「オムニチャネル」とは、顧客との接点になっている全てのチャネルを融合させることです。テレビ通販とネット通販におけるスマートデバイスを使った「オムニチャネル時代の買い物体験」の概要について、事例を交えながら、富士通総研 田中 秀樹が解説します。
小売業ではオムニチャネルの掛け声と共に「経験価値」を重視した取り組みが進んでいます。経験価値が重要なのは小売業だけではありません。ここでは、テレビ通販とネット通販におけるスマートデバイスを使った「新たな買い物体験」の事例を紹介しましょう。
テレビ通販といえば、軽快なトークに引き込まれて「思わず買ってしまった」という経験がある人がいるかもしれません。テレビが持つ訴求力と即時性のメリットを最大限に活かし、視聴者が欲しいと思った瞬間に注文ができる仕組みを作り上げているのがテレビ通販事業の特徴です。
ただ、注文はテレビというチャネルではなく、電話やECサイトなどの他チャネルからとなります。最近では「Tコマース」と呼ばれるデジタルテレビ放送の双方向サービスを使ったショッピングなどが試みられているので、将来的にはそういった新しい注文方法にとって変わるかもしれませんが、現時点ではスムーズに視聴者を注文用の他チャネルに誘導することが成功の一つのポイントになっています。
実際に、視聴者からの注文の7~8割は電話から行なわれています。これに対応するために、テレビ通販会社は多数のオペレーターを配置したコールセンターを用意しています。注文コール数に応じてオペレーター数を増減する機動的な運用をしていますが、それでも人気商品の場合は、一時的に注文が殺到し電話が繋がりにくくなってしまい、受注機会を逃してしまうこともあります。
スマートデバイスやパソコン経由のECサイトでの受注であれば、殺到する注文を受け付けることができ、機会損失を回避することができますが、電話での注文に慣れた人にとっては、ECサイトでの注文は面倒で敷居が高くなっているようです。そこで、簡単にECサイトから注文できるように工夫している会社があります。
テレビ通販大手のジャパネットたかたは、テレビにスマートデバイスなどをかざすと、そのままショッピングができる新たなサービスを提供しています。同社公式のスマートデバイス専用「ジャパネットアプリ」には、「テレビにかざして買い物カメラ機能」が搭載されています。
視聴者は、通販専門チャンネル「ジャパネットチャンネルDX」の視聴中に気になる商品があったら、スマートデバイスの内蔵カメラを放送中のテレビ画面にかざすだけで、紹介されている商品の販売ページがスマートデバイスに表示され、そのまま直ぐに注文できるようになっています。
この仕組みは富士通の映像ソリューション技術を使ったもので、テレビの映像の中に、人間の目では分かりにくい信号情報が埋め込まれています。この信号情報は映像にリアルタイムに埋め込むことができるので生放送にも対応可能です。スマートデバイスのカメラがその信号情報を検出すると、指定されたコンテンツページが表示されるようになっています。それによって、新しい買い物の「体験価値」を視聴者に届けています。
ネット通販では、Amazonが自社EC注文の専用端末として、「Amazon DASH」というリモコンのようなガジェットを提供しています。これは、アメリカの一部で行なわれている生鮮食品配達サービス「AmazonFresh」のユーザー向けのもので、端末に向かって商品名を言うか、商品のバーコードを読み取らせるだけで、食料品や日用雑貨などの該当商品がAmazonのECサイトのショッピングカートに入るようになっています。つまり、必要になったものがあったら、パソコンを立ち上げて入力したりメモを書いたりしなくても、簡単に「買い物リスト」を作成でき、注文ができることになります。
また、同社が発売したスマートフォン「Fire Phone」には、内蔵カメラとマイクを使って商品を認識する「Firefly Technology」が組み込まれています。これは、画像検索と楽曲認識を合わせたようなもので、ポスターや商品パッケージなどにカメラを向けたり、音楽をマイクで聴かせると、Amazonの商品データベースとマッチングされて、商品や楽曲が注文できるようになっています。
ここで紹介したジャパネットたかたやAmazonのサービスの利用者はまだ少数ではありますが、今後の「新たな買い物体験」を提供する試行的な取り組みです。スマートデバイスを使ってチャネルをシームレスに誘導し、購買拡大を目的とする取り組みは今後も多くの会社が試行すると考えられるので、その中で利用が広く普及し一般化するものが出てくることになるでしょう。テレビ番組を見ている時に、「あの女優が着ているブラウスが欲しい」とスマートフォンや専用端末に囁くだけで、直ぐに商品が届く時代が来るかもしれません。
(株式会社富士通総研 田中 秀樹)
株式会社富士通総研(FRI)
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