都市型データセンターを軸にICTソリューションを提供するさくらケーシーエスは、データセンター内のラック管理業務を効率化すべく「FUJITSU Software Interstage AR Processing Server」を導入。AR(Augmented Reality)(注1)とタブレットによるラック管理システムをオーサリングツールやサンプルモジュールを活用して短期間に構築した。
ARマーカーにタブレットをかざすだけで、ラック毎に必要な利用顧客やインシデントなどの情報を参照できる。現場にいながら最新情報を参照できるようにしたことで、業務精度とサービス品質の向上を実現した。
[ 2015年5月1日掲載 ]
業種: | 情報産業・通信 |
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製品: | ソフトウェア
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1 | 来館者誘導の際、目的のラックを正確・迅速に確認したい | ![]() | ARマーカーにかざすだけで、その場でラックを正確に確認 |
2 | ラック毎の保守情報を漏れなくすぐに参照したい | ![]() | リアルタイムな情報表示により管理の精度と効率を向上 |
3 | ラック管理システムを短期に構築したい | ![]() | オーサリングツール( 注2)活用などで開発期間を最小 |
データセンターやBPO(Business Process Outsourcing)、コンタクトセンターなど、多彩なICTソリューションをワンストップで提供するさくらケーシーエス。
近年はストックビジネス強化に注力しており、金融機関の決済業務をはじめ、教育機関や医療機関から民間企業までの幅広い分野でビジネスを展開している。
同社のビジネスの土台を担う都市型データセンターは、運用の柔軟性の高さが特長だ。
顧客はごく限られた範囲のオペレーションしか行えないデータセンターが多数を占める中、同社のデータセンターなら幅広いニーズにあわせて、より複雑で柔軟なオペレーションに対応できる。
利用顧客は100社以上に上り、ひと月あたり約300件の来館がある。
木村 達哉氏
株式会社さくらケーシーエス
アウトソーシング事業部 アウトソーシングセンター グループ長
同社のラック管理業務では、来館した顧客のラックへの誘導や定期巡回による施錠確認が重要である。
株式会社さくらケーシーエス アウトソーシング事業部 アウトソーシングセンター グループ長 木村 達哉 氏は「担当者はフロア内に多数あるラックの中から、目的のラックを正確に見つけて移動する必要があります。移動後は目の前にあるラックで間違いないか、確認が欠かせません。従来はラックの場所を紙ベースで管理していたため、確認の正確性を担保するのに時間がかかっていました」と打ち明ける。
ラックの前に移動して作業を行う際、過去のインシデント情報やマニュアル、引き継ぎ資料など、最新の保守情報が必要となる。
例えば、定例作業中にラック内のサーバランプの点滅を発見したら、どのような事態が起こっているのか、保守情報を参照して確認する。
株式会社さくらケーシーエス アウトソーシング事業部 アウトソーシングセンター 坂井 正行 氏は「従来は保守情報を参照する際、インシデント情報ならマシンルームにある1台の共有端末へその都度移動し、ログインしてデータを呼び出さなければなりませんでした。マニュアル類は事前にオフィスで紙に出力するなどして持ち込む必要があり、足りない情報があった場合は取りに戻らなければなりませんでした」と振り返る。
坂井 正行氏
株式会社さくらケーシーエス
アウトソーシング事業部 アウトソーシングセンター
辻 裕介氏
株式会社さくらケーシーエス
事業推進部 技術統括部 リーダ
同社はそれらの課題を解決するため、各部門から集められた選抜チームでラック管理の仕組みを構築した。
株式会社さくらケーシーエス 事業推進部 技術統括部 リーダ 辻 裕介 氏は「チームのメンバーは皆、所属部門の通常業務と兼務でしたので、開発にかけられる時間が限られていました。そのため、構築期間を極力短くすることが求められていました」と語る。
さくらケーシーエスはラック管理の課題解決の手段として、ARの活用とタブレットを選択した。
「ARはラックがある現場で現物を見ながら、必要な情報をその場で確認しつつ作業する環境を構築するのに最適です」(木村氏)。
ARの基盤には、富士通の「Interstage AR Processing Server」を採用した。
