有限会社横河計器製作所様
バイメタル温度計分野で非常に高いシェアを持つ有限会社横河計器製作所様は、生産管理システム「FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PRONES」(以下、GLOVIA smart PRONES)を導入し、人の経験と勘による業務スタイルから脱却し業務の標準化を図った。生産計画を立て指示書に基づき業務を行うことで業務の効率化や納期厳守、リードタイムの短縮を実現。製造工程の見える化により8,000件あった在庫件数を2,000件まで削減した。同社がパッケージの選定で重視したのは「立ち上げまでしっかりとサポートしてくれること」。同社は富士通のサポートを受けながら部品表づくりからスタートし、本稼働から3年が経過した現在、「GLOVIA smart PRONES」を使いこなしさらなる改善を進めている。
[ 2015年10月30日掲載 ]
業種 | 製造業 |
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ソリューション | 生産管理 |
製品 | FUJITSU Enterprise Application GLOVIA smart PRONES |
1 | 人の勘と経験に頼る業務スタイルから脱却したい。 | ![]() |
GLOVIA smart PRONESの標準機能に合わせて業務の標準化を実現。毎日生産計画を立て指示書に基づく業務スタイルに変革し、作業の均質化を図れるようになった。 |
2 | 在庫の最適化やリードタイムの短縮を図りたい。 | ![]() |
所要量計算の結果をもとに材料を発注することで在庫の適正化を実現。また製造工程の見える化によりリードタイムの大幅な短縮を実現した。 |
3 | 新生産管理システムを確実に立ち上げたい。 | ![]() |
富士通のサポートにより部品表づくりからスタートし半年間でシステムを構築。導入後、様々な経営課題を解決できた。 |
山田 敏幸 氏
有限会社横河計器製作所
取締役 管理部長
切削工場での作業
バイメタル式温度計の分野において日本国内で非常に高いシェアを持つ有限会社横河計器製作所様。バイメタル式温度計は熱膨張率の異なる2枚の金属板を貼り合わせ、温度変化によって曲がり方が変化する性質を利用し温度を測定する。自己可動式でバッテリー切れの心配がなく耐久性に優れていることが特長だ。空調配管や設備配管などの配管機材として設備に取り付けて使用され、食品、医薬品、バイオ関連産業、工業プラント向けなど利用シーンは幅広い。
同社は日産300台から400台、月産6,000台から10,000台のバイメタル式温度計を出荷している。全生産量のうち40%が自社ブランド、残り60%がOEM製品。製品の開発から設計、部品加工、組立・検査、発送、アフターサービスまで社内で一貫して行えるのが同社の強みだ。また結露しにくく表示部が曇らないバイメタル式温度計など市場のニーズに応えて新商品の開発も行っている。
1961年の設立以来50年以上にわたり業界を牽引してきた同社は、2010年頃に大きなターニングポイントを迎えていた。同社取締役管理部長の山田敏幸氏は次のように述べている。「当社が業界内で大きなシェアを獲得している原動力は職人技を持つ従業員の存在ですが、一方で従業員の年齢が高くなってきているという課題がありました。ベテラン社員が退職時期を迎える中、経験の浅い社員でいかに業務をまわしていくかを解決することが、当社にとって死活問題となっていたのです。また成熟産業であるバイメタル式温度計のビジネスで継続的に収益を上げていくためには、在庫の適正化や効率化の推進など経営管理面の強化が必要でした」。
ベテラン従業員の経験や勘により判断し実行されている作業を見直し、業務の標準化や見える化を実現するために生産管理システムの再構築が急務だったのである。
同社がそれまで利用していた生産管理システムは、自社で開発していたものであり、誰もが使いやすいものではなかった。また、主要な部品しか発注できないなど機能も不足していた。「システムの老朽化も進んでおりシステム停止により業務が止まってしまうというリスクが高まっていました。システムを開発した従業員の退職時期も迫っており、2010年に各部門のキーマンを集めて新生産管理システム構築のプロジェクトを立ち上げました」(山田氏)。
パッケージの選定にあたって山田氏は、「当社の状況をよく理解し、この方法なら確実に立ち上がるということをプレゼンテーションできるかどうかを重視しました。当社の場合は部品表を作るところから始めなければならず、システムの構築は相当骨が折れるだろうと考えていました」と語る。
生産管理システムの画面
富士通を採用した決め手はプレゼンテーションの内容だった。「他のベンダーは、生産管理システムの画面表示や機能の説明が中心でしたが、富士通と富士通パートナーのソレキアは、『御社にはこんな課題がありませんか?』と切り出し、課題解決の方法と『GLOVIA smart PRONES』の導入メリットを説明してくれました。『仕事が属人化している現状分析と、今後は経営管理の視点を取り入れていくことが重要』といった指摘は胸に響きました」(山田氏)。
生産管理システム「GLOVIA smart PRONES」の導入実績を豊富に持つソレキアについては、「システムが立ち上がるまでしっかりと面倒をみます」とのSEの言葉が非常に心強かったという。「実際、親身になってきめ細かくサポートしていただきました」と山田氏は話す。
山﨑 司 氏
有限会社横河計器製作所
管理課 課長
