富士通コミュニケーションサービス株式会社

AI搭載「ナレッジ検索」でコンタクトセンターの品質アップ
-新人でもベテランと同様な応対が可能に-

顧客接点のデジタル化に伴い、コンタクトセンターのオペレーターには今まで以上に質の高い対応が求められていますが、オペレーターの育成は短期間では難しく、その悩みを解決する存在として人工知能(AI)に期待が高まっています。

「待たせないコンタクトセンター」実現のためのAI

富士通コミュニケーションサービス(以下、CSL)は、富士通グループの一員としてコンタクトセンターおよびITサポートのアウトソーシング事業を展開している企業だ。そのなかで、富士通グループ全体の総合受付窓口も運営している。

富士通の製品やサービスの購入を検討するB2B顧客にとっての窓口は「富士通コンタクトライン」「富士通お客様総合センター」の2つだ。前者はどの商材について質問したいかある程度理解している顧客のための窓口で、後者はその手掛かりもない顧客のサポートを受ける窓口という役割の違いがある。

富士通お客様総合センターは「迷子センターのガイド」のような役割を担う分、応対の難易度が高い。スキルの獲得には多くの時間を必要とするため、経験の違いでオペレーターのスキルレベルにばらつきができてしまう。CSLはベテランと若手のスキルギャップを補うため、これまでのセンター運営で蓄積した約2300件のナレッジを検索するシステムを運用していた。しかし実際には十分に活用できていなかった。その理由をCSLの橋本武彦氏(ソリューション本部CXサービス統括部セールスマーケティングサービス部 課長代理)は「ベテランであれば、瞬時にどのナレッジを参照すればいいか判断できます。しかし経験が少ないと、ナレッジを見つけるためのキーワードが思い付かないために検索システムを活用しきれていません」と説明する。

スタッフのスキルギャップを埋め、組織として「顧客を待たせないコンタクトセンター」を実現したいと考えた同社が導入したのが「Zinrai FAQ検索」だ。

CSLの橋本武彦氏CSLの橋本武彦氏

既存のシステムを拡張し、自然文でのナレッジ検索を実現

Zinrai(ジンライ)とは、富士通が目指す「人と協調する、人を中心としたAI」「継続的に成長するAI」を実現するための技術を体系化したもので、正式名称を「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」という。Zinrai FAQ検索は、質問文に対して、あらかじめ学習したFAQから適切な回答を検索して確度の高い順に結果を表示する仕組みを提供している。検索窓に自然文の質問を入力すれば適切な回答を提示してくれるので、ユーザーは検索キーワードに悩む必要がない。

例えば「富士通のPCサーバについて教えてください」と入力したとしよう。Zinraiは熟練したオペレーターが意識せずにできる「脳内変換」を人間に代わって実行し、富士通のPCサーバブランド「PRIMERGY」に関する情報の中から役に立つと思われる順に結果を表示する。これならば、経験が少ない若手であっても素早くナレッジにたどり着ける。顧客の困りごとに対してスピーディーに的確な答えを提供できるわけだ。

CSLは、富士通とともに概念実証(PoC)を実施してZinrai FAQ検索を試行した。

Zinrai FAQ検索の画面Zinrai FAQ検索の画面

プロジェクトで重視したのは、これまでのキーワード検索を前提とするFAQシステムと同等以上の使用感だ。今まで使ってきたシステムがあるからこそ、オペレーターには事前にシステムを変えることの意義を理解してもらう必要があった。

CSLの小杉卓矢氏(ソリューション本部CXサービス統括部セールスマーケティングサービス部)は、「オペレーターの中には『AIは何でもできる』という過剰な期待を抱いていた人もいました。そこでまず、AIはオペレーターのアシスタントになるものと認識を合わせた上で、新しいシステムを使ってもらう必要がありました」と語る。

CSLの小杉卓矢氏CSLの小杉卓矢氏

人間が9年かけて実現した精度をZinrai FAQ検索は2週間で

PoCは順調に進み、Zinrai FAQ検索のヒット率は最終的に85.9%に達した。実際にオペレーターが使ってみた期間は2週間だ。橋本氏は「この結果は想定よりも高い」と評価し「トライアル期間のわずか2週間で、これまで9年かけて運用してきた精度に追い付いた」と驚く。

