お客様インタビュー
明治大学・阪井ゼミが切り拓く
アクティブ・ラーニングの世界
~大学教育の新たな「学び」を加速するフィールド・イノベーション~

次世代を担う人材の育成を担う大学の教育現場で、現場の課題を可視化し解決につなげるフィールド・イノベーションの手法が有効に活用されている。フィールド・イノベーションが学生の「学び」にもたらす効果について、明治大学でアクティブ・ラーニング型授業を推進する阪井 和男氏と、富士通のフィールド・イノベータ(以下、FIer)である首藤 好秋が語り合った。
「学び」は本来アクティブであるべき
これからの時代に即した教育が必要に
首藤:本日はお忙しい中ありがとうございます。明治大学様では以前よりアクティブ・ラーニング型の授業を推進されており、当社でも阪井ゼミ様の「地域共創型PBL」(※注)の活動を支援させて頂きました。最近では、多くの大学でアクティブ・ラーニングを取り入れる動きが進んでいますが、これにはどのような背景があるのでしょうか。
富士通株式会社
フィールド・イノベーション本部
シニア フィールド・イノベータ
首藤 好秋
阪井:そもそもの話として、学びとは本来アクティブであるべきものです。それがなぜ、今まで主体的な学びが行われてこなかったのか。ここに日本の大学が抱える根源的な問題があるように思います。日本の大学教育は明治維新を契機に始まりましたが、当時は優秀な官僚を育てることが最大の目的でした。先生も海外から招くことが多く、当時の学生は外国語の板書を一生懸命ノートに写して丸暗記するしかありませんでした。しかし、その学びの姿勢は、間違いなくアクティブであったはずです。それがいつしか、教員が一方的に講義するスタイルだけが形骸化して残ってしまった。
明治大学
理学博士
法学部専任教授
阪井 和男 氏
首藤:大学教育も、今の時代にふさわしい形に変わる必要があるということですね。
阪井:そういうことです。現代の学生は、スマートフォンですぐに情報を検索できる時代に生きています。昔のように延々と講義を聞くスタイルは今の時代に合いません。
首藤:確かにアクティブ・ラーニングでは、座学では得られない経験を積むことができます。これは、社会で即戦力として活躍する能力を身に付ける上で、大いに役立つことと考えられます。個人的には、アクティブ・ラーニングとフィールド・イノベーションの間には、強い類似性があるようにも感じます。まず問題点を可視化し、課題を整理して解決するというプロセスは、企業の業務改革においても同じです。
学生にとことん頭を使わせる
その思いを地域共創型PBLで実現
首藤:大船渡市と行なった地域共創型PBLでは、どのような成果を感じられましたか。
阪井:ゼミ生たちに、とことん自分の頭を使う経験をさせることができた。これが大きな成果だったと考えています。元々大船渡市とは、2011年から地域の祭りや子供たちの学習支援などの活動に取り組んできました。今までは震災復興支援の意味合いが強かったのですが、次のフェーズに進むため、活動の内容をガラッと切り替えたわけです。ところが、これはゼミ生たちにとって衝撃的な変化でした。なにしろ、今までは現地のお祭りを手伝っていれば良かったのが、お店や企業の核心的な問題を一緒に解決しようというのです。学生も今までそういう頭の使い方をしたことがなかったので、かなり苦しんでいたようでしたが(笑)。
首藤:それでも、そうした経験を積むことが大事と考えられたわけですね。
阪井:私自身は理系で、頭をとことん使うのは当然だと思っていますが、文系の学生はそこが甘いと常々感じていました。ですので、文系の学生が頭を使う活動に切り替えるにあたって、フィールド・イノベーションを活用できたのは非常に良かった。FIerにしっかりとサポートしてもらったおかげで、学生たちが活動をやり遂げることができました。現地で困っている人たちに寄り添いながら、自分たちの頭をフル活用して課題解決を目指す。これに本気で取り組む上では、フィールド・イノベーションの手法が非常に有効です。私としても一番やりたかった教育ができましたので、この点には大いに感謝しています。
首藤:ゼミ生の人数が多い点には少々苦労しましたが、学生さんたちも優秀でインタビューやアンケートの手法などをすぐに吸収してくれました。その結果、現地の方々から様々なお話や気づきを引き出せたことは、我々も大変嬉しかったです。また、本件では3年にわたってご支援をさせて頂きましたが、1年目は現場を知る、2年目は現地の認知度を高める、3年目は新商品につながるアイデア出しと、活動の内容が毎年ステップアップしている点も印象的でした。現地での反響も大きかったです。
阪井:現地のお店や企業はある意味ライバル同士なので、それまではあまりお互いに話し合うような機会がなかった。そこへ学生が入ることでつながりが生まれ、みんなで一緒に地域を盛り 上げていこうという機運を醸成できました。これも大きな成果だったと思います。
首藤:また、新たな試みとして、同じくアクティブ・ラーニングに取り組まれている九州産業大学様とのリモート情報交流会も企画させて頂きました。
阪井:これは大変面白かったです。なにしろ先方は理系の研究室ですから、こちらの法学部とは環境も雰囲気もまったく違う。活動の内容を紹介して頂いたのですが、それも技術的な専門用語が平気で飛び交うような世界です。同世代の学生が真正面から研究に取り組んでいる姿を見て、当ゼミの学生も大きな刺激を受けたようです。ぜひ今後も、こういう機会を作ってもらいたいです。
先端ICTも積極的に取り入れ
より高い学習効果を目指す
首藤:これからの時代は、教育の質を高めるツールとして、ICTが利用される場面も増えていくことと思われます。
阪井:今回の活動でも、フィールド・イノベーションのツールの一つ「デジタルカードセッション」(デジカ)を利用させてもらいましたが、東京と大船渡を結んでリアルタイムに対話できたのは大変便利でした。現地まで片道8時間も掛かるような場所ですから、こうしたものがないとなかなか議論が進みません。文教分野においても、ICTをどう活用するかが重要なポイントになってくることでしょう。
首藤:最近では、各種のセンサーやカメラ映像などを用いたデータ収集・分析なども行っています。ここでは大量データを取り扱いますので、AIの活用なども考えられますね。また、デジカも そうですが、グループディスカッションやプレゼンテーションに役立つ環境もご提供していきたい。それにより、学習成果をさらに高められればと考えています。
阪井:そうしたICTに加えて、「虫の目」を持っているところもフィールド・イノベーションの良さだと感じます。一般的なコンサルは、「鳥の目」で全体的な方向性は示してくれます。「鳥の目」も大事ですが、当事者が本当に困っている課題の解決にはつながらないこともあります。ある意味、泥臭くはありますが、これがあるからこそ当ゼミの活動も成功を収められたと考えています。
首藤:ありがとうございます。教育の質を高めることは、より良い大学経営の実現にもつながることと考えています。教育分野でのフィールド・イノベーションを通して、今後も社会で即戦力として活躍できる人材を育てる取り組みに貢献していきたいですね。
※注 PBL Project Based Learning:課題解決型学習
※記載されている学校名、役職等は取材当時のものです。
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