株式会社エッチ・ケー・エス様
自動車チューニング部品メーカーのパイオニア企業、株式会社エッチ・ケー・エス様は、「GLOVIA smart 製造 PRONES」の導入で在庫の35%削減を達成した。成功の秘訣は、改善活動による業務プロセスの見直しと現場の意識改革、そしてシステムを“使い切る”ことにあった。富士通も業務の可視化など改革をきめ細かく支援。また、PRONESのバージョンアップによりICT統制( 注1)の強化も図っている。
[ 2011年10月27日掲載 ]
業種: | 自動車部品製造・販売 |
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ソリューション: | 生産管理 |
製品: | GLOVIA smart 製造 PRONES |
【あらまし】
製造業にとって在庫の削減は永遠の課題である。日本の自動車チューニング業界をリードする株式会社エッチ・ケー・エス様も例外ではない。同社は「GLOVIA smart 製造 PRONES」を導入し、その機能を使い切ることでこの難題に立ち向かった。現場のキーパーソンへの説明会や、富士通のサポートも受けて業務の可視化や課題の見直しを実施。その結果、現場の改善意識が向上し在庫が劇的に減少。現在、在庫の品番をABCランクで識別し在庫削減とお客様への迅速な製品提供の両立を目指す。また、次のステップとしてPRONESをバージョンアップしICT統制の強化を実現している。
1 | 目視による発注が日常化し、その結果、なかなか在庫を削減できなかった | ![]() |
PRONESの標準機能を駆使し在庫を35%削減。自動手配もまわるようになり、成果が出たことで現場の改善意識も向上 |
2 | 在庫の削減を図る一方で、お客様への迅速な製品提供も実現したい | ![]() |
在庫の品番をABCランクで識別し在庫削減を図りながらお客様の急な要望にも対応できるようになった |
3 | データの品質を高めるために、いつ誰がどのような操作を行ったのかを把握したい | ![]() |
ログイン管理や履歴管理により、操作内容や時間、人物の特定が可能に。次の改善に向けたアクションも的確かつ迅速に |
車に愛着を抱く人は多い。愛車という呼び方にもそのことはよく表れている。「感性に訴えるこだわりのものづくりを通じて、お客様のライフスタイルをより個性豊かなものに演出することに挑戦し続ける」。自動車チューニング部品のパイオニア企業、株式会社エッチ・ケー・エス様の企業理念である。同社は、1973年創業以来、業界初のターボチャージャーのキット化など、ドライビングパフォーマンスに着目し、車を愛する人の気持ちに応えることで成長を続けてきた。
現在の事業は、オリジナルのマフラーやサスペンション、電子制御部品、エンジンパーツの設計・開発・製造など多岐に渡っている。同社のアドバンテージは各パーツの品質と完成度を極限まで高め、最高の1台にまとめあげていくトータルなドライビング性能の実現力にある。レースで得たノウハウとストリートで培った経験も強みだ。天然ガス自動車事業やハイブリッドカー向け商品開発など環境分野にも注力。市場では中国などアジア新興国への海外展開も進めている。
マフラー「スーパーサウンドマスター」
サスペンション「ハイパーマックスⅢ」
垣生 知則氏
株式会社エッチ・ケー・エス 管理部 管理課 課長
ものづくりにこだわりをもつ同社だが、厳しい事業環境の中を勝ち抜いていくためには経営基盤の強化も欠かせない。2002年には富士通の生産管理パッケージ「GLOVIA smart 製造 PRONES」を導入。汎用機からオープンシステムへ移行し、生産から販売、在庫までシステムの統合を実現した。「間接作業の削減はもとより、必要な人がPRONESのデータベースにアクセスし情報をタイムリーに利用できるようになったことも大きなメリットです。いまやPRONESなくして業務は動かないと言っても過言ではありません。しかし、なかなか解決が難しい課題がありました。それが在庫の削減です」と同社 管理部 管理課 課長 垣生知則氏は語る。
「2009年に、社長から在庫削減に関して大きな経営目標が提示されました。これまでのやり方ではとても達成できないような数値目標です。当時、在庫管理の担当でもあった私は、PRONESの活用でこの状況を打開できないかと考えていました。2009年8月からそのための現場の改善活動をスタートさせました」(垣生氏)。
従来、在庫の削減がなかなか進展しない大きな要因となっていたのが、目視による発注だった。現場の担当者が棚にある在庫を見て足りないと判断した場合、今後、必要になるかどうかわからなくても発注してしまっていた。そこで管理部では製造部門のキーパーソンに対して説明会を開催し、必要なもの以外は頼まないというPRONESの考え方への理解を深めていった。さらに2009年1月から同年8月の間、富士通のサポートのもと現場の業務改革を推進していくフィールド・イノベーション(以下、FI)活動を実施したことで、「改善活動はもう一段ギアがあがったかたちで進むようになりました」(垣生氏)。
菅野 康行氏
株式会社エッチ・ケー・エス 社長室 管理部 管理課
同社のFI活動では、富士通のサポートを受け、製造現場のキーパーソン自らが改善点を見出し解決していく。最初に実施されたのが、業務プロセスの見える化だ。個人裁量での計画が日常化しており、計画実績数が計画数を上回っているオーダーが多いことなども明らかになった。事実に基づき課題を見直し、改善のためのルールを決め、その検証方法も定めていった。
