広島市を中心として5市4町、約42万件に対してガスを供給する広島ガスは、2009年の新型インフルエンザの流行を受け、担当者が自宅待機中でもリモートで業務を継続できる環境整備に着手した。数社のソリューションを検討した結果、 セキュリティの高さと比較的手軽かつ安価に導入できる点を評価し、富士通の「モバイルオフィスゲートウェイ」と安全なネットワークサービス「FENICSII」を組み合わせたシステムを導入。事業継続性を高めるとともに、夜間や休日のトラブル対応にも活用し、運用負荷の大幅な軽減と、迅速な対応を実現した。
[ 2010年10月1日掲載 ]
導入事例概要 | |
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お客様の業種 | ガス事業 |
導入製品・サービス | |
構築ベンダー | 富士通ネットワークソリューションズ株式会社 |
1 | パンデミック対策としてリモート業務を実現したい | ![]() |
手軽かつ安価な「モバイルオフィスゲートウェイ」を導入 |
2 | セキュリティを損なわずに低コストで導入したい | ![]() |
VPNを利用した安全なネットワークサービス「FENICSII」を採用 |
3 | 夜間、休日のトラブル対応にも活用したい | ![]() |
平時にも活用することで、より費用対効果を高める |
梅田 篤氏
広島ガス株式会社
経営統括本部 IT推進部
業務改革職 副課長
小本 靖彦氏
広島ガス株式会社
経営統括本部 IT推進部
IT運用グループ マネジャー
人々の生活基盤となるエネルギーを供給する広島ガスにとって、事業の継続性は同社のビジネスに関わる問題だけではなく、社会に果たすべき責任に関わる重要な課題である。そして、ICTなくしてビジネスが回らない現在、ICTシステムの 継続性は、同社の大きな課題であった。
そんな折、2009年新型インフルエンザの流行が騒がれた。新型インフルエンザは、本人だけでなく家族が感染すれば本人が元気でも自宅待機を命じられる。そうなるとICTシステムの運用にも支障を来すことが予想されたため、自宅からで もリモートで業務を行える仕組みが求められた。
同社でハードウェアを中心としたICTシステムの運用を担当する経営統括本部 IT推進部 IT運用グループ マネジャー 小本靖彦氏は、「IT部門のメンバーは、特殊な技能を持っているので、誰でも代わりができるというわけではありません。 そういう社員が行っている業務の継続性を担保するために、リモートで業務を行える仕組みが必要でした」と語っている。
もっとも、リモート環境の必要性を感じたのは、2009年が最初ではなかった。パンデミック対策のためのソリューション導入を担当した経営統括本部 IT推進部 業務改革職 副課長 梅田篤氏は、「3、4年前から、在宅勤務や夜間、休日のトラブル対応などに、リモート環境を導入したいと考えていました」と語っている。
そこで、かねてから必要性を感じていたリモート環境の導入に向けて、2009年に具体的な検討を開始した。
広島ガスは、日頃付き合いのあるいくつかのICTベンダーに声をかけ、提案を依頼。比較検討した結果、2009年11月、富士通の「モバイルオフィスゲートウェイ」の導入を決定した。同社が同製品を選択した最大の理由は、VPNだけでな く、強力な複合認証(利用者、機体、PC環境)も提供するネットワークサービス「FENICSII」があったことである。
梅田氏は、「当社は、大量の個人情報を保有しており、データが外部に漏洩しないことを最優先で考えました。富士通のモバイルオフィスゲートウェイとFENICSIIを組み合わせた提案は、当社が求めるセキュリティレベルにしっかりと適合しており、さらに価格的にも最適でした」と評価している。小本氏も、「モバイルオフィスゲートウェイは、既に実績のある製品であり、当社のニーズにマッチしたシステムが、求められた期間で導入できたことに満足しています」と語ってい る。
モバイルオフィスゲートウェイ自体は、小型アプライアンスであり、既存のネットワークに接続するだけなので、富士通に導入作業を依頼し1日で完了。2010年3月に稼働を開始した。
