株式会社アドバンテスト様
めまぐるしく変化する市場や顧客ニーズに対応することでシェアアップを図るものづくり企業。激しい競争に勝つには、常に生産管理業務を見直し、必要に応じて的確な改善が欠かせない。半導体生産に不可欠の試験装置を開発、製造、供給する株式会社アドバンテストは、「glovia.com V5」から「GLOVIA G2」へのマイグレーションにより、より効率的な生産管理業務のシステム基盤構築を実現した。
[ 2011年12月27日掲載 ]
業種: | 製造業 |
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ハードウェア: | Linuxサーバ PPIMERGY RX300、ストレージ ETERNUS DX440 |
ソフトウェア: | FUJITSU Enterprise Application GLOVIA G2 |
「大幅に機能拡張された『GLOVIA G2』では、日本の製造業に即した多くの機能や、当社が蓄積してきたかなりのアドオン機能が標準搭載され、その中には、まさに取り組もうとしていた新手配システムや、情報活用の機能が包含されていました。それは短期間での新業務機能の実装や、ITコストの低減の実現を意味します。まさにマイグレーション開始のタイミングであると判断しました」
生産管理システム「glovia.com V5」を10年にわたり運用するなかで作り込まれたアドオン機能は約9000本。新たなアーキテクチャによる「GLOVIA G2」へのマイグレーションにより、事業を安定的に継続しつつ、真に必要な機能を約3000本に絞り込み、移行作業を短期間で実現。将来に向けた生産管理業務システムの基盤を構築した。
1 | 市場の変化に即応できるシステム環境を短期間に構築したい | 従来のアドオン機能を精査。有用な機能をバージョンアップした生産管理システムにマイグレーションすることで、着実に業務効率を向上 | |
2 | 海外拠点の生産管理システムを、超短期間で確実に稼働させたい | まず主力製品の新生産管理システムを安定稼働。その上で主力製品に付随する製品を生産する海外拠点に導入、短期間でカットオーバー |
今や半導体は、携帯電話、家電製品、自動車部品、OA機器、産業機器などあらゆる分野の製品に組み込まれ、高機能・高信頼性を求められている。株式会社アドバンテストは半導体メーカーに向け、半導体デバイスが問題なく性能通りに動作するかをチェックするテスタを開発、製造している。そこでは、進化を続ける半導体技術のさらに1、2歩先を行く技術が求められている。同社は「先端技術を先端で支える」を経営理念に、最先端のICT技術をリードし続けている。
よく知られるように、半導体産業界における技術進歩のスピードは他産業に比べ圧倒的に速く、技術の世代交代も速い。また半導体メーカーは景気の変動に大きな影響を受け、急激な減産、増産が珍しくない。同社にとって重要なことは、こうした技術進歩のスピード、生産変動にともなうメーカーのニーズに迅速かつ柔軟に対応しながら着実にシェアを上げることである。
テスト・システム「T2000」
同社は、半導体業界の進化と変化に対応するよう、常に業務改革に取り組み、それに応える基幹システムの構築・改修を行ってきた。大きな改修は2000年5月に行われた、ホストシステムからglovia.com V5へのビッグバン移行である。同社管理本部ITソリューション部長代理兼 SCMシステム課長の梶山芳邦氏はその背景と経緯についてこう語る。「当時、『2000年問題』やいっそう強くなる短納期の要求、アセンブル・ツー・オーダーへ対応するための製販一体の生産管理システムを、サーバやデータベースなどの基盤と一緒に構築するには富士通の『glovia.com V5』が最適と判断しその導入を決めました。同システムを核に、市場の変化にどう追従していくかに取り組んだ10年でした。」。この10年間に、システムにアドオンされた機能は約9000本に上る。同社がいかに、市場変化に対応する業務改善にきめ細かく対応してきたかを物語る数字であるとも言える。そして2009年11月、同社はglovia.com V5から最先端のGUIであるRIAとSOA基盤を実装した「GLOVIA G2」へのマイグレーションを決めた。
梶山 芳邦氏
株式会社アドバンテスト
管理本部ITソリューション部長代理兼 SCMシステム課長
同社が「GLOVIA G2」へのマイグレーションに踏み切った理由は2つあった。
その一つは、リーマンショックを発端とした市場環境の大きな変化だった。「市場が急激に冷え込み、プラットフォームのOSやサーバを含めたITコスト全体を大きく見直す必要が出てきました」(梶山氏)。とりわけその必要性が高かったのが約9000本に上るアドオン機能だった。ビジネスの環境変化に伴い業務のスタイルが変化し、使用する見込みがなくなった機能が多かったのである。またアドオン機能が増えるにつれてシステムが複雑・ブラックボックス化し、後々の改修・維持が負担になるのではとの懸念もあった。
もう一つの理由は「glovia.com V5」の次世代「GLOVIA G2」のアーキテクチャが大きく進化していたことだった。「『GLOVIA G2』では、日本の製造業に即した多くの機能や、当社が蓄積してきたかなりのアドオン機能が標準搭載され、その中には、まさに取り組もうとしていた新手配システムや、情報活用の機能が包含されていました。それは短期間での新業務機能の実装や、ITコストの低減の実現を意味します。まさにマイグレーション開始のタイミングであると判断しました」(梶山氏)。
2000年においてはビッグバンによるシステム導入を成功させた同社だったが、今回は事業継続と短期間での移行に注力した。2009年11月に計画立案を開始。現行機能の範囲で移行する代わりに、きっかり1年半後の2011年5月に完了させることにした。
