長崎県総務部情報政策課 様

スマート自治体を見据えたICTサービスの高度化を目指す
職員同士のつながりを支え、成長を促すAIによるナレッジ活用へ

スマート自治体を目指す長崎県は、これまでの体制の刷新・改善を目指し、新たにICTサービスセンターを設立した。同センターにおいて今後の運用業務を担っていく新たなパートナーとして選定された富士通エフサスが導入したのは、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した「FUJITSU Software Systemwalker Cloud Business Service Management」である。“人間中心”のナレッジ管理で、ICTサービスセンターの運用業務を支える基盤を目指す。

課題
効果
課題インシデントに関するナレッジがベンダー依存で、職員への情報共有が困難
効果ナレッジベースが整理され、県庁全体の資産として共有が可能に
課題質問者(県職員)への遅いレスポンスや回答不備などによる満足度低下
効果AIによる候補提示で、回答時間を従来の2分の1以下に短縮
課題質問対応者と管理者の情報共有が十分でなく問題を改善できない
効果問い合わせのステータスを見える化・情報共有し、運用品質を改善

背景

県庁全体の従来体制の刷新・改善を目指し、ICTサービスセンターを設立

「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されるなど、あらためてスポットを浴びる長崎県は、国内外から多くの観光客を集めている。ただ、他の地方都市と同様、長崎県もまた少子高齢化による人口減少や基幹産業の低迷など、様々な悩みを抱えているのが実情だ。

そうした中で地域活性化のエンジンとして注力しているのがICTの活用である。長崎県総務部 情報政策課の課長を務める山崎 敏朗氏は、「今まで手薄だった住民サービスをICTによって充実させ、人々がより暮らしやすく、働きやすく、先進企業にも集まってもらえる県に発展させていきたいと考えています」と話す。

長崎県総務部 情報政策課 総括課長補佐の村山 健一氏も、「2017年12月に新しい県庁舎が完成したことで、これまで旧庁舎の周辺に分庁舎として分散していた部署とその職員が集結し、スマート自治体に向けてチャレンジしていく土壌が固まりました」と意欲を示す。

この機運の高まりを受けて長崎県は、これまでの体制の刷新・改善を目指す新たなICTサービスセンターを設立した。

今までは、県職員からのICT利用に関する全般的な問い合わせに対して、情報政策課(管理者)と運用委託事業者(質問対応者)との間の情報共有が不十分でナレッジが属人化しており、なかなか質問対応満足度を上げられないでいた。年間に1万件近く寄せられる問い合わせの中には、適切な回答(解決策)が見つからないまま放置され、うやむやになるものもあった。

この状況からいち早く脱却するため、まずは問い合わせに対する回答精度を高めることを目指す。「ICTを利活用する各課職員の『困った』や『わからない』を、しっかり補完できる体制を築きたいと考えました」と山崎氏は強調する。

長崎県
総務部 情報政策課
課長 山崎 敏朗 氏
長崎県
総務部 情報政策課
総括課長補佐 村山 健一 氏
株式会社富士通エフサス
長崎支店長 池田 和貴 氏
株式会社富士通エフサス
福岡支店
情報サービス担当 山川 博司 氏

ポイント

AIをはじめとする先端技術を積極的に活用し、情報共有を推進していくという提案が選定委員会で高評価につながった

ICTサービスセンターの運用業務を担う新たなパートナーとして、長崎県が選定したのは富士通グループの富士通エフサスである。「競争入札の結果によるものですが、単にコストの低さだけでなく、公共/自治体案件におけるサポート実績なども含めた富士通エフサスの総合力の高さを私自身も強く感じました」と山崎氏は語る。

とはいえ、ナレッジ属人化の解消は容易ではない。従来、ボトルネックとなっていたナレッジ管理の課題を具体的にどのようにして解決していったのか。富士通エフサスが提案したのは、富士通のAI技術「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した「FUJITSU Software Systemwalker Cloud Business Service Management」(以下、Systemwalker Cloud Business Service Management)を基盤に、ナレッジを有効活用していくという方策である。

