富士通リース株式会社では、「リースシステム」と呼ばれる基幹システムが管理するファイナンス/リース関連情報に基づいて事業を行っている。
あらゆる情報がリースシステムに集約されており、業務に必要な情報はリースシステムから取得して活用することが多い。しかし、情報の取得や集計は手作業で行うことが多く、作業時間や業務の煩雑さが課題になっていた。また、データ抽出ツールの使い方が難しいことも、業務担当者を悩ませていた。
そこで同社はBI(ビジネス・インテリジェンス)ツール「SAP BusinessObjects」を導入。データを取得して集計・分析する情報活用システムを構築し、業務の効率化を実現させた。
[ 2016年1月8日掲載 ]
1 | 基幹システムから業務に必要な情報を取得するのに時間がかかっていた | 必要な情報を自動的に取得するため、作業時間の短縮が実現できた | |
2 | 出力した帳票からデータを手作業で集計する必要があり、正確性に課題があった | データを手作業で集計することがなくなり、業務効率と正確性が向上した | |
3 | 従来のデータ抽出ツールは使い方が難しく、業務担当者が直接扱えなかった | 必要な条件を変更するだけで情報が入手できるので、業務担当者が容易に扱えるようになった |
富士通リース株式会社
執行役員
財務・経理・経営企画・IT企画担当
加藤高行氏
富士通リースは1978年、富士通製品の販売をファイナンス面から支援するリース会社として設立された。富士通製品を導入する法人を対象に最適なファイナンシャルソリューションを提供しており、現在は、顧客の約8割が地方公共団体という特色のあるリース会社だ。
同社には、会計以外の情報を一元的に取り扱う「リースシステム」と呼ばれる基幹システムがある。顧客情報、契約情報、債権情報、資産情報など、ほぼすべての情報がこのシステムに蓄積されており、リースシステムが同社の事業を支えていると言っても過言ではない。
「リースシステムは、ほぼすべての社員が日常的に利用している基幹システム。リースの商談や明細に関する情報の処理もさることながら、社長や支店長の決裁にも利用するなど、当社の事業にとって欠かすことのできない重要なシステムです」と同社の執行役員加藤高行氏は説明する。
富士通リース株式会社
IT企画部長
松山邦夫氏
すべての情報がリースシステムに集まるため、各業務部門が必要とする情報はその都度そこから取得しなければならない。ところが、基幹システムからの情報抽出は容易なことではなかった。定型の業務帳票を出力してから必要なデータを手作業で抽出、集計しなければならなかったため、情報の取得に時間がかかるばかりか正確性にも課題があったという。
「一部の業務では、データベースから『データ抽出ツール』を使って情報を取り出し、Excelを使用して集計していました。しかし、業務担当者がリースシステムのデータ構造を理解してデータ抽出の処理を定義することは難しく、また誰でも簡単に使えるツールではないため、リースシステムの運用管理を委託している富士通エフ・アイ・ピー株式会社に依頼し、必要なデータを用意してもらうこともありました」と同社のIT企画部長松山邦夫氏は説明する。そこで同社では、リースシステムから容易に情報を取得できる情報活用システムの構築を検討。そのツールとして導入したのがSAP BusinessObjectsだった。
富士通リース株式会社
財務部
シニアエキスパート
石川欽也氏
富士通リースの中でも、特に情報活用システムの必要性を感じていたのは財務部だった。前財務部で現経理部の担当課長郡山裕規氏は「財務部は資金の調達やリース料の請求・回収などの業務を担当する部署です。当時、業務効率化を目的に情報活用システムの構築を推進したのですが、その際、情報を抽出・分析し、可視化できるツールとして富士通から提案されたのが、SAP BusinessObjectsでした」と振り返る。
富士通リース株式会社
経理部
担当課長
郡山裕規氏
SAP BusinessObjectsは、データウェアハウスの構築からレポーティング・分析・マイニングなどのデータ活用まで総合的に支援する情報活用ソリューションだ。一般的にはBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールに分類されているが、基幹システムから必要な情報だけを取り出して集計するような業務支援ツールとしても有用。同社では、財務部だけでなく、与信などの業務にも活用範囲を拡大できるものとして、2005年に導入を決定した。導入にあたっては、財務部が先行するかたちで進められたが、今では様々な業務で活用されている(図1)。
富士通リース株式会社
経営企画部
田中陽一氏
「現在は、お客様からの依頼に応じて売掛確認の数字を集計したり、資金繰り計画を立てるために回収予定情報からの予測をしたり、監査法人から要求された資料を作成したりといった様々な業務にSAP BusinessObjectsを活用しています」と財務部 シニアエキスパートの石川欽也氏は話す。
図1:情報活用システムの構成
財務部にとって、SAPBusinessObjectsは業務効率化に大いに役立った。現在のメインユーザーである財務部の石川氏は、「前任者から現状の情報活用システムを引き継いだところであり、まだ詳しい比較はできていない」と前置きしながらも、SAP BusinessObjectsによって作業時間が短縮され、成果物の正確性は間違いなく向上していると話す。
「SAP BusinessObjectsでは、設定を変更するだけで、様々な集計を容易に行うことができます。手作業がなくなり、非常に“楽”だと感じています」 (石川氏)
なお、SAP BusinessObjectsは2005年の導入から現在までの間に2回のバージョンアップが実施されている。2009年度末に行われた1回目では、クライアント/サーバー環境からWeb環境へと変更。これにより、個人の端末で管理されていたレポート類をWeb経由で容易に共有できるようになったという。また、2回目のバージョンアップでは、Microsoft Officeのアドオン機能であるLiveOfficeが利用可能になり、今後この機能を活用して財務業務のさらなる効率化を進めることを検討している。
富士通リースではこれまで、SAP BusinessObjectsを財務部に限定して活用してきた。しかし、SAP BusinessObjectsは本来、様々な情報を多角的に分析して可視化するBIツールであり、経営層の意思決定にも活用できる。そこに目を付けたのが、経営企画部だ。
「現在、財務部では、リースシステムの中から業務に必要な情報を抽出・集計して利用していますが、まだまだ活用しきれていない“意味のある情報”はたくさんあります。それらの情報をより活用して、例えば経営層が営業速報や予実管理を閲覧するツールなど、新しい取組みが考えられます」と経営企画部の田中陽一氏は語る。さらに、「今は経営層に提出する決算報告などの書類は、いろいろな情報を切り貼りして1枚にまとめていますが、それをSAP BusinessObjectsを使ってどのように『見せる化』できるか、そこにどうやって取り組んでいくかが今後の課題です」と続ける。
将来的には、SAP BusinessObjectsを使って経営層が自由に経営情報を活用できる環境を用意することが理想だと田中氏は言う。SAP BusinessObjectsを導入して10年が経過した富士通リースだが、さらなる本格的な活用に向けて、改善への取り組みは今後も続いていく。
設立 | 1978年3月 |
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所在地 | 東京都千代田区神田練塀町3番地(富士ソフトビル) |
資本金 | 10億円 |
代表取締役社長 | 春日井 昌生 |
従業員数 | 160人 |
ホームページ | http://www.fujitsu.com/jp/group/lease/ |
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