今すぐ役立つAI活用ノウハウ

第5回AI プロジェクトを進める方法とは? 後編
~導入フェーズ:「構築」「運用」

前編の検討フェーズを経て、AIシステムは構築・運用の導入フェーズに入ります。構築して導入すればそこで終わりではなく、運用を通じてどれだけのパフォーマンスを持続的に発揮できるかで評価は決まるものです。

前回に引き続き、富士通AIサービス事業本部の一木篤史がベンダーとしての経験から導入フェーズのポイントに答えます。AI最前線を知っているからこそのお話は導入に役立つ知識が満載です。

富士通株式会社
AIサービス事業本部
第二フロンティア事業部
一木 篤史

ベンダーがAIシステムの開発を進める際、最も苦労するのはどこでしょうか。

インタビュアー

現場で感じるのは「データのサイロ化」です。データはあっても、サイロ化されていると、それぞれの部門と交渉しながら再構築する必要があり、これは実際のシステム開発とは別の労力を求められます。また、日本の企業はデータの開示に拒否反応を示すところが少なくありません。トップダウンで全社に号令をかけたものの、多くのデータを秘匿されると開発はなかなか進めにくい。クラウドよりオンプレミス、学習させるのも自分たちでやりたいというケースもあり、ここには柔軟に対応しています。

一木

そういう場合、どのようにプロジェクトを進めているのですか? 何か秘策は?

秘策というほどではありませんが、データがない、また少ないからできないではなく、データがあるところから始めて成果を見せることも必要です。何もしなければ時間もお金も無駄になってしまうので、クイックサクセスで少しでも前に進み、同時に、経営層のトップダウンでデータマネジメントの号令をかけてもらうようにお願いします。

導入フェーズで陥りがちな失敗パターンがあれば教えてください。

最もありがちなのは「時間がかかりすぎること」です。理由はいくつかあります。自然言語処理系、ナレッジの活用の領域ですと、ユースケースを決めて上申するプロセスで「他の文書も入れたい」「もっと網羅的に」など、適用範囲(スコープ)が変わってしまうことがあります。ある分野での検索、もう一つ別の分野での検索など2つのユースケースを設定したとして、「トータルで見られるように」とスコープを広げる。スコープを広げることは「ブレる」ことでもあり、計画を練り直す必要があります。ユースケースの策定から次のプロトタイプに移行するまでかなりの時間がかかったケースもありました。

途中で適用範囲を広げると、うまくいかないことが多い?

どうしても時間が余計にかかりがちです。標準でユースケースの策定に2か月、プロトタイプの作成に3か月、実証実験で3か月として1年弱。途中で適用範囲を広げると1年半から2年とかかるものがあります。最初の段階で「適切な範囲を設定すること」が、プロジェクトをスムーズに進める鍵になります。

AI導入によって、当初の狙っていた成果は出ていますか?

スコープさえしっかりしていれば成果は出ています。少し時間をかけないと見えないものもありますが、作業プロセスの変化はわかりやすいでしょう。
私がかかわっているトラブル報告書の部分だと、今まではキーワードで検索してすべて見なくてはいけなかったものが、トップ画面だけで全体を把握できるようになります。一つずつではなく、目の前のトラブルとの関連度に応じて類似のトラブルが引っ張れるようになるので、求めている情報にたどり着くスピードが上がり、トラブルシューティングならより迅速に対応できるようになります。省力化はわかりやすい成果の一つになると思います。

運用を開始後、持続的な成果を上げ、パフォーマンスを高めるためのポイントは?

検索結果に対して、良かったのか悪かったのか、フィードバックを受け取るような仕組みを入れることです。月1回くらいのペースで結果を精査して、検索結果に反映されるようなチューニングを実施。導入してそのままということはなく、精度を高めるためのメンテナンスは欠かせません。例えば、フィードバックは毎月いただき、チューニングは2、3か月ごとに。再学習のタイミングなどで反映させ、お客さまが望む結果が得られるように詰めていきます。

AIプロジェクトを進化させるには、何が必要なのでしょうか。

ポイントは「スモールスタート」だと思います。最初から広い範囲を想定するのではなく、まずコアなユースケースを設定する。そして、そこからスコープを少しずつ広げながら適用範囲を拡大していくのが理想です。スモールスタートで、まずは一歩を踏み出し、課題を解決しながらスコープを広げるサイクルが回れば、絶えず進化できると思います。

検索技術の領域だと文書がどんどん追加されていきますが。

その通りです。文書が追加される、つまりデータ量が増えても検索の精度を落とさないよう、逆に高めるような提案をしなければいけません。スモールスタートで始め、常にフィートバックを反映し、さらにデータの質を落とさないようにチューニングしていくことです。運用後、進化のサイクルを回しながら、クライアントに持続的な価値を提供してはじめて「AI導入は成功だった」と言ってもらえます。スピードを重視し、目の前の課題解決に向き合いながら、一方では長い射程でお付き合いしていけるようにも考える。われわれベンダーにはそれが求められていると思います。

前編・後編 まとめ

  • 1
    AIは万能じゃない、ただしスコープを適切に決めれば効果は得られる
  • 2
    ユースケースを策定するところが最も大事
  • 3
    AIの適用先は狭すぎても広すぎても効果が得にくい、初期段階で範囲を見極める
  • 4
    AI導入後も再学習やチューニングを繰り返すことが重要

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