なぜ、あの会社はサービスデスク(コールセンター)の問い合わせ対応時間を50%削減できたのか?
~AI活用法とプロジェクト推進の秘訣~

顧客接点のデジタル化に伴い、コンタクトセンターのオペレーターには今まで以上に質の高い対応が求められていますが、オペレーターの育成は短期間では難しく、その悩みを解決する存在として人工知能(AI)に期待が高まっています。

AI活用を検討する際によくある悩み

  • AIで何ができるのかイメージが湧かない
  • 事前に導入効果が見通せない
  • 教師データの準備が大変

背景

問合せ件数削減の鍵は マニュアル・FAQの検索環境

ユーコット・インフォテクノは1990年の設立以来、UCCグループのICTに関わる業務全般を担っている。

グループは缶コーヒーやレギュラーコーヒーの製造・販売を中心に、外食事業やコーヒーマシン事業などを国内外に展開。製造工場や流通現場、外食店舗などにおいて同社が開発・運用・保守を担うシステムは、現在60種にも上る。そのシステム利用に関する問合せのすべてを同社のサービスデスクが一元管理している。
「問合せはつまり、その間に業務が止まっていることを意味します。生産性の観点からも、問合せ件数を減らすこと、対応時間を短縮させることが我々の使命だと考えています」と話すのはユーコット・インフォテクノ 統合サポート部 サービスデスクグループ課長 梅垣陽一氏。「そこで、問合せ件数を“毎年5%削減する”という目標を立て、様々な施策を行ってきました」(梅垣氏)

問合せ件数の削減に一番効果的なのは、マニュアル・FAQの検索率を向上させること。マニュアル・FAQはすでにポータルサイトでユーザーにも公開されていたが、効果的に活用されていなかった。「最大の原因は、フォルダ階層が深くて回答を得るまでに時間がかかったことです(梅垣氏)」

加えてグループが近年、基幹系システムを移行するなど、既存システムの更新・増加が予想される状況となり、検索システムの抜本的な革新が求められていた。
「そうした中、AIの可能性を知って興味を持ちました」と梅垣氏。同社は業界の先駆者的な存在で、これまでも積極的に新技術を導入してきた。
AIを使ってマニュアル・FAQの検索率を向上させることに経営層からの異論はなく、2017年4月に導入検討を開始。
「AI技術の躍進は、特に金融業界などの事例で目にしていました」と話すのは代表取締役常務 統合サポート部部長 秋山毅氏。「ただし、我々にとっては未知の領域。大きな期待を寄せる一方、不安に感じる部分もありました。しかし、新しい技術(AI)を活用することで起こる“革新”は、弊社のプレゼンス向上や事業戦略の1つの手段にもつながると考えていました(秋山氏)」

株式会社ユーコット・インフォテクノ 代表取締役常務 統合サポート部部長 秋山 毅 氏
株式会社ユーコット・インフォテクノ 代表取締役常務 統合サポート部部長 秋山 毅 氏

課題

AI活用への懸念 最も有益な活用方法を模索

「AIプロジェクト推進における最初の課題は、ベンダーの選定でした」と梅垣氏。「我々の目的を最も効果的に叶えてくれるベンダーはどこなのか、何社か問い合わせてみたのですが、なかなかベストな選択に至らなかったんです(梅垣氏)」

株式会社ユーコット・インフォテクノ 統合サポート部 サービスデスクグループ課長 梅垣 陽一 氏
株式会社ユーコット・インフォテクノ 統合サポート部 サービスデスクグループ課長 梅垣 陽一 氏

その大きな理由は、同社の利用シーンにあった提案ではなかったこと。
「ベンダーが考える一方的な提案に対して、そこまでの冒険はできませんでした(秋山氏)」

導入に際しての最大の課題は、AIで何ができるのか、変わるのか、具体的なイメージを描けていなかったこと。
「AIを導入したら素晴らしい効果が期待できるのではないかと漠然と考えていたのです。AIを使って何をどのように変革させるのか見えていなかったため、具体的にプロジェクトを動かすことができませんでした」(梅垣氏)

経営的な視点で見ると、「やはり、投資対効果を含めた最も有益なAI活用方法を見つけられるまでは、導入にゴーサインは出せませんでした」(秋山氏)

