今すぐ役立つAI活用ノウハウ

第9回AI導入に踏み切れない日本企業の現状
~誤解と過度の期待から生じる2つの課題~

ここ数年、AI(人工知能)が広く認知され、話題として取り上げられるようになりました。しかし、多くの企業で導入を検討していても「なかなか踏み切れない」という声を、まだよく聞きます。今回は、総務省が調査した「日本企業のAI導入にあたっての課題」(図1)の中で、最も多かった2つの課題「データ収集・整理が不十分」、「有用な結果が得られるか不明」について解決のヒントを紹介します。

図1 日本企業のAI導入にあたっての課題[写真]

Q. AI導入を阻む課題とは?

AI導入には多くのデータが必要だと聞きますが、実際のところはどうなのでしょうか?

質問者

その悩みは多く聞かれますね。総務省が日本企業のAI導入にあたっての課題を調査した結果でも、第1位が「データ収集・整理が不十分」でした。

回答者

皆さん同じ悩みを持っているのですね。やはり多くのデータがないとAI導入は難しいのでしょうか?

そんなことはありません。確かにデータは多いほうがいいですが、今のAI技術なら活用したい業務によっては、少ないデータでも始められますよ。

Q. データ収集・整理が不十分でも大丈夫なの?

そうなのですか。少ないデータでAIを始めるには、どうすればいいのですか?

例えば、工場でのプリント基板の外観品質検査でAIを活用する場合です。良品・不良品の画像を含めた数十枚の画像から始めることができます。運用していくうちにデータが蓄積されるので精度は向上します。また、不良品の画像がなくても良品画像があれば導入可能で、実際に20または30枚程度の画像からスタートした工場もあります。

そんなに少ない画像データからでも始められるのですね。ほかに事例はありますか?

そうですね、コールセンター業務での検索の事例があります。FAQ検索では、過去の記録がそのまま使えない場合があります。例えば、過去1,000件分の質問や回答のデータを機械学習に入れるのは、3、4カ月かかる大変な作業なります。そこで、問い合わせの多い数十件程度の質問・回答を優先的にデータ化し、運用しながらデータを作って増やしていくパターンです。

それならすぐにでも始められそうです。AIは意外と簡単に導入できるということですか?

確かに少ないデータでAIを始めることは可能ですが、もっと大切なことがあります。それは、AIをどんな業務に活用するのかテーマをしっかり選定することです。その前提として、まずは業務の整理、業務課題の洗い出し、課題の優先順位付けが重要となってきます。データがないと思い込んでいる人は多いですが、そもそも課題は何なのか、AIをどのように活用していきたいのかが皆さん明確に決まっていません。それらを決めた上で、必要なデータの有無を判断することが重要です。

業務課題の洗い出しと言われてもなかなか難しいです。どうすればいいのでしょうか?

ワークショップを利用するのも1つの方法です。ある工場で実施したワークショップでは、自社の現状や5年先、10年先のありたい姿などアイデアをカードに書き出してもらい、数人のグループでマッピングして優先順位を付けました。ワークショップによって、自分の中の潜在的な思いや本音が出て本当の課題が見えてくるはずですよ。このようなワークショップは富士通でも実施していますので、参考にしてみてください。

それなら課題も見つかりそうですね。ほかに、AIで活用するデータとして、手書きの紙資料をデジタル化することも頼めたりできますか?

もちろんです。書類・伝票・ラベルなど様々な紙資料をデジタル化することができます。悩んでいるのなら、一度相談してみるといいでしょう。

でも、ベンダーに頼むと料金が高いのでは?

データの量で費用が増減する可能性はあります。だからこそ、ベンダーに依頼する際は、本当にAIを必要とする業務のデータに絞り込むようになるでしょう。そこがベンダーに頼む利点でもあります。多くの企業で、トップダウンによるAI検討の指示が多いと聞きます。予算があるのなら、それをチャンスと捉えて進めなければもったいないですよ。また、あまり知られていませんが、大学に相談してみる方法もあります。

大学に相談するとはどういうことですか?

金沢工業大学工学部報工学科教授の松井くにお氏は、「AIの入り口としてぜひ大学を使ってほしい」と話しています。大学のAI研究は基礎研究だけではなく、実証研究にも取り組んでいます。データの分析・整理を頼みたいなら大学を使って試してみるのも有効です。大学の学生は、オープンデータでAIの研究をしているのがほとんどで、企業の実データが使えるなら喜んでデータの分析や整理をしてくれます。もちろん機密保持は前提です。企業と大学の双方にメリットがあり、まさにWin-Winの関係です。ぜひ、連絡してみてください。

Q. AIを導入すれば有用な結果が得られるの?

なるほど、そういう発想はなかったので驚きました。ただ、AIによって本当に有用な結果を得られるのでしょうか?

逆にお聞きしたいのですが、何を有用な結果と考えていますか?皆さんにしっかりと理解してほしいことは、そもそもAIは万能ではないということです。AIが効果を発揮するためには、どのような業務課題があって、何を解決したいのか、使う側があらかじめ分かっていることが重要です。

課題を明確にすれば、AIに期待してもいいのでしょうか?相当な予算をかけることになるので、どうしても気になります。

AIに過度の期待を持つのは禁物です。解決したい課題やテーマを決めた上で、まずはPoC(概念実証)でスモールスタートして効果を検証するのがいいでしょう。小規模な利用で効果を検証して期待値を確実にすることで、導入後に有用な結果を得られることになります。例えば、ある地方スーパーでは、各店舗の店長が販売情報や天気など様々な要因を考慮し、来客数を予測して商品の仕入れを行ってきました。来客数予測にAIの活用を決めて、まずは全店舗(約200店舗)のうち約1割に当たる店舗(約20店舗)で3カ月間実施しました。その結果、今まで廃棄ロスは5%程度だったのですが、AIによる予測を活用することで、廃棄ロスが2%程度に抑えることができました。効果が実証できたことにより、全店舗で実運用を開始しています。

効果がある程度想定できれば社内も説得できますね。それ以外にアドバイスがあればお願いします。

コールセンター業務にAIを導入した、株式会社ユーコット・インフォテクノ様は「AI導入は失敗を前提にするというか、受け入れる感じです。それを5年先の投資と考えないと、これからの時代に企業は生き残っていけません」と話しています。これまでは、500万円でシステムを導入したら2、3年後にはそれ以上の効果と利益を期待したそうです。確かに投資対効果は大切です。しかし、今のビジネススピードを考えると、失敗しても投資と考えて軌道修正しながらトライを続けなければ、時代に乗り遅れてしまうでしょう。
また、失敗から何を学んで再トライするのか、失敗する場合のコストをいかに最小限にとどめるのかも重要なポイントだと考えます。

編集後記:約半年を振り返って

第1回の執筆当初、毎日のように新聞・雑誌で各社のAI導入事例が報じられており、日本企業のAI導入はすでに構築・運用フェーズを迎えていると感じていました。しかし、弊社の独自アンケートでは、半数以上の企業が「トップダウンでAI活用を指示されたが、何をすればいいのか悩んでいる」という状況でした。そのため、当初AIに関する技術的な内容を中心に考えていましたが、皆様のAIに関する過度の期待や誤解を解くとともに、AI導入プロジェクトの第一歩を踏み出せるような内容を中心に執筆させていただきました。
皆様が抱える「AIに関する悩み 」の一助となれば幸いです。今後もぜひご期待ください。

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