ITIL®とは?

ITIL®とは?

ITIL®とは、ITサービスマネジメントのベストプラクティス(実践され良いと認められたやり方)をまとめた書籍群です。

ITIL®の歴史は、1980年代後半から1990年代の初めにかけて、英国政府のIT利用高度化のガイドラインとしてスタートします。

当時、英国政府は、膨大なIT投資に比べ得られる効果が見合わないこと、日々の運用効率化がなかなか進まないことなどの課題を抱えていました。そこで、英国政府は、何らかの運用の標準を策定しガイドラインとしてまとめ、そのガイドラインに準じたITサービスの提供を取引業者に求めることにしました。

英国政府は、関係政府機関に指示し、ITを有効活用している先進企業を調査、ITサービス提供の方法論を整理する活動を開始しました。その成果が40冊を超える書籍群として結実し、ITIL®V1となったのです。このITIL®V1に対して、1990年代後半から2004年にかけて、1回目の大きな改版が行われます。40冊余りの書籍は、7分野に再編成され、7冊(注1)の書籍として、順次発刊されました。ITIL®V2の誕生です。このバージョンが、実質的に世界に広く普及しました。日本においても、2003年から2006年にかけて、そのうちの6冊が翻訳、出版されています。

また、この間、ITIL®の標準規格への取り込みも進められました。英国BS15000を始めとした国家規格が策定され、さらに2005年12月には、国際規格ISO/IEC 20000が策定されました。2007年4月には、日本でもJIS Q 20000として規格化されています。

2004年英国政府機関OGC(Office of Government Commerce:商務局)は、ITIL®の2回目の大きな改版の検討を開始します。

その1つの背景として、サービス指向アーキテクチャ(SOA:Service Oriented Architecture)などの新しいアーキテクチャーや RAD(Rapid Application Development)などの新しい開発技法の登場、仮想化などの技術的な進歩、アウトソーシングの普及などのITサービス提供形態の変化など、ITIL®を取り巻く環境が大きく変化してきたことがあげられています。

また、ITIL®V2が数年間にまたがり発刊されたため、最初の書籍と最後の書籍の整合性をとるのが難しかったことなども、背景の一つだと言われています。

2007年5月、ITIL®V3の中核となる書籍5冊が一括して発刊されました。サービスストラテジ、サービスデザイン、サービストランジション、サービスオペレーション、継続的サービス改善の5冊です。

ITIL®V3では、新しくITサービスマネジメント・ライフサイクルの考え方が導入され、その観点で全体の構成が再整理されました。2008年5月から8月に、日本語翻訳版も相次いで発刊されました。

その後、2011年に、書籍構成の標準化を徹底することにより、全体的な整合性と読みやすさの向上を狙いとして、ITIL®2011editionが発行されました。特に、サービスストラテジは大幅な改訂が行われ、クラウド・コンピュティングの普及、ソーシング戦略のオプション拡大などの業界動向を取り込み、今後の本格的なITサービス化の進展に対応する形となっています。

解説

注1: 「ソフトウェア資産管理(Software Asset Management Book)」、「ITIL®小規模導入(Small-Scale Implementation)」も含め、9冊という場合もあります。

ITIL®V2からITIL®V3へ

ITIL®V2がITIL®V3になって、何が変わったのでしょうか。

ITIL®V3では、新しくITサービスマネジメント・ライフサイクルの考え方が導入され、その観点で全体の構成が再整理されました。 ITサービスマネジメント・ライフサイクルを下図「V3の体系」に示します。 ITサービスの企画から、設計、開発、変更、リリース、運用、改善、廃棄に至るまで、ライフサイクル全般に渡ってマネジメントすることを、モデル化したものです。 ITIL®V3では、ほぼそれに対応して、5つの段階(注1)を定義し、各段階を1つの書籍にまとめています。

この図から、重要な点が2つ浮かび上がって来ます。

1つは、5つの段階のうち、継続的サービス改善に関わるものです。 現代では、誰しもが何らかのITシステムを利用しており、その意味で何らかのIT運用と管理が行われています。 したがって、多くの場合、改善活動に着手することが、全ての着手点になります。 改善活動には、地道な日々の運用における改善活動から、ITサービスの設計に踏み込んだ改善活動、さらにITサービスの新たな企画も含めた大規模な改善活動まで、様々なレベルのものがあります。

ITIL®V3では、ITサービスマネジメント・ライフサイクルを考えることによって、このような様々なレベルの改善活動を、 ITIL®のフレームワークの中にしっかりと位置づけ、グッドプラクティスとして世の中に提示することができるようになりました。

