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ニーズに呼応して裾野広がる無線技術 エッジコンピューティングも着実に進化

 

ニーズに呼応して裾野広がる無線技術
エッジコンピューティングも着実に進化

本稿は、『Knowledge Integration for the Future 2018 Summer デジタルジャーニーで未来を切り拓く』( 8.02 MB)(IT Leaders 特別編集版、2018年5月)「PART3-5 ソリューション&テクノロジー[IoT]」の再掲です。

2018年6月4日

大澤 達蔵 富士通 ネットワークサービス IoTビジネス推進室 室長

様々なデジタル技術の中で、最優先で取り組むべきものがIoTである。製造現場にある機器や設備、機械や自動車、ビルや施設といったモノから、ヒトやコトまであらゆるものがネットにつながる。製造業はもちろん、保険などの金融業、運輸業、農業などあらゆる業界にインパクトを及ぼすからである。

富士通でも、IoTを最重要技術の1つと捉えて技術開発や人材の強化、サービスの拡充に取り組んでおり、1年前の本誌ではセンサーとIoTプラットフォームに着目することの重要性を説明した。今回はIoTに取り組む上で欠かせない要素の1つである無線技術と、IoTプラットフォームの内部構成を解説する。

IoT無線技術の動向を理解する

配線が不要でセンサーやデバイスの設置がしやすくなる点で、無線技術はIoTに必須だ。しかし一方で、デバイスの消費電力や無線周波数の配分といった制約もある。例えば、データ送信の際に誤り訂正などの追加情報を加えると、より遠距離の無線通信が可能になるが、その分、実効通信速度は下がってしまう。電池だけで何年も動作する無線デバイスを実現することも可能だが、やはり通信時間や到達可能距離は限られる。このように通信速度、到達距離、電力消費などすべての条件をすべて満たせる無線技術は原理的に存在しない。そのため多様な無線技術を用途ごとに使い分ける必要がある。

一方、ここに来て、乱立していた通信技術の標準化が進展し、また低消費電力(Low Power)でより広域(Wide Area)の通信飛距離を持つ技術であるLPWA(Low Power Wide Area)が普及。これを活かした広域の無線通信サービスを提供する通信事業者が増加するなど、選択肢が増えている。その分、知っておくべきことも増えたのだ。実際、IoTに適する無線技術は代表的なものだけでも数多い(表1)。

表1:代表的なIoT無線技術

ここで表1の縦軸にある周波数帯とトポロジーについて説明しておこう。周波数帯には、一定条件の下で免許なしに使える2.4GHz/5GHz/920MHzなどの帯域と、免許が必要でモバイル通信事業者が提供するGSM/LTE/5G bandなどの帯域がある。特に発展著しいのが、免許不要帯域を活用できる近距離無線に関する技術や製品だ。一般に周波数帯が高いほど周波数の幅を大きく取れるため、通信速度は向上する。しかし電波の減衰が大きくなって到達距離が短くなるうえ、電波の直進性が強くなり屋内や物陰などに電波が届きにくくなる。

ネットワークトポロジーは、無線機同士の接続形態のことである。無線区間が1段のみの基本形態をスターと呼ぶ。無線区間同士を数珠つなぎして、有線区間無しに総通信距離を伸ばすのがツリーである。さらに、ツリーの中継無線機が障害時でも、迂回路を活用して通信を継続するのがメッシュである。

LPWAのサービスが相次ぐ

次に横軸の通信技術について説明しよう。Wi-FiやBluetoothは、PCやスマートデバイスにも使われる技術だ。Wi-Fiについては産業用に920MHz帯を使った技術(厳密にはLPWAに分類される)があり、Bluetoothも2017年にメッシュ機能の標準化が完了するなど、日進月歩で進化している。Wi-SUNは産業用メッシュ ネットワークとして日本発の標準技術である。道路照明、駐車場システム、電力網のスマートメーターなどに採用されている。

右側4つが一般的にLPWAに分類される。このうちSIGFOXは、フランスの新興通信事業者が独占展開する。日本では2017年に京セラコミュニケーションシステムがサービスを開始した。LoRaWANはLPWAの中で唯一、免許不要で自営局が設置できる規格であり、日本国内でも大小様々な実証実験が行われている。LTE-MおよびNB-IoTは、LTEや5Gといったモバイル通信事業者が提供するIoT向け通信サービスであり、2018年1月にKDDIが日本初のLTE-Mサービスを開始したのを皮切りに、各通信事業者から順次提供が予定されている。

ではIoTに取り組む時、これらの技術をどのように使い分ければよいか。表の適用例などを参考に各技術の特性を比較検討して選定するのが基本だが、異なるアプローチもある。センサーなどのデバイスが搭載する無線技術を確認するのである。例えばウェアラブルセンサーの大半はBluetoothを採用している。作業員のバイタルをセンシングするには、Bluetooth経由でスマートフォンなどと連携させるといい。新たなウェアラブルセンサーを作る時も、Bluetoothを想定するといった具合である。もちろん開発が進めばLPWA技術が使われる可能性もあるので、目配りをしておくべきである。

特徴あるIoT無線技術も

公的・実質問わず標準的なIoT無線技術が増える一方で、現在進行形で新たな技術も登場している。Wi-FiなどIT系の無線技術は標準化が先行し、続いて製品化・普及という道を辿るが、IoT系の無線技術はまず市場への提供が先行し、その後に標準化が行われることも多いためである。技術の進歩がそれだけ早いからこそで、有用なものは積極的に活用する姿勢が必要である。参考までにいくつか紹介したい。