PoC期間中はチューニングを繰り返し、精度向上を目指した。各オペレーターから「Zinrai FAQ検索の検索結果は参考になったか」についてフィードバックをもらい、より適切な結果を提示できるよう学習を繰り返したのだ。小杉氏も「チューニングを繰り返すことで、既存のナレッジ検索システムと遜色のないレベルに達した」と話す。オペレーターも協力的で、Zinrai FAQ検索で強化した新しいシステムを使いながら、システムに盛り込んでほしい機能を積極的にフィードバックしていたという。

特に有用だったのが、オペレーターの意見を基に実装したナレッジ編集機能だ。「富士通コンタクトライン」「富士通お客様総合センター」が持つ約2300件のナレッジは、継続的にメンテナンスを加えながら蓄積してきたものである。これまでは「何番のナレッジをいつ誰がどんな経緯でどう改訂したか」を台帳に記録していたが、管理負担が大きかった。Zinrai FAQ検索を利用することにより、リッチテキスト形式で編集可能になった。留意すべきポイントを「太字」「赤字」「下線」などで強調できるようになったことで、オペレーターはナレッジをより早く理解し、より適切な応対に役立てられるようになった。PoCの当初は検索精度の向上に焦点を当てていたCSLだが、現場の運用ニーズに即した新機能を実装できたことも、大きな成果だと評価している。

音声認識やサポートのパーソナライゼーションも

CSLは、将来的にナレッジ管理プロセス全体をシステム化することも視野に入れている。ナレッジの修正および追加の申請からナレッジ採用の可否判断、更新、通知までの一連の流れをZinrai FAQ検索を用いて自動化し、運用工数の削減につなげる。さらに独自の要件として「問い合わせの取次先に関するデータのメンテナンス自動化も実現したい」と橋本氏は話す。組織改正があると商材を担当する部署、担当者、内線番号などが大きく変わる。このデータを一括で置き換えることができれば、全体的な管理工数を削減できるはずだ。

今回のPoCプロジェクトで得た知見はもちろん富士通グループ以外でも広く応用可能なものである。コンタクトセンターを運営する企業であれば、どこであれスキルトランスファーの課題を抱えていることだろう。「Zinraiの力を借りれば、新人がもっと早くベテランのスキルに近づくことができます。今回のPoCの成果は全てのコンタクトセンター事業者が抱える共通の課題解決に役立てられるはずです」と橋本氏は強調した。

技術的な挑戦としては、音声入力の実装を計画中だ。2019年5月に富士通は「Zinrai Contact Center Knowledge Assistant」(Zinrai CKA)の提供を開始した。これはコンタクトセンターにおけるオペレーターと顧客の会話をリアルタイムに音声認識してテキスト化するシステムだ。Zinrai CKAをシステムに組み込めば、オペレーターは画面に表示される会話の内容と関連するナレッジを同時に参照しながら、顧客応対ができるようになる。Zinrai CKAについては別途PoCを進める方針だ。

さらに将来は、オペレーターのスキルに応じてパーソナライズしたサポートを実現することまで見据えている。例えば、オペレーターごとに必要になりそうな情報をZinraiが予測して提供できるようになれば、スタッフ間のスキルギャップをもっと縮めることができる。オペレーターの条件だけでなく、顧客の属性によっても対処すべきことが変化するからこそ、橋本氏はこうした複雑な運用をAIで支援することに意欲を示す。

CSLのPoCの成果は、AIが新人育成を短期間に実現することを示したショーケースとなるだろう。AIがアシスタントとなることで人間のスキルをフル活用するという点で、新しい働き方の一つの方向性を示すものと言える。コンタクトセンター運用に課題があり、現状の殻を破る突破口を探している事業者には参考になるだろう。

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[2019年10月掲載]

※本記事は「 ITmediaマーケティング 」サイト掲載内容を再録したものです。

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