データを価値に変えて未来のモビリティビジネスを実現するため、今やるべきことは?

自動車業界にも訪れるイノベーションの波

見たい番組が始まる時間にテレビの前で待つ、たまの休みの旅行の宿泊先としてホテルを一番に検討する、必要なものがあったときにはお店まで行って買い物をする。そのような時代を覚えていますか? この20年間、Amazon、Netflix、Airbnbなどの急成長する新規のデジタル企業が、各業界の既存プレーヤーを破壊的イノベーションと共に吹き飛ばしてきた結果、私たちの生活は大きく変化しました。

これら破壊的イノベーションを起こしてきた新プレーヤーの共通点の1つは、カスタマー・エクスペリエンスを重視し、それをビジネスプランの中心に据えていたことです。彼らは、ユーザーが意識すらしていなかった欲求を満たしてくれました。そして、同時にそこから彼らの革新的かつ新しいアプローチとビジネスモデルが完成しました。しかし、いまだこの破壊的イノベーションが起きていない業界が1つあります。それは自動車業界です。しかし、その業界にも今、大きな変化が訪れつつあります。

ネットワーク接続がゲームチェンジの原動力

自動車業界が持っていた絶対的なステータスシンボルとしての地位は徐々に失われつつあります。若年世代における自動車購入層であるミレニアル世代やZ世代は、前の世代に比べ、車を所有することにあまり関心がありません。かつてマイカーを持つということは、若年世代のドライバーにとって自由の象徴そのものでしたが、今や様相が変わっています。特に都市部では、40歳未満の人々は、車を運転すること自体にあまり関心がなく、いかにできるだけ早く、安く、簡単に目的地に到達するかを重視します。これら新しい世代が車を購入するときに重視する点は、サステナビリティに優れ、環境に配慮しているか、という点です。実際に Z世代はガソリン車の購入を避け、電気自動車所有者の最大の割合を占めるに至っています。

変化をもたらすもう1つの重要な原動力は、かつてないレベルの接続性です。膨大な数のユーザー、デバイス、そして、あらゆる「モノ」が現在、5Gネットワークを介してテラバイト規模のデータの収集と共有を同時に行っています。近年のデータ処理と分析能力の向上は、革新的かつ新しい消費者向けサービスに繋がりました。このデータの可用性はまた、業界間の従来の境界線の変化をもたらしています。何世紀にもわたって、金融サービスは銀行の専売特許と考えられていました。

しかし現在、消費者は金融サービスの多くを小売業者、通信会社等、銀行以外の企業から購入しています。その他にもあらゆるシーンで、常にインターネットにつながり、高い満足度のサービスをスマホアプリからすぐ得られる生活が、当たり前のものになってきています。

これらのトレンドは、今後Mobility as s Service(MaaS)の形に収束されていくでしょう。MaaSのコンセプトは、本来は旅行者や通勤者に、公共交通機関やタクシーを利用した移動の計画や支払いをスムーズに行うためのインターフェイスを用意し、オンデマンドで利用者に移動サービスを提供するというものです。まもなく自動運転車がそのラインナップに加わると予想されています。しかし、この流れは消費者に利便性と費用の節約をもたらす一方で、車そのもののコモディティ化を引き起こします。さらには、タイヤやブレーキなどのブランド化された部品がますます不要になることを示唆しています。

新型コロナウイルスにより、車両の需要が一変

自動車メーカーはこれらのトレンドに対処するために、よりサービス中心のビジネスモデルへの移行を計画し、MaaSへの準備を進めています。業界としては、収集したデータを収益化し、モビリティを提供し、ラストマイル配送に対応することで自動車メーカーが収益源を多様化するという業界の転換期を2028年頃に迎えると予想していました。しかしその後、新型コロナウイルスの大流行により全てが変わりました。

2020年現在、多くの自動車メーカーは工場や販売店を閉鎖し、在庫を過剰に抱えている状況にあり、今後はさらに閉鎖と営業再開のサイクルが繰り返されると予想されています。また、車両に対する需要も一変しました。企業は労働力をリモートで管理する方法を見出し、車を所有することに対する最も一般的なニーズである、日々の通勤が無くなるという現象をもたらしました。また、一時解雇や失業した多くの人は、車を所有し続けることや、新車の購入が困難になりました。

このような不安な時期において、多くのメーカーが事態の更なる悪化に備えて対策を講じることで事業を継続したいと考えているでしょう。また、キャッシュフローが制限されてパイプラインが非常に不安定な時期においては、事態が正常に戻るまでの間は被害を最小限に抑えるためにコスト削減に集中したいと考えることは当然です。しかし残念なことに、新型コロナウイルスは自動車業界に取り返しのつかない変化をもたらしました。自動車ではなくモビリティに焦点を当てた未来への必然的な変化を先送りにするのではなく、むしろ新型コロナウイルスによるパンデミックの影響がその変化を加速させているのです。自動車メーカーがサービスと製造のどちらに注力するかを決めなければならない分かれ道は、私たちが想像していたよりもはるかに近くまでやってきています。

「Automotive Industry 2.0」へ向けて、今取り組むべきこととは?

しかし、今はもうこれまでのような決まりきった対応をする時ではありません。まさに「Automotive Industry 2.0」の出番なのです。まずは従業員とお客様双方の健康と安全を確保した上で、自動車メーカーが取り組まなければならないことは、中長期的な目標を達成する基盤を構築するとともに、短期的なニーズに対処するため、バランスのとれたスマートな意思決定を行うことです。製造プロセスのデジタル化を進め、生産工程の最適化を追求することで、コストを削減するチャンスが目の前に広がっています。但し、すべての決定は自動車メーカー自身が描く将来へのストーリーの中で行わなければなりません。例えば、新しいERPシステムを導入しようと考えているのなら、それが今後の自社のビジネスにどのような意味を持つのか問いかけてみることがとても大事なのです。

次に取り組むべきことは、データを収益源と位置づけて、収益源の多様化を加速することです。幸いなことに、すでに自動車業界は最もデータ・ドリブン型の産業の一つです。工場のデジタル化、車に乗る人全てがインターネットに繋がることにより、また、自動運転車だけでなく普通の乗用車からも膨大なデータが得られます。メーカーにとっての課題は、トラフィックパターンに関心のある自治体や広告主にとって関心のあるトレンドに至るまで、データを売る新しい顧客を見つけることです。自動車業界は、近い未来に想定されるMaaSのシナリオの中で、どのような役割を果たすかを検討し、提供したいカスタマー・エクスペリエンスのビジョンを明確にする必要があるでしょう。

このカスタマー・エクスペリエンスの明確化は決して簡単なことではありません。全てをいったん白紙にして、消費者にとっての最善のソリューションを改めて考え直す必要があります。デジタル・ディスラプター(破壊者)が行ったように、自動車メーカーは過去にとらわれることなく、未来を見据えていかなくてはなりません。もしかしたら、すでに自動車の黄金時代は過ぎ去ってしまったのかもしれません。しかし、いつの時代も人は移動を必要としてきました。自動車メーカーは今こそ未来の自分の居場所を確保するために自らを変革しなければならないのです。未来の進むべきビジョンが固まったら、あとはただそれに向かって進むだけです。

未来のモビリティ業界の姿、富士通のモビリティビジネスと技術について詳しく知りたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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