トレンド&デジタルテクノロジー解説【キャッシュレス社会】

第4回 現金に続き、紙のレシートも電子化へ

日本には、クレジットカード、交通系ICカード、スマホアプリを用いた電子マネーなど、現金以外の決済方法がたくさんあります。また、購入金額の2割を還元するQRコード決済が大きな話題になったこともあって、キャッシュレスの利用は広まっています。ただし、せっかくキャッシュレスで支払いしても、レシートは紙でもらうことは珍しくありません。レジ渋滞をなくすには、紙レシートのやり取りもなくす必要があります。

このような課題を解決することを目的に具体化してきたのが電子化された買物レシートで「電子レシート」です。電子レシートはスマホアプリで受けとる仕組みになっているので、利用に当たっては、買物客があらかじめスマホに電子レシートアプリをダウンロードしておく必要があります。買物の際にアプリを起動して、画面にQRコードなどを提示して店舗に個人認証してもらえば、会計後に電子レシートを受領(店舗側は発行)できます。

導入企業も登場しています。代表例は家電量販店のビックカメラ。2017年6月に公式アプリの電子レシート対応を実施しました。店頭で公式アプリのポイントカードを使用する際に、レシート発行の有無を選ぶことができます。ただし、発行不要としたレシートが後日必要な場合には、商品購入から90日以内であればレシート発行が可能です。

電子レシートの導入メリットは、買物客と店舗の双方にあります。買物客のメリットとしては、財布にたまりがちな紙レシートの削減とレシート紛失の防止、家計簿アプリとの連携などがあります。店舗側には、紙のレシート発行を回避できるのでレジでの混雑解消やコスト削減が期待できます。

現在利用されている紙レシートの大部分はPOSレジの中でデータ化されており、買物客はこれを印刷した紙レシートを受け取っています。POSレジを使っている場面では、業務の効率化、データ収集と分析、不正防止、打ち間違いによる販売防止、売り上げの一元管理などがすでに実現できているケースも多く、既に電子レシート機能を付加したPOSレジも製品化されていました。ただし電子レシートのフォーマットはPOSベンダーや業種業態、小売事業者によってバラツキがありました。

この実態を踏まえて電子レシートを標準化する動きが具体化しています。例えば経済産業省は2018年2月、電子レシートの標準仕様を検証する実験を東京都町田市で実施しました。同実験は、個人の購買履歴データを活用するための環境整備を目的に、さまざまな店舗が発行する電子レシートを標準フォーマット化して、従来は業者ごとに分断して管理していた個人の購入履歴を統合管理するしくみを構築しました。さらに実験に協力してくれる買物客の了解を得たうえで、標準API(Application Programming Interface)を用いて家計簿、健康管理、SNSなどのアプリとの連携も実施しました。

電子レシートアプリの画面イメージ(出所:経済産業省)

実験には町田市の飲食店・小売店が6社27店舗と、システムベンターと市民モニターが参加しました。興味深いのは、アンケート回答者の多くが「今後の買物でも電子レシートを受領したい」と回答したことに加えて、「電子レシートと紙レシートの両方を受領したい」と答えたことです。電子レシートを受け入れる社会受容性は高まっていると言えますが、だからといって紙レシートを一掃できるわけではないようです。

今後は、電子レシートを店舗側がどのように活用していくのかが問われます。例えば、紙にスタンプを押す形で運用していた「ポイントカード」があれば、その仕組みを電子的に実装して、ポイント履歴を電子レシートに表示するようにすれば、顧客のポイントカードを持ち歩く手間を取り除けます。電子レシートにクーポンを付与しておけば、顧客はいつでもスマホからクーポンを取り出せるので、購入意欲が高まるかもしれません。また、政府が推進する情報銀行が誕生した場合は、この電子レシートを登録したいというユーザーニーズが生まれることでしょう。そのようなニーズに応える体制作りの準備もしておきたいところです。

著者情報
林哲史
日経BP総研 主席研究員

1985年東北大学工学部卒業、同年日経BPに入社。通信/情報処理関連の先端技術、標準化/製品化動向を取材・執筆。2002年「日経バイト」編集長、2005年「日経NETWORK」編集長、2007年「日経コミュニケーション」編集長。その後、「ITpro」、「Tech-On!」、「日経エレクトロニクス」、「日経ものづくり」、「日経Automotive」等の発行人を経て、2014年1月に海外事業本部長。2015年9月より現職。2016年8月より日本経済新聞電子版にて連載コラム「自動運転が作る未来」を執筆中。2016年12月「世界自動運転開発プロジェクト総覧」、2017年12月「世界自動運転/コネクテッドカー開発総覧」、2018年6月「Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転」を発行。2011年よりCEATECアワード審査委員。

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