スーパーカミオカンデ(注1)は、大気ニュートリノや太陽ニュートリノなどの常時観測に加え、数十年に一度、しかも十数秒間しか観測できない超新星爆発からのニュートリノ事象を確実に捉えるため、24時間365日ノンストップで観測し続けています。
スーパーカミオカンデの検出器にある11,000本以上の光電子増倍管から集められる膨大なデータ(1日約500ギガバイト)を蓄積・解析するため、ブレードサーバ「PRIMERGY BX922 S2」142台を用いたPCクラスタシステムと、ストレージシステム「ETERNUS DX80 S2」、スケーラブルファイルシステムソフトウェア「FEFS」を用いた高速分散ファイルシステムを中心に構成されています。
常時観測のための高信頼性、そして大量のデータを解析するための高性能が同時に必要となるシステムを富士通は支えています。
坑内システム
坑内システムは、高い稼動率が求められるリアルタイムシステムです。実験観測システムとは専用のインターフェースで接続され、データ収集とフォーマット変換を行っています。また、坑外システムのデータサーバとの通信が途絶えた場合でも実験観測データが失われることがないシステムを構築し、二度と観測できない事象データを喪失することなく蓄積しています。
坑外システム
坑外システムは、坑内システムから送られてきた観測データ(1日約500ギガバイト)の蓄積・解析を行うシステムです。データ解析装置上で実行されるソフトウェアで、明らかに不要とされた事象を除去した後、データサーバに蓄積しています。
データサーバに蓄積されたデータに対して、詳細な事象再構成ソフトウェアを用いて、ニュートリノ事象を選別・再構成します。ここで選別された事象は、ニュートリノの性質をより深く理解するための物理解析に用いられます。このため、高いCPU処理能力と高速なデータアクセスが必要となります。
パラメトリックな解析処理を高速に処理するため、最大1,536本のジョブを同時に実行できます。また、ファイルシステムの設計を最適化することにより、スループット性能は毎秒2.5ギガバイト(Write時)を達成しました。
注1 スーパーカミオカンデ:
世界最大の水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置です。超新星爆発からのニュートリノ観測だけでなく、大気ニュートリノや太陽ニュートリノの観測、茨城県東海村から発射された人工ニュートリノの観測(T2K実験)も行っています。