Director Interview 「ゲームチェンジ」の時代において
デザイン思考がビジネス革新のカギになる

テクノロジーの進化により、従来は実現できなかったことが次々可能になる現在、既存のビジネスアプローチでは社会の求めに応えることは難しい。顧客のニーズに先駆けて新しい価値を提案し、それを継続的なビジネス成長につなげる上で欠かせないものになっているのが「デザイン思考」だ。これについて、武蔵野美術大学の山崎 和彦教授に話を聞いた。

Profile

山崎 和彦 教授

武蔵野美術大学大学院
造形構想研究科

京都工芸繊維大学卒、東京大学大学院博士課程満期退学。グッドデザイン賞選定委員、経産省デザイン思考活用推進委員会座長などを歴任。現在は教育とHCD/UXやデザイン戦略に関わるコンサルティングに従事している。

山崎 和彦 教授の写真

相手が潜在的に求めることは何か「本質的な価値」を追求せよ

デジタル技術はあらゆるビジネスの常識を塗り替えた。誰もが手元のデバイスでテクノロジーを扱える現在、企業が向き合う顧客や消費者の感覚は、従来とは大きく違うものになっている。

「企業側の理屈で製品を作っていれば売れた時代は終わりました。今後は、製品やサービスを提供する相手のことを今まで以上に考えなければ、企業は生き残っていけません。サービス・ドミナント・ロジック(SDL)、つまりサービスは使われて初めて価値が出るものという視点ですべてを組み立てないと、競争力は維持できなくなっています。このゲームチェンジに適応できない企業は、徐々に淘汰されていくはずです」と武蔵野美術大学の山崎 和彦教授は指摘する。

分かりやすい例が自動車業界だ。現在は、「品質の高い車を安く提供すればよい」という認識自体が古いものになりつつある。「自動車の本質的な価値は『簡単、快適に移動できる』という点にあります。これが実現できるなら、必ずしも自動車を所有する必要はないというのが現在の消費者の感覚であり、これを理解しなければ、市場と大きくずれた製品やサービスを提供し続けることになってしまうでしょう」(山崎教授)。

この状況においては当然、企業側の人間もこれまでとは違う発想法を体得する必要がある。それが「デザイン思考」だ。

ユーザーの視点と企業の視点 両方を組み合わせることが大事

デザイン思考は、その名の通りデザイナーの発想法に着想を得て考案された、問題の定義と解決に関するアプローチの1つである。その基本は、「最も大切なものは何か」からクリエイティブな発想をスタートさせること。顕在化したニーズではなく、その背後の、顧客や消費者が潜在的に求める体験(ウォンツ)までさかのぼって考えることにあるという。

「具体的な思考法の1つが、アイデアの発散や収束を繰り返しながら問題の本質や解決策を探っていく『ダブルダイヤモンド』です。この過程で、一度は収束させたあと、あえて前の段階の発散に戻る(リフレーム)ことで、ウォンツにより近づくことが可能になります」と山崎教授は紹介する。

また、デザイン思考の活用に際しては、「ユーザー」と「企業」、両方の視点で取り組むことも重要だという。

「ユーザーの体験を精査することで新しい製品やサービスのあり方を考えることを『アウトサイド・イン』。反対に、企業が提供したいブランド体験の視点からビジョンや戦略を立案することを『インサイド・アウト』と呼びます」と山崎教授。この両方の視点と、ダブルダイヤモンドのプロセスを組み合わせることで、本当に提供すべきサービスのあり方や、製品が備えるべき機能などが的確に可視化できるようになるという。

ダブルダイヤモンド
アイデアの発散と収束を繰り返すプロセスがデザイン思考の核となる。ときには元の発散に立ち戻ることが、ウォンツの抽出につながる

製品やサービスの開発以外に組織の再構築にも欠かせない

加えてデザイン思考は、これまでにない製品やサービスを考える際に必要なことはもちろん、新しいビジネスモデルを考えたり、組織を再構築したりする上でも有効な考え方になるという。

「実際、これは多くの企業が見過ごしているポイントだと思います。つまり、新しい製品やサービスの開発に役立てようと、取り組みを進める企業は多いのですが、ビジネスモデルや組織の再構築にもデザイン思考のアプローチを用いている企業は、まだ数は少ないのです」(山崎教授)

だが、考えてみれば、革新的な製品にはそれを売るためのビジネスモデルが必要であり、ビジネスモデルを実行するには新しい組織体制が不可欠だ。このように、デザイン思考とは、これからの企業が成長していくため、ビジネスのあらゆる側面で必要になる考え方といえる。

「デザイン思考を体得するには、これまで学んだことを一度捨てて、学び直すことが必要です。これは『アンラーニング(Unlearning)』とも呼ばれ、新しいことを身に付ける過程で重要な姿勢の1つとなっています」(山崎教授)

企業が改革に着手するため必要な知識やノウハウを提供する

デザイン思考の重要性に気付き、ビジネスを急成長させた企業は多い。例えば、ある米国のIT企業は、わずか数年の間に社内のデザイナーの人数を従来の3倍である数千名まで増員した。これにより、デザイン思考を企業の基盤に据えた改革に着手している。

「同社の特徴は、組織内の一部だけが取り組むのではなく、全社的に導入していることです。ゲームチェンジの時代に欠かせないものとしてデザイン思考を捉え、抜本的な変革を進めています」と山崎教授は紹介する。またデザイン思考を定着させるためには、どうしても一定の時間が必要になる。そこで同社は、知見を蓄えるためのシステム化、パターン化にも力を注ぐことで、ビジネス効率との両立を図っているという。

ただし、何のノウハウもないまま、いきなりそうした大々的な取り組みに着手するのは難しい。そこで「FUJITSU Digital Business College」は、デザイン思考を活用し、新しいビジネスを創出する人材を育てるための知見を提供している。「私は、このカレッジでデザイン思考関連の人材育成プログラムの監修者を務めています。企業組織が変わるためには、まず人が変わらなければいけません。ここで学ぶことが、そのための1つのきっかけになればいいと考えています」と山崎教授は語る。

労働力人口が減少していくこれからの時代、社員一人ひとりのポテンシャルを引き出し、新しいビジネスや市場に積極的にチャレンジしていくことなしに、企業の成長は望めない。生き残りをかけた戦いに、デザイン思考は不可欠だ。FUJITSU Digital Business Collegeは、そのための取り組みを進める企業にとって、大きな助けになるものといえるだろう。

  • (注)
    記載の会社名、製品名、名称等の固有名詞は各社の商標または、登録商標です。
    記載の肩書きや役職、固有名詞などは2019年4月時点のものです。

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