リモート環境を実際に利用する際は、自宅のPCから「FENICSII」を使って、セキュアにネットワークに接続し、ランチャー画面よりメニュー選択するだけで、モバイルオフィスゲートウェイにログインできる。対象となるオフィスのPCが 起動していない場合は、リモート操作で電源ONが可能だ。接続後は画面上にオフィスのPCのデスクトップ画面が表示され、リモートでの操作が可能になる。アクセスしている自宅のPCにはデータが残せないように設定しているので、不用意に データが持ち出される心配もない。
広島ガスの今回のシステムは、本来パンデミック対策として導入したものだが、幸いなことに今のところインフルエンザなどで何人もが自宅待機になるといった事態は起きてはいない。
その代わり、以前から必要性を感じていた夜間や休日のトラブル対応として活用している。料金や購買、工事プログラムなどの同社の基幹システムは、夜間にバッチ処理を行っている。その際、想定外のデータが入り込んだり、プログラム の不具合などにより、月に数回というレベルでトラブルが起きることがあった。そうなると、夜中でも担当者が呼び出されサーバが置かれている本社に駆けつけなければならず、時間的なロスや担当者の負担が大きかった。しかもその際、車の 運転ができない場合などはタクシーで行かなければならず、時間だけでなく交通費もかさんでしまう。
梅田氏は、「ほんの10分程度の作業をするために、往復2時間もかけて駆けつけるといったことも少なくありませんでした。また、プログラムの変更を行った日などは、自宅に帰らずに確認のため遅くまで本社で待機していましたが、万一 何か起きても家で作業ができるようになったので、本社で待つ必要がなくなり、担当者は楽になったと喜んでいます」と語る。
さらに小本氏は、「迅速な対応ができるようになったことで、社内ユーザーへのサービス向上にもつながっています。また、セキュリティ面でも外部にデータが流出する恐れがなく、簡易なシンクライアントと して使えます。本格的なシンクライアントを導入するとかなりの初期費用がかかりますが、これならそこまで費用をかけずに導入できるところもいいですね」と評価している。
当初の目的である新型インフルエンザの流行や災害時の事業継続について、「やはり普段から利用していないと使い方を忘れてしまうので、定期的な訓練が必要です。現在は限られた担当者しか利用していないので、それ以外の人に定期的 に訓練を行う体勢を整え、いざという時に役に立つようにしておく必要があります」と梅田氏は気を引き締める。
また、外出が多い経営層などから、外出先から社内メールを見たいという要望が出ており、モバイル環境推進の必要性が高まっているという。その点について小本氏は、「紙や普通のPCを持ち出すと、どうしても紛失の可能性が残ります。 そのリスクを減らしながら、利便性を向上するために、モバイル化の検討を行っています」と語っている。
そして、まだその実現方法は未定としながらも、梅田氏は「先日試験的に出張先からノートPCを使って、モバイルオフィスゲートウェイ経由で社内メールを利用してみましたが、非常に便利だと感じました」とその可能性を語る。
今回のシステムにより、万一の場合のICT業務の継続性を高めるとともに、平時の運用負荷の低減も実現した広島ガス。これからもICTを活用し、インフラ企業として求められる事業継続性を支えていく。
本社所在地 | 広島県広島市南区皆実町2-7-1 |
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設立 | 1909年10月 |
資本金 | 32億9千1百万円 |
代表取締役社長執行役員 | 田村 興造 |
従業員数 | 651名(2010年3月末現在) |
事業内容 | 広島ガスは、2009年10月に創立100周年を迎え、2020年に向けた新ビジョン「Action for Dream 2020」を策定。新ビジョンの実現に向け、経営基盤を強化しつつ、天然ガスの普及拡大と継続 的な企業価値の向上を目指す。とりわけ、ガス事業者の使命である保安の確保と安定供給については、経年本支管の入れ替え等を推進するとともに、ガスの安全使用に関する周知の徹底や安全機能を強化したガス機器への取替促進等、ガスの消 費段階での保安対策強化にも徹底して取り組んでいる。 |
ホームページ | 広島ガス株式会社様 |
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