同製品はラックに貼り付けたARマーカーにタブレットのカメラをかざすことで、必要な情報を画面上に表示できる。
坂井氏は「現場にいながら簡単な操作で注意事項などの情報を追加できるのも便利ですね」と評価する。
担当者がラックを確認する様子
開発効率の高さも採用の大きなポイントとなった。
辻氏は「ARマーカーの作成・印刷や表示するコンテンツのオーサリングまで全てそろっており、短期間で手軽に導入できる点が魅力でした。オーサリングツールは試用版を実際に使い、タブレット上で素早く容易にコンテンツが作成できることを確認しました」と話す。
ラック管理システムでは、データセンターの全てのラックに、263種類のARマーカーを貼り付けて管理。4台のタブレットで運用している。
「ARマーカーにタブレットをかざすことで、利用しているお客様を確認でき、インシデント情報などの必要な情報をコンテンツとして表示するようにしました。また、ARマーカーをラックの裏表に1つずつ貼るのは苦労しましたね」と坂井氏。
同社はラック管理とあわせて、データセンター業務全般の改善のために、入館申請と入館、データセンター監視作業管理のサブシステムも構築した。
「WEB ISES管理システム」として2014年10月1日に稼働し、約20人のデータセンターオペレーターとともに、日々の運用を支えている。
【株式会社さくらケーシーエス様導入事例 システム概要図】
さくらケーシーエスはInterstage AR Processing Serverの導入によって、ラック管理の業務精度の向上とサービス品質の向上を実現できた。
「担当者は目的のラックかどうか、その場で正確に確認できるようになり、業務精度を大幅に向上できました。来館したお客様をラックへ誘導する際の時間短縮、施錠確認の効率化にもつながっています」(木村氏)
インシデント情報やマニュアル、引き継ぎ資料など対象となるラックの最新の保守情報はもちろん、見たいときに見たい情報をリアルタイムで表示できるようになった。
「今まで時間と手間がかかっていた最新情報の参照が、現場にいながら行えるようになりました。その結果、トラブル対処など運用管理の精度やスピード、効率がアップし、データセンターサービスの品質向上に寄与できました」(坂井氏)
ARマーカーを認識することでタブレット画面に情報が重畳表示される様子
コンテンツは使い勝手の良いオーサリングツールによって、スムーズに作成できた。
加えて、「富士通から提供されるサンプルモジュールなどによって、AR重畳表示アプリケーションも、インシデントシステムとの連携アプリケーションも容易に開発できました。1人月程度で済み、開発期間を短縮できましたね」と辻氏は述べる。
WEB ISES管理システム全体では、ラック管理以外にも効果が得られている。
例えば、顧客の入館手続きは従来、紙ベースで行っていたが、システム化によって所要時間を半減できた。
また、入館申請も紙やメールからシステム化し、ラック施錠情報をタブレットから更新可能とするなど、様々な面で業務を改善できている。
今後は、ベンダー提供の保守情報との連携など、ARでタブレットに表示するコンテンツをさらに充実させていく予定だ。
加えて、「ラック内のサーバ監視も強化すべく、統合運用管理ソフトウェアFUJITSU Software Systemwalker Centric Managerとの連携を検討しています。将来的には、ARの活用をラック単位ではなく機器単位に広げ、運用管理の精度や効率をより高めていきたいですね。ウェアラブルデバイスなど、新しい技術も取り入れつつ、様々な角度から業務最適化を進めたいと考えています」と構想を語る木村氏。さくらケーシーエスはこれからも、データセンター事業強化を推進し続けていく。
株式会社さくらケーシーエス様
社名 | 株式会社さくらケーシーエス |
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本社所在地 | 兵庫県神戸市中央区播磨町21-1 |
設立 | 1969年3月 |
資本金 | 20億5,460万円 |
代表取締役社長 | 藤原 邦晃 |
従業員数 | 1,157人(連結 2015年4月1日現在) |
事業概要 | 金融・公共・産業分野向けに都市型データセンターを起点とした各種情報サービスを総合的に提供。2014年10月にはアウトソーシングセンターが事業継続マネジメントシステムの国際規格「ISO 22301」を獲得 |
ホームページ | 株式会社さくらケーシーエス様 ホームページ![]() |
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