王子ビジネスセンター株式会社様
— IFRS対応を機に会計業務の効率化と経営健全化を目指す
わが国のIFRS強制適用時期は、早くても2017年3月期に延伸されたが、IFRS対応が多くの企業にとって重要な課題であることに変わりはない。王子製紙グループ様のシステムインテグレーター、王子ビジネスセンター株式会社様は、2009年からIFRS対応の準備に着手。FUJITSU Enterprise Application GLOVIA SUMMIT GMをグループ会社の共通会計基盤を構築する会計システムとして採用し、従来の会計業務をほとんど変えずにIFRS対応を実現することを目指す。さらには将来予想される、IFRSに対応するグループ会社数の急増に対応する環境も整える。
[ 2012年2月9日掲載 ]
業種: | システムインテグレーター |
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ソリューション: | グループ会計、IFRS対応 |
製品: | FUJITSU Enterprise Application GLOVIA SUMMIT GM |
1 | IFRS対応のためのシステム構築・改修に、業務負荷やコストがかかる可能性がある。 | 「仕訳生成エンジン機能」により、会計データ用の日本基準データと、情報開示用のIFRS基準データを生成することで最低限のコストと対応でIFRSに追随できる。 | |
2 | グループ会計システムを利用していない子会社は、単体決算を締めた後に手作業で連結決算の報告業務にとりかかるため、経理業務の負荷が高い。 | グループ会計システムを利用するグループ会社のIFRS対応時の連結決算業務が自動化されるため、グループ会社の会計業務の効率化および連結決算の早期化・精度向上が図れる。 | |
3 | 将来、IFRS対応のためにグループ会計システムを利用するグループ会社数が急増する可能性に備える必要がある。 | GLOVIA SUMMIT GMの拡張性により、グループ会計システムに参加する会社数が急増しても容易に対応できる。 |
王子製紙株式会社様を核とする王子製紙グループは、新聞・出版・印刷用紙から段ボール原紙・紙器、ティシュペーパーをはじめとする家庭用紙、さらには電子機器用特殊紙までを手がけ、多様な市場ニーズに応える総合紙材メーカーとして国内紙材業界のトップを走る。わが国の紙消費量は米国、中国についで第3位だが、市場としては成熟化が進む。これらを背景に、王子製紙グループは機能材分野の新製品を拡充するなど、量から質への転換に力を入れる。と同時に、成長著しい東アジアを中心としたグローバル展開を進めている。
王子ビジネスセンター株式会社様は2001年、王子製紙本社の情報システム部より独立。以来、王子製紙グループ会社の業務アプリケーションの設計、開発、保守にとどまらず、会計を中心に業務改善コンサルティングなどを担っている。王子製紙グループでのシステム共通基盤構築によるIT統制、セキュリティ強化、コストの低減、そして近年特に力を入れているのは、IFRSへの対応だ。
池永 元昭氏
王子ビジネスセンター株式会社 代表取締役 社長
同社は2009年初め、いち早くIFRS適用時におけるグループ全体のシステム面への影響調査を開始、IFRS対応の基本姿勢とシステムの方向性を検討、システムの選定を開始した。同社 代表取締役 社長の池永元昭氏は、IFRSに対応する基本姿勢についてこう語る。「当社としては、IFRSは今までの会計情報を別の見方で作り替えて開示する一つの制度であり、それ以上のものではないと考えました。したがって王子製紙グループとしては日本基準を主軸にしつつ、コストをかけずに情報開示のための最低限のIFRS対応を行うという方針を決めました。」
すでに知られるように、わが国におけるIFRSの強制適用時期は早くても2017年3月期に延伸された。しかし同社は当初予定通り2013年4月本稼働に向けてIFRS対応プロジェクトを進めている。その理由について池永氏は次のように語る。「IFRS対応が、現在グループ会社の共通会計基盤を利用中のグループ会社だけにとどまるならばプロジェクトを先延ばししてよいかもしれません。しかしシステム要員を持たないその他のグループ会社がIFRS対応に向けて、新たに利用する可能性が十分に考えられるため、予想以上に時間を要するはずです。やはり十分余裕を持った準備期間が必要と判断しました」。
同社は、IFRS対応策を進めるに際して、王子製紙本社およびグループ会社各社で運用するシステムをどう改変するかの検討に取りかかった。主な検討テーマは3点で、第1が最低限のコストと対応でIFRSに追随することだった。本社で運用するERPは、日本基準とIFRSの両データを保持しようとすると、運用・保守が複雑になってしまうことに加え、カスタマイズにコストがかかり過ぎるという問題があった。また、グループ会社38社が利用する会計システムを、IFRS対応に向けてバージョンアップするか、あるいは再構築するかが課題だった。第2が、現状、グループ会社会計システムを利用していない他のグループ会社が、将来IFRSに対応するにあたり新会計システムを共用する場合にも、柔軟かつ容易に対応できるシステム環境をいかに整えるか、だった。そして第3が、複数のサーバでシェアード運用しているグループ会計システムの運用効率化だった。
宮﨑 貴久氏
王子ビジネスセンター株式会社 第1事業本部 開発3部 部長
