国立大学法人 九州大学 情報基盤研究開発センター 様

データサイエンス領域とHPC領域の融合を進める新しいコンセプトのスーパーコンピュータを実現

九州大学 様 外観写真

学内外の研究者に計算資源を提供し学術研究の成果創出に貢献する九州大学 情報基盤研究開発センター様。同センターは、データサイエンス領域とHPC領域を融合する新スーパーコンピュータシステム「ITO」によるサービス提供を行っています。富士通が受注した同システムは国内のスーパーコンピュータシステムとしては初めて、フロントエンドに構築する大規模プライベートクラウド環境とバックエンド環境でストレージを共有し連携運用を実現しています。安定稼働のもと利用者が拡大する中、同センターは富士通に対し運用支援とともにポスト「京」との連携に期待を寄せています。

導入事例概要

ハードウェア FUJITSU Server PRIMERGY
ソフトウェア HPCミドルウェアFUJITSU Software Technical Computing Suite
高性能スケーラブルファイルシステムFEFS
HPC向けクラウド統合管理ソフトウェアFUJITSU Technical Computing Solution UNCAI
課題
効果
課題従来のHPC領域だけでなくデータサイエンス領域の活用・研究ニーズに応えたい
効果富士通のHPC向けクラウド統合管理ソフトウェア UNCAIを採用し、バックエンドとストレージを共有しホスティングサービスを実現。従来、多くの時間を要したデータ転送を不要とし研究スループットの向上に貢献
課題利用者のニーズに応えながら、さらなる省電力を実現したい
効果電力効率の向上やピークのシフト等、電力モニタリングのデータをもとに運用技術の開発に向けて富士通と検討を開始し、さらなる省電力を目指す
課題短期間構築で、なおかつ安定稼働を実現したい
効果マルチベンダーでわずか半年という短期間構築を実現、富士通の技術力を評価。安定稼働のもと順調に利用者を拡大

「新スーパーコンピュータシステムITOにデータを置いたまま可視化できるようになり、研究のスループットが確実に向上したという評価をいただいています。本学医学部4年生の学生が医療画像を解析するベンチャー企業を立ち上げる際にも、スタートアップ時の研究やソフトウェア開発でITOを利用しており、効果的なユーザー支援を行うことができました」。

国立大学法人 九州大学 情報基盤研究開発センター長/教授
小野 謙二 氏

背景

データサイエンス領域とHPC領域を融合する新スーパーコンピュータ

1911年創立、100年以上の歴史と伝統を誇る九州大学様。現在、日本を代表する基幹総合大学として学生約19,000人(留学生約2,200人を含む)、教職員約8,000人が在籍し、12学部、18学府、16研究科等に加え、国内最大級の大学病院を擁しています。2011年に創立100周年を迎えた同大学は、新たな百年に向けて「自律的に改革を続け、教育の質を国際的に保証するとともに、常に未来の課題に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」ことを教育理念とし、「躍進百大」(九州大学がどの分野でも世界のトップ百大学に躍進する)というスローガンを掲げました。

スローガン「躍進百大」の実現に向けた挑戦をICTで支えているのが、同大学の情報基盤研究開発センター様です。その役割についてセンター長の小野謙二氏はこう話します。「情報通信の最先端技術を活用した教育・研究の推進とともに、全学の教育・研究活動への還元を進めています。また当センターのスーパーコンピュータシステムは、当センターが実施する各種の制度をはじめとしてJHPCN(注1)やHPCI(注2)の計算資源として活用し、広く学内外の研究者に提供することにより、日本の学術研究の基盤強化と新たな学術研究の展開に貢献しています」。
2017年10月、同大学の教育研究拠点である伊都キャンパスに新スーパーコンピュータシステム「ITO」が誕生しました。富士通が受注した同システムでは、シミュレーションを中心とする従来のHPC(High-Performance Computing)領域と、機械学習やビッグデータを使ったデータサイエンス領域の融合を進めるという、世界の先端を行く新しいコンセプトの実現に向けてチャレンジしています。

  • 注1
    JHPCN
    Joint Usage/Research Center for Interdisciplinary Large-scale Information Infrastructures。学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点。北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学のスーパーコンピュータの施設を構成拠点とし、東京大学情報基盤センターがその中核拠点として機能するネットワーク型の共同利用・共同研究拠点。
  • 注2
    HPCI
    High Performance Computing Infrastructure。革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ。スーパーコンピュータ「京」と全国の大学や研究所などに設置されている主要なスーパーコンピュータをネットワークで結び、利用者の多様なニーズに応える計算環境。
小野 謙二 氏 小野 謙二 氏
国立大学法人 九州大学
情報基盤研究開発センター長/教授
南里 豪志 氏 南里 豪志 氏
国立大学法人 九州大学
情報基盤研究開発センター/准教授

ポイント

フロントエンドとバックエンドでストレージを共有し連携運用

「ITO」は国内のスーパーコンピュータシステムとしては初めて、フロントエンドサブシステムに大規模プライベートクラウド環境を構築し、バックエンドサブシステムの計算サーバと高速ファイルシステムを介して連携運用するシステムです。その狙いについて小野氏はこう説明します。「ITOではHPC領域だけでなくデータサイエンス領域にも柔軟な利用形態の提供を目指しました。データサイエンスはデータに対してクエリを投げかけ、その結果を見て違うクエリを投げかけ、どんどんドリルダウンして意味のある法則や関連性を導き出していきます。フロントエンドのプライベートクラウドにより自分専用のHPC環境でインタラクティブ(対話型)に利用できることが、データサイエンティストのニーズに合致しています」。

