開始する予定です。もっと大胆な改革目標を掲げている例としてはスウェーデンのボルボカーズがあります。同社は2018年6月に発表した中期経営計画で「2028年までに、売り上げの半分をサブスクリプションモデルのサービスで達成する」と発表しました。自動車産業は、「作って売る」製造業から、「品質向上を続けながら、使い続けてもらう」サービス業に変わりつつあるのです。

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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