もう1つは、5つの段階の外側にある、ビジネスの要求に関わるものです。 ITサービスマネジメント・ライフサイクルを究極的に駆動するものは、ビジネスの要求に他ならないということです。 全く自明のことですが、実際に、日々の活動の中で、それを貫徹することは、簡単なことではありません。
ITIL®V3では、様々な場面の判断基準として、ビジネスの要求を反映できる仕組みをグッドプラクティスとして、提示しています。

では、ITIL®V3は、ITIL®V2とは違うものなのでしょうか。

世界に広く普及したITIL®V2の優れた特長である「サービスサポート」、「サービスデリバリ」(注2)のプロセスの考え方は、 ITIL®V3にも、そのまま引き継がれています。ITIL®V3では、ITIL®を取り巻く環境の変化を反映して、いくつかのプロセスが追加されていますが、 主要なプロセスには、大きな変更はありません。 既にITIL®V2ベースでITサービスマネジメントの仕組みを構築している場合でも、ITIL®V3のグッドプラクティスを活用することが可能です。

解説

注1: ITIL®V3 「5つの段階」の概要

【サービスストラテジ(Service Strategy)】
ビジネスの要求に基づき、ITサービスを、高い投資対効果で、中長期にわたり、適切かつ確実に提供する戦略を立案する。 ITIL®V2では「サービスデリバリ」に含まれる財務管理は、この段階から活動する。

【サービスデザイン(Service Design)】
必要なITサービス、それらをマネジメントする仕組み(プロセスなど)を設計する。
ITIL®V2では「サービスデリバリ」に含まれるサービスレベル管理、キャパシティ管理、ITサービス継続性管理、可用性管理が主役のプロセスとなる。

【サービストランジション(Service Transition)】
必要なITサービスを実現するために、安全確実かつ効率的に変更・リリースを行う。
ITIL®V2では「サービスサポート」に含まれる変更管理、リリースおよび展開管理、サービス資産および構成管理が主役のプロセスとなる。

【サービスオペレーション(Service Operation)】
ITサービスの運用を行う。目標達成度を評価し、改善活動の材料を提供する。 ITIL®V2では「サービスサポート」に含まれるサービスデスク、インシデント管理、問題管理が主役のプロセス、機能となる。

【継続的サービス改善(Continual Service Improvement)】
改善すべき点を識別し、改善計画を立案し、対処が必要な全ての段階にフィードバックを行う。 ITIL®V2の「サービスマネジメント導入計画と立案」の継続的サービス改善が該当する。

注2: ITIL®V2 「サービスサポート」「サービスデリバリ」の概要

【サービスサポート(青本)】
日常的にユーザが必要とするITサービスを利用できるようにすることを目的とした機能とプロセスの総称。

【サービスデリバリ(赤本)】
高い投資対効果で、安全確実にサービスサポートを実現できるように、準備、計画するプロセスの総称。

4つのP

ITIL®には、「4つのP」という考え方があります。

ITサービスマネジメントをより良く実現するためには、人(People)、プロセス(Processes)、製品・技術(Products)、パートナー(Partners)の4つの分野、 全てにおいて、適切な対策を打つ必要があるという考え方です。
ITサービスマネジメントの改善を検討する場合、4つの分野のそれぞれで十分な対策を講じたかどうかを、常に自らチェック、検証することが重要になります。 もちろん、改善活動の一環である、ITIL®プロセスを導入することや、プロセス成熟度の改善を目指す際にも、非常に役立ちます。

極端な例ですが、プロセスは作ったが、それを実現できるスキルや経験を持った人材が不足する、適切なツールがないために管理対象範囲が広がるにつれ作業が回らなくなる、 日常作業が忙しく本来注力すべき改善活動にパワーがまわせない、などということが起こらないようにしなければなりません。

以下に、「4つのP」を意識した施策の例をあげます。

  • 人(People):プロセスを実現するのに必要な役割、人材像を明確化し、必要なスキル向上のためのトレーニング計画を策定し実践する。
  • プロセス(Processes):プロセス改善の目的(ビジョン)を明確化し、改善プロジェクト体制を構築し、 ITIL®のグッドプラクティスとのベンチマーキングにより改善課題を明確化して、作業フロー、手順書、重要業績評価指標(KPI:Key Perfomance Indicator)などを設計する。
  • 製品・技術(Products):プロセスの効率的な実行、作業負荷軽減、自動化による作業ミス削減のために、適切なツールを活用する。
  • パートナー(Partners):定型的な監視作業をアウトソーシングすることにより、作業負荷を軽減し、本来注力すべきシステム改善企画作業を推進する。

ITIL®に関するお問い合わせ

ページの先頭へ