インタラクティブ利用を可能にしているのが、フロントエンドとバックエンドのストレージの共有です。その理由について同センターの南里豪志氏はこう説明します。「機械学習ではデータを整理し、学習し、推論する。問題はフェーズごとに生じるデータの転送です。例えば数十テラバイトのデータ転送には数日を要します。この問題はHPC用途でも同様です。従来、大量のシミュレーション結果を研究室に転送している時間が計算処理している時間より長いといったご指摘もありました。問題解決のために、データはストレージに保存したままで結果だけをフロントエンドで見て次のステップに移っていくという仕組みとしました」。

概要

マルチベンダーで短期間構築をやりとげた富士通の技術力を評価

「ITO」のRFPを作成する上で重視したポイントについて、南里氏はこう話します。「使用電力に制限がある中で、データサイエンス領域に適したGPUを採用するとともに、HPC領域で利用されるCPUも十分パフォーマンスを発揮できるように仕様をつくりました。また電力効率の向上やさらなる省電力のための情報を収集する電力モニタリングもポイントとしました。さらに利用が集中し計算リソースが不足した場合、一時避難的にスケールアウトができるようにパブリッククラウドとの連携も要件に盛り込みました」。

2017年4月、同大学のRFPの内容を満たした上で、一般競争入札の結果、富士通が採用されました。「ITO」のバックエンドシステムは、富士通のPCサーバPRIMERGY2,000台以上で構成されておりCPUとGPUのハイブリッド構成で、総理論演算性能は国内トップクラスの約10Pflopsを実現。また、システム管理機能やジョブ運用管理機能等により大規模システムの効率的な運用を実現するHPCミドルウェアFUJITSU Software Technical Computing Suiteの採用や、大容量、高性能、高信頼分散ファイルシステムとして国内外に多くの実績を持つFEFSの採用等、スーパーコンピュータ「京」のノウハウが活かされています。

164台のサーバで構成されるフロントエンドには富士通のHPC向けクラウド統合管理ソフトウェア UNCAIを採用し、バックエンドとストレージを共有しホスティングサービスを実現。UNCAIのリソース予約機能によりユーザーが利用したいリソース、OS、アプリケーションを予約した利用開始時刻に自動的にセットアップします。
今回、データサイエンス領域とHPC領域の融合という新しいコンセプトにチャレンジする同大学のニーズに応えるべく、富士通は自社製品にこだわらないベストなシステム構成を採用。同大学では、マルチベンダーでわずか半年という短期間構築をやりとげた富士通の技術力と総合力を高く評価しています。

効果と将来の展望

利用者の研究スループットが確実に向上、啓蒙・教育活動が重要なテーマに

2017年10月、フロントエンドシステムとバックエンドシステムB(GPU搭載)が稼働し、2018年1月にバックエンドシステムAが稼働。「ITO」は安定稼働しており、現在の利用者数は約2,000人です。「ITO」にデータを置いたまま可視化できるようになったことで、利用者からは「研究のスループットが確実に向上した」といった評価を得ています。また同大学医学部4年生の学生が医療画像を解析するベンチャー企業を立ち上げる際にも、スタートアップ時の研究やソフトウェア開発で「ITO」を利用しており、効果的なユーザー支援を行うことができました。
運用していく中で生じてきた課題に対し、富士通と一緒に改善に取り組んでいると南里氏は話します。「例えば、利用者の利便性を高めるために提供するアプリケーション実行環境の整備、電力効率の向上やピークのシフト等、電力モニタリングのデータをもとに運用技術の開発に向けて富士通と検討を始めたところです」。

今後の展望について小野氏はこう話します。「ITOの活用を促進するためのシンポジウムや講習会の開催等、啓蒙・教育活動は今後の重要なテーマです。また研究開発のスピードアップの観点から in-situ(その場)の可視化に取り組んでいます。バックエンドで計算処理している過程をフロントエンドで見て確認し、先に進むことが無駄だとわかった時点でパラメータを変更し、次の計算に移っていくことを可能にします。富士通にはITOの安定稼働や教育活動のサポートとともに、ポスト「京」との連携に向けた支援をお願いしたい」。
同大学のスローガン「躍進百大」の実現を加速する「ITO」。富士通はこれからも先進技術と総合力を駆使し「ITO」を運用する情報基盤研究開発センターの活動を支援していきます。

担当営業、担当SEメッセージ

今回のプロジェクトを通して

国内トップクラス性能と時代に先駆ける革新的なご要件に真摯に向き合うことで、「今後のスーパーコンピュータの方向性や課題解決に貢献できるシステム」にまで昇華し、導入することができました。

我々は日本の学術研究の基盤強化を支えるベンダーとしての誇りをもって、“ITO”を安心、安全にご運用頂くために今後も富士通の総力を挙げ日々研鑽し、新しいHPC、AI、データサイエンスの可能性を九州大学様と共に創造したく存じます。

富士通株式会社 TCソリューション事業本部 計算科学ソリューション統括部 天野 一英
九州支社文教営業部 佐々木 博敏

富士通 佐々木、九州大学 情報基盤研究開発センター 小野氏、南里氏、富士通 天野 左から、富士通 佐々木、九州大学 情報基盤研究開発センター 小野氏、南里氏、富士通 天野

国立大学法人 九州大学 様

創立 1911年
学長 久保千春
本部所在地 〒819-0395 福岡市西区元岡744 九州大学伊都キャンパス
学生総数 18,967人(学部・大学院生)
教職員数 8,092人
概要 文学部、教育学部、法学部、経済学部、理学部、医学部、歯学部、薬学部、工学部、芸術工学部、農学部、共創学部の12学部、18学府、16研究科、4専門職大学院、高等研究院、基幹教育院、5研究所に加え、国内最大級の大学病院を擁す
ホームページ https://www.kyushu-u.ac.jp/新しいウィンドウで表示

[2018年11月掲載]

本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

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