同社は2011年7月に組立業・加工業向け「GLOVIA smart PRONES std」の採用を決定し、2012年1月から要件分析・定義を開始した。「人の経験や勘に頼る業務から脱却するためにパッケージの標準に合わせて業務を変えていくことを基本としました」(山田氏)。
2012年4月からの構築フェーズでは部品表づくりに苦労したという。「品物に名前を付けたり、各製品にどの部品が使われているのかを現場に行って確認したりしました。新生産管理システムは部品表をベースにするので、コードの作り方などをソレキアさんに相談しながら必死に構成情報を書きました」と同社の管理課課長 山﨑司氏は話す。
半年間の構築期間を経て2012年10月、「GLOVIA smart PRONES」を中核とする新生産管理システムが本稼働したが、当初は大変だったという。「部品表も十分ではなく足りないものがあったり、管理側で品物の名前を決めたことで現場に混乱を招いたりしました。それでも現場は、本稼働から半月が経過したあたりで『このシステムでいけるかもしれない』と思ったそうですが、管理する私たちは3か月が経過し部品表の不足部分が埋まったことでスムーズに動き出したという実感を持つことができました」(山﨑氏)。
2012年10月の本稼働から3年近くが経過し業務は大きく変化した。従来、品名だけが書かれている指示書を見て、自らやるべきことを判断し作業を開始していたため、新人には細かい説明が必要だった。現在では指示書に図面番号から品物の名前、材料の入荷日、いつまでに何個作らなければいけないのかまで書かれているので、何をすればよいのかがすぐ分かる。「指示書の通りにやればいいんですねと、特に若い従業員は喜んでいます。ベテランも若手も作業の均質化が図れました。新システムを導入してから従業員の2/3が入れ替わっています。業務の標準化を実現できていなかったら事業の継続は難しい状況に陥っていたと思います」(山田氏)。
これまで指示書は1週間に2回しか配付されていなかったが、いまは毎日200枚の指示書が現場に出ている。「従来、受注から出荷まで3週間から1か月を要していましたが、いまは最短のリードタイムが5日間です。製造工程の見える化を実現できたことで、あと10個は作れるといった生産計画を効率的に立てることが可能となり、リードタイムの大幅な短縮につながっています」(山田氏)。
従業員の納期に対する感覚も鋭くなったという。「自分がやるべきことを確実にこなさなければ、次の作業を行う人に迷惑がかかることが分かるようになりました。新システムの稼働から現在まで納期遅延はありません」(山田氏)。
組立工場での温度計組立
新システムの導入により在庫の大幅な削減も図れた。「従来、在庫の管理は現場に任されており、どうしても在庫を多く持ってしまう傾向がありました。いまは所要量計算の結果をもとに材料を発注しています。在庫件数に関しては、新システムが本稼働した2012年10月は8,000件、2012年12月の棚卸し時は6,000件、現在は2,000件まで削減できました。棚卸し資産が大幅に減少しておりキャッシュフローも改善しています」(山田氏)。
新システムは、お客様満足度の向上にも貢献しているという。「お客様からのお問い合わせに対し、納期回答を素早く提示し、なおかつ短いリードタイムで納期を厳守する姿勢がお客様の間で評価されてきていると実感しています」(山﨑氏)。
仕様変更に対する柔軟性も向上した。「従来、商品名のみの指示書のもと現場の判断で数か月先の納期のものを作ってしまうこともありました。いまは納期に近いところで生産計画を立てて指示書を出しており、発注後の仕様変更に対応できる時間的な幅が広がりました」(山田氏)。
さらに、「GLOVIA smart PRONES」を導入したことで「未来の話ができるようになった」と山田氏は話す。「運用していく中で課題もいくつか見えてきました。ガントチャートなど利用していない機能を活用し、効率と品質のさらなる向上に向けた提案をソレキアさんにお願いしているところです。富士通さんとソレキアさんにはシステムの安定稼働の支援とともに、これからも当社が抱える課題解決のサポートをお願いします」と山田氏は話す。
同社に導入した「GLOVIA smart PRONES」は事業を支える新生産管理システムとして、同社の成長とともに進化していく。
ソレキア株式会社
東日本支社 第二営業統括部 諏訪支店
宮澤 直樹
有限会社横河計器製作所様の導入作業では人の経験と勘による業務スタイルから脱却し、業務の標準化を図るためにプロジェクト担当者と一緒に業務の流れの見直しを行いました。
最初は長年培ってきた業務スタイルの変更に対する不安と反発が多かったのですが、プロジェクト担当者の努力と導入意識の高さからパッケージの機能を理解していただき、さらに担当者からの粘り強い従業員の方々へ説明により、業務の標準化を図ることができました。
現在では訪問するたびに、現場から業務の改善に対する相談をいただくようになりました。
今後もさらなる貢献ができるよう、ご支援をさせていただきます。
所在地 | 〒394-0085 長野県岡谷市長地小萩1-6-8 |
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代表者 | 代表取締役社長 山田圭一 |
設立 | 1961年1月 |
資本金 | 3,000万円 |
従業員数 | 32名(2015年9月現在) |
事業概要 | 金属温度計、水高計の開発、製造及び販売
管財機材付帯品の開発・製造及び販売 ユニット部品、切削品、印刷部品の受託加工 ![]() |
ホームページ | 有限会社横河計器製作所様 ホームページ![]() |
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