「AIをはじめとする先端技術を積極的に活用していく富士通エフサスの基本姿勢そのものが競合ベンダーに対する差異化ポイントとなり、外部の有識者で構成された選定委員会での高評価につながったと推測されます」と村山氏も語る。

システムの特長

質問対応者の知識やスキルのバラツキをAIが平準化して業務を改善する

実際、富士通エフサスはSystemwalker Cloud Business Service Managementを用い、必要な運用基盤を実質わずか1カ月の短期間で立ち上げ、2018年10月よりICTサービスセンターでのオペレーションをスタートさせた。この導入プロジェクトを牽引してきた富士通エフサス 福岡支店 情報サービス担当の山川 博司氏は、ナレッジ管理基盤整備のポイントを次のように語る。

「一般的にナレッジの登録は、様々なインシデントとその解決策を手作業で仕分けていくなど大変な苦労が伴いますが、Systemwalker Cloud Business Service Managementはナレッジ候補の中から『これをナレッジにするのが効果的』と推奨してくれるため、重要なナレッジを効率的に選択できます。また、回答として提示する文章を自動的に推敲してくれる点も非常に助かりました」

一方、ナレッジを利用する質問対応者の業務も抜本的に改善された。従来の検索は有効な回答が見つかるまで、いくつものキーワードを試行錯誤的に入力しなければならなかった。この従来の方法に対してSystemwalker Cloud Business Service Managementでは、自然文でのナレッジ検索を可能にするとともに、回答候補を確度が高い順に表示するのだ。「担当者の知識やスキルのバラツキをAIが平準化してくれるのです」と山川氏は強調する。

これにより仮にICTサービスセンターに配属されたばかりの新人であっても、ベテランと同等の質問対応を行うことが可能となる。

システムの概要

効果と今後の展望

人と人とをつなぐツールとしてAIを活用し職員一人ひとりの成長を支えていく

Systemwalker Cloud Business Service Managementを用いたナレッジ管理基盤が整備されたことで、「ブラックボックスを解消し、ICT活用に関する知識や知見を県庁全体の資産として共有・継承していく体制を実現できそうです」と村山氏は語る。

例えば、問い合わせ対応の進捗状況(ステータス)を見える化するダッシュボードを関係者全員で共有することで、管理者と質問対応者の意思疎通もスムーズになった。「結果として、積年の課題であった質問対応の満足度が向上し、さらなるICTの高度利用に向けた職員のモチベーションも確実に高まっています」と村山氏は手応えを示す。

また、先述したナレッジ候補の自動推奨などの特長を活かしつつ、ICTサービスセンターは現在もさらなるナレッジの拡充に努めている。これに伴い、「質問対応者が目的の回答にたどり着くまでの時間は、体感的には従来の2分の1以下になりました」と山川氏は語る。さらに、ナレッジの共有により、職員のICT活用がさらに進み、業務効率化にもつながっていくと期待されている。

もっとも、AIに依存することが長崎県の望みではない。「AIを使ったとしても、AIに使われてはなりません。人と人とをつなぎ、最終的には人が成長するためのツールとしてAIを活用してほしいと思います」と山崎氏は語る。富士通エフサス 長崎支店長の池田和貴氏は、「まさにこの点こそが、スマート自治体の実現に向けて我々が果たしていくべき責務に他なりません」と語り、長崎県の期待に応えていく考えだ。

直近の課題として長崎県は、住民から寄せられる様々な申請書や帳票類をOCRで読み込んでデータ化し、RPAやAIで効率的に処理する仕組みを実現したいという意向を持っている。そうした中からも蓄積されていく運用からのナレッジを、“人間中心”の理念のもとで活用していくICTサービスセンターの運用体制とシステム基盤として、長崎県と富士通、そして富士通エフサスは共に創り上げていく。

長崎県総務部情報政策課 様と富士通エフサスと開発部門担当者

長崎県総務部情報政策課 様

所在地 長崎県長崎市尾上町3-1
ホームページ https://www.pref.nagasaki.jp/
業務概要 地域・行政情報化の企画調整および推進、情報システムの開発・維持管理、コンピュータおよびネットワークの運営管理、職員の給与支払事務に関する業務全般を統括。

長崎県庁

[2019年4月掲載]

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