約1年半をかけて様々なパッケージを検討した結果、その中からGLOVIA SUMMIT GMを採用した理由について、同社 第1事業本部 開発3部 部長の宮﨑貴久氏はこう説明する。「IFRSへの対応方針については、意思表明にとどまるパッケージや、IFRSそのものがどうなるか決まっていないので、未定ですというベンダーもありました。その点、GLOVIA SUMMIT GMのIFRSへの対応方針は明確で、日本の税制を踏まえているなど評価できました。その上で、各業務システムおよび本社のERPシステムから連携される日本基準の仕訳から、IFRS仕訳を自動で生成して全社の複数帳簿管理ができるため、最低限のコストと対応で本社およびグループ会社がIFRS対応できる点。複数に分散しているサーバを1台に集約できるメリット。グループ会社の追加・拡大が容易であること。ユーザーであるグループ会社数の急増にも余裕を持って対応できる月間1億件の明細データ管理・処理能力。さらにグループ経営健全化のために債権・債務の管理の強化を目指す同社は、債権・債務管理との連携機能が充実していた点に着目し、グループ会社の業績管理に優れたパッケージと評価、GLOVIA SUMMIT GM の導入を決めました」。
GLOVIA SUMMIT GMの採用を決めた同社は、王子製紙および王子製紙グループのIFRS複数帳簿対応に向けた方向性として、次の2点を決めた。
方向性の第1は本社ERPの運用について。本社で運用するERPは高精度の原価管理を実現しており効率的に運用されていることから、引き続き継続利用することになった。ただし、日本基準とIFRSの両方のデータを保持する仕組みを実現するためには運用・保守が複雑になることに加えカスタマイズにコストがかかり過ぎるため、同ERPのIFRS対応はしないこととした。
第2は本社およびグループ会社のIFRS対応について。グループ会計システムとして導入するGLOVIA SUMMIT GMでIFRSと日本基準の両データを保持し、本社ERPの日本基準データをGLOVIA SUMMIT GMに流し込むことで複数帳簿対応する。
GLOVIA SUMMIT GM 導入により期待される大きなメリット。それは「仕訳生成エンジン機能」により、1つの取引データから日本基準をもとに従来の会計業務を変更することなく、IFRS対応のデータを生成できるところだ。つまりIFRS対応の作業負荷を最小限に抑えられるのである。同時に、各子会社共通でシステムを利用できるので、各社個別にIFRS対応する場合に比べ、低コストで済むことも大きなメリットだ。
宮﨑氏は、「今後GLOVIA SUMMIT GMを利用する王子製紙グループ会社の数は増えていくだろう」とみている。その理由は、従来の連結決算業務を大幅に軽減できる導入効果だ。比較的安価な会計システムを利用するグループ会社の場合、単体決算を締めた後、手作業で連結決算の報告業務に取りかかっている。そのためIFRS対応によって日本基準に加えてIFRSでの報告数値も手作業で作成しなければならず、連結決算業務の負荷が増大することは明らかだ。しかし、新システムではグループ会社各社で複数帳簿を管理できるため、単体決算を締めると同時に、IFRSと日本基準それぞれの連結情報も確定することができる。この劇的な導入効果を評価し、導入するグループ会社数が着実に増えるだろうと予想できる。「従来のシステム環境は、サーバの容量が少なく、参加会社数が増える度にサーバを増強する必要がありましたが1つの統合サーバで会社数増加に耐えられるGLOVIA SUMMIT GMなら安心です。参加会社数が倍になっても拡張が簡単なのです」(宮﨑氏)。
約10年にわたり同社は、グループ経営健全化のためには債権・債務管理の強化が必須との考えのもと、グループ会社の共通会計基盤構築に取り組むとともに、グループ会社に会計業務の改善策を提案している。またグループ会計システムに参加する子会社に対しては、同社が定めた運用ルールを遵守することを求めている。
池永氏は、「新システムを利用する王子製紙グループ会社の数が増えれば、各社の会計業務は効率化されます。と同時に、当社が重視してきた債権・債務管理強化の輪が広がることにもなります。王子製紙グループ会社の多くは従業員数十名の小規模会社です。またこれらの取引先の多くが小規模会社です。したがって経営健全化のカギは債権の管理。とくに小規模グループ会社の債権・債務管理の指導には力を入れるべきだと考えているのです。グループ会社にとって新システムを利用することが、会計業務の効率化と経営の健全化のどちらも実現することにつながるのです。」
さらに、業務レベルの向上について、こう述べている。「費目を選び金額を入力すれば、システム側がマスタに照らして仕訳してくれるパッケージもありました。しかしそれでは会計のリテラシー向上につながらないのです。債権・債務管理の重要性を議論する中で、少なくとも経理担当者には仕訳入力できるレベルの会計知識は備えてほしいと考えました」。この判断には王子製紙グループ内では反対する声もあがった。仕訳入力に慣れるまで一定の時間と負荷がかかるからだ。最終的に、利便性を追求するだけではなく会計リテラシー向上に配慮したことには、IFRS対応を機に、グループ会社全体の経理・会計業務のレベルアップを図ろうとの考え方がうかがえる。池永氏は、「IFRSを機にGLOVIA SUMMIT GMを利用することは、グループ会社にとって、会計業務の効率化と経営の健全化の2つの目的を同時に実現することにつながるのです。」と語る。
IFRS対応を機に、グループ会社が、安心して参加できる会計システム利用環境の構築に取り組む王子ビジネスセンター株式会社様。同社はIFRS対応を機に、王子製紙グループ共通会計基盤のさらなる強化拡大を目指す。
所在地 | 〒104-0061 東京都中央区銀座4-7-5 王子製紙本館 |
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代表者 | 代表取締役社長 池永 元昭氏 |
設立 | 2001年5月30日 |
資本金 | 50百万円 |
従業員数 | 59名(2011年6月現在) |
事業内容 | 王子製紙をはじめとする王子製紙グループ会社全体のシステムに関する業務。 |
ホームページ | 王子ビジネスセンター株式会社様 ホームページ |
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