ポイント

実証実験で不安要素を払拭 飛躍的な検索性能の向上を実感

2017年8月、同社は富士通をパートナーとして選定し、Zinrai「FAQ検索」の導入を決めた。
「富士通は我々の業務やシステムを含めたグループ全体の環境を熟知してくれています。その安心感が採用を決めた最大の理由です」と梅垣氏は語る。「未知のシステム(技術)を導入する際は、我々のことを理解してくれているパートナーの存在は貴重ですから」(梅垣氏)

課題だったコスト面においても、「いくつかのプランを提案いただいて、導入後も含めたコストを想定できたことで、プロジェクトの一歩を踏み出すことができました」(梅垣氏)

AI活用に向けたプロジェクトは、AIの概念・理論から実用的な活用方法の検証を行い、その後システムを具体的に構築していく。
「AI初心者の我々でしたが、AIの可能性を知ることから、我々の目指す具体的な活用法を決めるまでを段階的に導いてもらいました」と梅垣氏。
また「導入に必要な資料やデータの準備期間を想定できたことで、より計画的に進められたと思います」(梅垣氏)

まず柱となるのは自社の検索システムの革新。骨組みは「過去のインシデントを教師データとして各種マニュアルに紐付けし、回答を得る」というものだが、Zinrai「FAQ検索」が画期的なのは、質問者の意図を汲み取って検索してくれる点にある。
「つまり、Zinrai「FAQ検索」なら、質問者の自然な文章をそのまま入力してもFAQ検索が可能です。最適なキーワードを判断して検索を行ってくれるため検索時間が大幅に短縮されます」とサービスデスクグループ藤永恵理子氏。

株式会社ユーコット・インフォテクノ サービスデスクグループ主任 藤永 恵理子 氏
株式会社ユーコット・インフォテクノ サービスデスクグループ主任 藤永 恵理子 氏

また、検索結果は常に学習され、同様の質問に対する回答の順番が更新されていくため、検索を重ねるごとに的確な回答が得られるようになる。
さらに自然文入力をサポートすることで、入力にかかる手間も大幅に短縮できる。

「問合せ件数の飛躍的な減少が期待でき、さらに回答の正確さが向上して、メンバーのスキルの平準化にも効果的。まさに期待にかなう技術です」(藤永氏)

しかし問題は、「本当にそれだけの効果が出るのか、説明だけでは判断がつかないことでした」と秋山氏。

そこで、2017年7月に実データを使った実証実験を行った。
「検索結果は、かなりの確率で正しい回答を得られ、インシデントの記録の方法を工夫すれば十分に使えると判断できました」と藤永氏。「検索時間もこれまでの10分の1に短縮され、多量のデータを抱えても検索のレスポンスに影響がないなど、Zinrai「FAQ検索」導入の利点がはっきりと分かりました」(藤永氏)

実証実験は非常に満足いく結果となった。そしていよいよ開発に着手。
しかしここで、新たな課題が発生。
「教師データの準備に時間が掛かりすぎるという問題です」(藤永氏)

日常業務と並行して教師データの作成に着手したが、2か月分のインシデントから教師データを作成するのに2週間かかり、しかも3%しか教師データにならなかった。「全てデータ化するには8カ月。非常に効率が悪いことがわかりました」

これに対して、過去のデータと既存のFAQをそのままZinrai「FAQ検索」に投入する代替案で解決。検索結果に対するユーザーの評価と紐付けすることで、より確度の高い検索ができるように教師データを育てていく方法だ。
「教師データの問題は当初、非常に大きな障害にも感じられましたが、Zinrai「FAQ検索」ならびに富士通SEの柔軟性に助けられました」(梅垣氏)

効果と今後の展望

AI活用の手応えを得て グループ会社への横展開も視野に

Zinrai「FAQ検索」は現在、サービスデスクメンバーのみで限定的に活用されているが、2018年12月からUCCグループのユーザーにも公開予定。スマートフォンでの利用も可能なため、問合せの大幅な削減に期待が高まる。
「自社のFAQ検索システムに関する機能は今後、さらに進化させていく予定です。その一つがチャットボット機能。問合せ対応を一部自動化させることで、ユーザーからの問合せ件数・時間の短縮が期待されます」と梅垣氏。
「導入当初から考えていたように、今回のノウハウ(AI技術)をグループの全てのヘルプデスクに展開する予定です。AIは使えば使うほど精度が上がる、つまり成長するシステムです。我々の得た知識やノウハウをグループに還元し、ゆくゆくはAIをUCC全体に広めていきたいと考えています。今回は、その有益な試金石となりました」(秋山氏)

関連リンク

[2019年1月掲載]

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