ウシオ電機株式会社では、環境経営をグループ全体で推進している。従来から各拠点の環境情報を集計して外部機関への情報開示などを行ってきたが、近年では環境意識の高まりを背景に、業務のスピード化とより深い分析が求められるようになった。そこで同社では、SAP BusinessObjectsによる柔軟で高度な分析環境を構築。大幅な業務効率化を果たすと同時に、分析結果を環境経営や拠点の改善活動に活かす取り組みも進めている。
[ 2014年9月25日掲載 ]
1 | 環境経営に関する外部機関からの調査依頼の対応に多くの工数を要していた | スピーディな分析が可能になり多様化する調査依頼にも迅速に回答できる体制が確立 | |
2 | 環境情報は定型集計表をベースに分析しているが、自由な 切り口で分析を行うことが容易ではなかった | ドラッグ&ドロップによる簡便な操作で誰でも容易に分析が行える環境を実現 | |
3 | 情報開示に留まらず経営戦略や拠点の改善活動につなげたいという思いがあった | 分析結果をフィードバックすることで環境経営や拠点のモチベーション向上に貢献 |
ウシオ電機株式会社
CSR部
部長
氏家 啓一 氏
1964年の創業以来、日本を代表する産業用光源メーカーとして業界をリードし続けてきたウシオ電機。その同社において、企業経営の重要な要素のひとつに位置付けられているのがCSR活動だ。ウシオ電機株式会社 CSR部部長 氏家 啓一氏は「当社が連結環境経営に取り組み始めてから既に10年が経過し、企業そのものも設立50周年の節目を迎えています。我々CSR部門としても、今後はこれまで蓄積してきた環境経営データを経営層や拠点に還元し、より高度な環境経営に貢献することが重要と考えています」と話す。
これまで同社では、「FUJITSU Eco Track」をベースとした環境情報管理システム「ECO-SYS」(エコシス)を構築。エネルギー使用量や廃棄物、化学物質などの環境情報を世界30拠点から収集し、各種外部機関に対する情報提供などを行ってきた。
しかし、環境意識のグローバルな高まりに伴って、外部機関からのアンケート調査要請も一段と増加。調査項目も年々細分化が進んでおり、対応に多くの 負担を強いられるようになっていた。
ウシオ電機株式会社 CSR部 関東グループ 調査役 志賀 浩之氏は「多様化する情報開示ニーズに応えていくためには、集計・分析業務のスピードアップが欠かせません。また、環境経営の高度化に向けては、情報を様々な切り口で分析できる柔軟な環境が必要です。しかし、FUJITSU Eco Trackは予め決められたフォーマットの活用が主体であり、切り口の変更やドリルダウンなどはあまり得意分野ではありませんでした」と振り返る。
ウシオ電機株式会社
CSR部
関東グループ
清水 洋 氏
こうした同社の悩みを解決するソリューションとして、富士通から提案されたのが、SAP社のBI (Business Intelligence)ツール「SAP BusinessObjects」であった。SAP BusinessObjectsはドラッグ&ドロップによる優れた操作性を備えており、多角的な分析を容易に行うことが可能。FUJITSU Eco Trackとのシームレスなデータ連携も行えるため、情シス部門に頼ることなくCSR部門だけで自在に情報を活用できる。
ウシオ電機株式会社 CSR部 関東グループ 清水 洋氏は「特定の地域や拠点を指定して分析を行いたいと思った場合、従来は一度データをEXCELに出力して作業を行う必要がありました。ところがSAP BusinessObjectsを利用すれば、こうした特定項目のグルーピングが非常に簡単。国内/国外、地域、生産拠点/非生産拠点、年次/月次など、あらゆる視点を組み合わせてタイムリーに分析が行えます」と話す。
ウシオ電機株式会社
CSR部
関東グループ
調査役
志賀 浩之 氏
また、分析結果の表示方法についても、大きな驚きを感じたとのこと。志賀氏は「簡単にグラフが作成できるのはもちろん、モニタリング機能 『SAP BusinessObjects Dashboards』を利用すれば、アニメーション効果まで付けられる。これはかなり衝撃的でしたね。環境情報の『見せる化』『気付く化』 を進めていく上で大きな効果があると感じましたので、早速ECO-SYSへのアドオン導入を決めました」と話す。
現在では、外部から取り込んだCO2排出係数を拠点ごとに設定できるようにするなど、より精緻なデータ分析が行える仕組みも構築。また、取り組みの成果を 各拠点にフィードバックするために、ECO-SYSのトップ画面にSAP BusinessObjectsのアニメーショングラフを掲出するといった工夫も凝らされている。
SAP BusinessObjectsの導入により、同社の分析活動には様々なメリットが生まれている。氏家氏は「最も大きかったのは、スピード感を持って環境情報を活用できるようになった点です。グループ全体の取り組みは3ヵ年の中期計画に基づいて進めますが、活動報告自体は四半期ごとに行うために、変化の兆候やその原因をいち早く掴まなくてはなりません。こうしたアクションがスピーディに行えるようになったのは、非常に大きな進歩と言えます」と話す。
ECO-SYSに蓄積された環境情報の使われ方も大きく変化。従来はCSR報告書の作成や内部報告がメインであったが、現在ではより深い分析を行うことで、今後の環境経営や拠点での業務改善に役立てることに力点が置かれている。
「たとえば環境会計で言えば、今までは地球温暖化対策にどれくらいの投資を行い、どれくらいの成果があったかといったことを、グループ全体で集計するしかなかった。しかし、現在では、数ある取り組みの中で何が一番有効だったのかという点まで掘り下げられます。これらの情報を今後の改善に活かせば、より効果的な形で施策を展開できます」と清水氏は話す。こうした活動が行えるのも、SAP BusinessObjectsによるスピーディな分析環境があればこそ。「以前は集計作業に多くの時間を費やしたが、現在では集計作業はすぐに終わるので、その結果の分析や原因把握・対策の検討に時間を割くことができる」(清水氏)とのことだ。
もう一つ見逃せないのが、活動に取り組む各拠点のモチベーション向上だ。志賀氏は「モニタリング画面のグラフなどで自分たちの活動成果が見えるようになりましたので、より高い意識を持って改善に取り組んでもらえるようになりました。我々としても現場での『気付き』をさらに促進できるよう、より魅力的な情報の見せ方を追求してきたい」と話す。
現在同社では、環境経営の高度化に向けた新たなチャレンジも意欲的に展開中だ。「その一つとして、ECO-SYSトップ画面へのグラフ掲示だけでなく、各拠点に対して個別の分析データを定期配信する計画を進めています。こうした情報を拠点側のPDCAに組み込んでもらえれば、わざわざ自分で分析する工数も省けますし、改善活動も進めやすくなります」と志賀氏は 話す。その他にも、事業活動のサプライチェーン全体で環境負荷を測る指標として注目を集めている「SCOPE3」への対応などにも、積極的にSAP BusinessObjectsを活用していくとのことだ。
ITパートナーである富士通に対しても、高い期待が寄せられている。氏家氏は「提案から導入・運用支援に至るまで、我々の取り組みをしっかり支えてもらえたことを感謝しています。環境対応はこれからの企業に欠かせない重要なテーマ。当社でも社会貢献に向けた取り組みをさらに加速させていきますので、富士通にもこれまで以上の支援を期待しています」と語った。
設立 | 1964年3月 |
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所在地 | 東京都千代田区大手町2-6-1 |
資本金 | 195億5632万6316円 |
代表取締役社長 | 菅田 史朗 |
従業員数 | 5,470人 |
ホームページ | http://www.ushio.co.jp/ |
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