「FI活動の中で誤ったデータをオープンにしたことで、現場のキーパーソン自身でデータのチェックが可能になったことも見える化の効果の1つです。またルールの例としては、従来、全員に提供していた手配に使えるメニューに関してPRONESを理解したキーパーソンだけしか利用できないようしたことなどが挙げられます」と同社 管理部 管理課 菅野康行氏は話す。
改善活動の効果は劇的だった。「目視による発注はなくなり、面白いように在庫が減りはじめました。そして2008年と比較し35%にまで在庫を削減できました」(垣生氏)。
また、これまでPRONESの在庫と現実の在庫との間で大きな棚差があったため、自動手配もきちんとまわらず、担当者の手動による手配の要因になっていた。現在ではその棚差も非常に少なくなり、そのため自動手配が一層スムーズに行われる。改善による効果を現場が実感するのに伴い、現場の意識も大きく変わってきたという。「現場でPDCAをまわしてPRONESをもっと上手く使ってさらに成果をあげていこうという改善意識が非常に高くなりました」(菅野氏)。
神谷 真一氏
株式会社エッチ・ケー・エス 管理部 管理課
在庫の削減は道筋がつけられた。次のステップとして同社は2007年にPRONESをバージョンアップした。バージョンアップの方針について菅野氏はこう話す。「最初のシステム導入時は業務にシステムを合わせていましたが、今では、豊富な実績もあり最適化されているPRONESの機能に業務を合わせることを徹底しています。カスタマイズの数も初期のシステムに比べて5分の1くらい。バグも減り、コスト削減にもつながりました。業務の標準化も大きく前進しました」。
従来、カスタマイズしていた機能の標準化も行われた。「例えば、商品の“仕切り”についてもきちんと整理されていなかったため、一般的な使い方でできないような複雑な計算をさせていたんです。 業務そのものを抜本的に見直すことで、PRONESの標準機能で運用できるようにしました。 営業とのすり合わせは大変でしたが、業務の大幅な効率化が図れ、カスタマイズ費用も削減できました」と同社管理部管理課の神谷真一氏は語ります。
バージョンアップによりICT統制面の強化も図れた。「パスワード管理、ログイン情報管理、履歴管理などが行えるようになり、誰がいつどのように操作したのか、把握できるようになりました。操作ミスに対する注意喚起も的確かつ迅速にできます。また、監査においてもICT統制の方針について説明しやすくなりました」(菅野氏)。
在庫の削減に関する改善活動は現在も続いている。「例えば、生産計画では10個つくる予定が、部材の破損などで9個しかつくれなかったとします。その場合、1個手配が残ってしまいます。そうした誤ったデータを定期的に削除しています。そのようなデータのメンテナンスは非常に重要です。また、生産計画が過大にならないように管理部が第三者的な立場で検証した上でPRONESに入力しています」(神谷氏)。
在庫削減の一方で、お客様への迅速な製品の提供も不可欠だ。「在庫にある品番が約2万部品、登録されている品番が約6万部品。現在、ABCランクで品番を識別しています。Aランクはお客様の急なご要望にも応えられるように安全在庫を設定しておく。しかし、BCランクについては徹底的に絞っていく。お客様のニーズに応えながら、いかに在庫の削減を図っていくかは、これからも課題です」(菅野氏)。
今後の展開について「国内はもとより特に新興国などへの海外進出では、コスト競争力の強化が欠かせません。これからは生産実績データの分析を進め、製造原価の見直しを行っていくことが必要です。また海外工場の拡張も検討されていますから、PRONESで課題解決が図れた国内工場でのノウハウを活かしていきたいと考えています」と垣生氏は語る。
富士通はこれからも「GLOVIA smart 製造 PRONES」の拡充やきめ細かなサポートを通じ、製造業の課題解決に向けた現場の改善活動を支援していく。
在庫削減に成功し、業務の改善意識も高まった
富士通株式会社
静岡東部支店
丹野 大幸
この度は、株式会社エッチ・ケー・エス様における経営目標実現のお役に立つことができ、大変光栄に思っております。
株式会社エッチ・ケー・エス様とは、ホストコンピュータからのオープン化にはじまり、現場改善による業務プロセスの見直し~システム利用の定着~導入効果算定と段階的にシステム構築を進めてまいりました。今回、PRONES機能を「使い切る」ことで目標が実現できたのは、株式会社エッチ・ケー・エス様のプロジェクトメンバーひとりひとりが高い目標意識を持ち、一丸となってゴールへ向かい業務改善を推進された結果だと思います。
今後も、株式会社エッチ・ケー・エス様の目指す経営目標の実現に少しでもお役に立つことができるよう、富士通グループの総力をあげてご支援させていただきます。
所在地 | 静岡県富士宮市上井出2266 |
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代表者 | 代表取締役社長 長谷川浩之 氏 |
設立 | 昭和48年10月3日 |
資本金 | 8億7,875万円 |
事業内容 |
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ホームページ | 株式会社エッチ・ケー・エス ホームページ ![]() |
注1: ICT統制
ICTはInformation and Communication Technology(情報通信技術)の略。業務や管理システムをICTによって監視・記録・統制し、その健全性を保証する仕組み。
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。