Sony's LPWAは、100km以上の超長距離において高速移動するモノ同士が安定的に、低消費電力で通信できるようにする技術である。トレードオフとなっているのが、実効速度が80bpsと超低速であること。送信方式や誤り訂正技術を工夫することで、この仕様を実現した。山岳地や海洋など通信事業者の電波が届かない、かつ自営局設置も困難な環境で、新たな「つながる」手段を提供する。

一方で、富士通が開発したのが、アドホック無線システム。子機の一部が中継機の役割を担えるようにする技術であり、歩行程度の速度で子機が移動するなど位置関係が刻々と変化する中で、動的にトポロジーを再構成して通信を担保する(図1)。従来のメッシュ技術では中継無線機を固定するのが前提だったが、一時的な作業現場など中継無線機の固定設置が困難な環境下でも多段の無線通信を可能にする。

図1: 富士通のIoT向けアドホック無線システム「FUJITSU Network Edgiotシリーズ

これらの新技術からご理解いただきたいのは、ニーズに合う無線技術が存在しないように思えても、どこかが開発している可能性があるし、技術を生み出すこともできることだ。距離と速度のようにトレードオフこそ今後も存在するものの、「これは無理だろう」などと諦める必要はない。この点はIoT無線技術の面白さである。

IoTシステムの基本構成

ところでIoTシステムというと、センサーデバイスと無線技術、クラウド上のアプリケーションから構成される、といった印象があるかもしれない。センサーの情報をアプリが適宜、収集・処理して監視しながら、必要な場合にはセンサーに指示を出すような形だ。確かにその通りなのだが、実はIoTシステムでは図2のような基本構成を採ることが多い。従来のクライアントサーバーシステムやWebシステムとは異なる、ある種の柔軟性が求められるからだ。

図2:IoTシステムの基本構成

IoTシステム構成要素の1つが、企業情報システムではまず聞かない「エッジサーバー」である。多数のセンサーデバイスが送出するデータのすべてをクラウド側で処理しようとすると、ネットワーク帯域はもちろんアプリケーション側の処理負担が重くなってしまう。そこでエッジサーバーで必要な処理を実行。必要なデータだけをブローカーを介してアプリに届ける。最近ではほとんど見られないが、エンタープライズシステムにおける部門サーバーに近い役割を持つ。

エッジサーバーを配置することで、近距離ネットワーク技術と広域ネットワーク技術を組合せて利用できる利点もある。利用する必然性と言い換えることもできるが、例えばBluetooth対応センサーは単体ではクラウドとの接続はできない。スマートフォンやPCをエッジサーバーとして利用すればモバイル通信ネットワークを使ってクラウドに接続できる。実際に作業者の身体状況をモニターするバイタルセンサーなどに多く適用されるパターンである。ほかにもセキュリティや信頼性、レスポンスなども効果が大きい。このような処理形態は“エッジコンピューティング”と呼ばれ、様々な技術開発が行われている。

暗号化や認証認可などのセキュリティ機能を担う「セキュリティゲートウェイ」を設置するケースも多い。IoTのセンサーデバイスは無人状態で通信を行うのに加えて、展開・運用するデバイスは非常に多数になる。したがって人間系の認証で一般的な二段階認証などの手段は利用できない。それに代わって電子証明書を使った認証などにより、セキュリティを担保する。

IoTの多様な通信プロトコルやデータフォーマットの差異を吸収する「プロトコル処理」もある。一旦、IoTシステムを構築した後も、新たな種類のセンサーを追加することは少なくなく、プロトコル処理の柔軟性が拡張性に影響を及ぼす。またデータ圧縮伸長処理をここで実行すれば通信量を節約することもできる。

「ブローカー」はIoTに限定しない一般技術用語である。その名の通り、デバイスとアプリを仲介する役割であり、チャットなどの個人間連絡システムや掲示板システムを含む、メッセージングシステム全般において登場する。その役割は、多数のデバイスから非同期かつ高頻度にデータを集める際にアプリの負荷を適切にオフロードすることだ。Webシステムにおける負荷分散装置と同様の役割だが、通常の負荷分散装置では想定しない、IoTならではの要件にも対応可能だ。

例えば、データを集めるだけでなく指示を出す方向の通信への対応、複数の通信プロトコルへの対応、非常に高頻度な通信データを複数まとめてアプリに渡すことでより効果的にオフロードすること、などである。 「リアルタイムイベント処理」は、到着したデータの中身を判断し、必要に応じてメールで管理者に通知したり、外部サービスを呼び出したりする。「デバイス管理DB」は、センサーデバイスやエッジサーバーの状態を管理し、稼働状態の確認や動作パラメータの変更、さらにはセンサーデバイスやエッジサーバーのソフトウェアの更新を担う。

IoTプラットフォームを効果的に活用すべき

以上のIoTシステムの機能要素を実装したのが、いわゆるIoTプラットフォームである。提供事業者によって多少構成は異なるが、例えばAWS IoT Core、Azure IoT Hub、IoT Platform(NTTコミュニケーションズ)などのクラウドサービスが提供されている。もちろん富士通も、K5 IoT Platformを提供中だ。

一方で特定の業種で利用されるセンサーデバイスとの連携インタフェースやデータベース、分析や可視化のアプリケーションなどを全て含んだ、IoTソリューションも数多く登場してきている。製造業や流通業などに最適化したデータベースや分析/AIを取り揃えることで、汎用製品を組合わせて実装する必要がなく、短期間でIoTシステムを利用できる。

富士通の例を挙げると製造業向けのCOLMINA、流通業向けのSMAVIA、農業向けのAkisaiがある。 今後は、こういったプラットフォームやソリューションで蓄積されたデータを業種を横断して活用するなど、既存の業種の枠を超えるソリューションを検討する予定である。


本ページに記載された内容は、掲載日現在のものです。その後予告なしに変更されることがあります。あらかじめご了承ください。

トップ写真:Prasit Rodphan /Getty Images

 
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