作業の開始にあたって同社は約9000本のアドオン機能に対して見直しをかけた。その結果、約6000本が積極的に使われていないことを確認。その上で、今後も必要とするアドオン資産、約3000本を「GLOVIA G2」へマイグレーションすることを決めた。さらに、従来、事業ごとに設定されていた複数のCCN(会社管理番号)の統合や、作業にあたっては、変更方法を10のパターンに分類し、それぞれ標準的な方法を定め、効率的に修正やテストに取り組んでいった。ユーザーインターフェースの大部分は変わっていないので、開発・製造現場で同システムを利用するユーザーは「GLOVIA G2」稼働後も、従来通りの操作でアドオン機能を利用している。標準機能への本格的な移行は、本稼働後順次進められることになった。
GLOVIA G2 マイグレーション 移行イメージ
浜下 孝允氏
株式会社アドバンテスト
管理本部ITソリューション部SCMシステム課
生産現場と連携を取りながらマイグレーションプロジェクトのリーダーを務めた、同社管理本部ITソリューション部SCMシステム課の浜下孝允氏は、こう述べる。「実質的な作業期間は約半年でしたが、予定通り2011年5月にカットオーバーすることができました。稼働直後には小さな修正点が判明しましたが、大型連休中に修正作業を行い、その後は順調に推移しています。スムーズに運んだのは、テスト作業を念入りに行っていたからだと思います。修正作業の対応の速さも含め、パッケージの導入をサポートいただいたグロービアインターナショナルさんの対応にはたいへん満足しています」。
約3000本の有用なアドオン機能をマイグレーションし、「GLOVIA G2」の標準機能として利用できる環境が整ったことによるメリットについて、梶山氏はこう説明する。「GRID、SOAを支えるサービス機能群により、システム管理が大きく効率化されました。従来の個別アドオンから、G2で提供されるよりGenericなソリューションをフル活用することで、アドオン機能の維持・運用の手間とコストから解放されます。また、従来カスタマイズ作業によって付加していた機能が、簡単な設定変更だけで利用できるようになったことも大きなメリットです」。
そして梶山氏は、業務の効率化につながるメリットとして、製番管理など多様な手配方式や生産プロセスモデルの変更が容易に行えること、日本のものづくり現場に、よりフィットした運用が可能となったことを挙げる。「業務のリードタイムが短縮されるだけでなく、必要な部材の把握と適切な対応が速やかに行えるようになります。市場の環境変化に伴う急激な減産、増産に柔軟に対応するために、アクセルとブレーキを素早く踏み分ける生産体制が求められていますが、その判断を強力にサポートするシステムとして活用できると期待しています」(梶山氏)。
2011年、韓国・現地法人で、主力製品のテスタに欠かせない「テスト・ハンドラ」と呼ばれる装置の生産を始めた同社は、海外展開における生産管理システム運用に力強い手応えを得ている。国内2ヵ所の工場でマイグレーションを進めながら新しい生産管理システムを構築する一方で、韓国・現地法人において、事業の立上げと並行し「GLOVIA G2」を導入し、約半年でカットオーバーにこぎ着けたのである。梶山氏は海外展開第1号の生産管理システムとして導入を決めた理由について、「標準機能で製番管理に対応し、見込み手配ができる点。アドオンやカスタマイズせずに短期間で本格稼働を実現できる点を評価しました」と語る。また、「サーバは日本国内のデータセンターにあり、運用も同センターから行っています。アジアや欧州、北米へグローバル展開している当社にとって、グローバル生産管理を担う力強いシステムといえます」と今後の展開に期待を寄せる。
一般に、業務改革とそれを実現する基幹システムの改修・再構築は容易ではないといわれる。設計に手間取る。コストを費やした割に使いやすいシステムにならない。時間がかかるなどがその理由である。キックオフから約半年でマイグレーションを進め、バージョンアップしたシステムの本格運用を実現した同社のケースでは、いくつかの注力ポイントがみられる。マイグレーションプロジェクトの一部始終にかかわってきた浜下氏は、
の2点を挙げる。
自社の製品・業務をよく理解することで、現場の部分最適指向とIT部門の全体最適指向の両面から、真に必要な業務改革を把握できる。そして導入システムをよく理解することで、業務改革に必要な機能がパッケージに備わっているか見極めることができる。その結果、真に必要なアドオン、カスタマイズがなにか見えてくるという。「その結果、私どもIT部門、パッケージ導入にあたったグロービアインターナショナルさん、そしてサーバをはじめとする基盤構築に携わった富士通さんの役割がはっきりとし、三位一体態勢が整ったことでプロジェクトがスムーズに進んだのだと思います」(浜下氏)。
富士通は、グローバル展開により成長を続ける製造業をしっかりと支えていく。
所在地 | 〒100-0005 東京都千代田区丸の内1丁目6番2号
新丸の内センタービルディング |
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代表取締役 兼
執行役員社長 |
松野 晴夫 |
設立 | 1954年 |
資本金 | 32,363百万円(2011年3月31日現在) |
従業員数 | 連結:3,163名(2011年3月31日現在) |
事業内容 | 半導体・部品テストシステム事業、メカトロニクス関連事業、サービス他 |
ホームページ | 株式会社アドバンテスト様 ホームページ |
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