プラント用設備をはじめ産業用機械器具の商社である第一実業は、基幹システムのWindows環境への移行に際して、独自性の高い業務に特化した内製のCOBOLアプリケーションをマイグレーションする必要があった。同時に、紙ベースであった帳票の利便性向上と業務効率化を狙った。これらの目的を達成するために、富士通のミドルウェア製品を導入。内製のCOBOLアプリケーションの確実なマイグレーションとともに帳票電子化の基盤を整備。帳票のPDF化を果たすとともにグローバルでのデータ連携や経営の可視化も実現した。
[ 2016年3月18日掲載 ]
業種: | 商社(総合機械) |
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製品: |
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1 | 独自ノウハウ実装のCOBOLアプリケーションをオープン化したい | ![]() |
独自機能と操作性を保持したまま確実に移行しCOBOL資産で継続運用 |
2 | COBOLアプリケーションに手を入れず、紙ベースの帳票を電子化したい | ![]() |
オンライン帳票のPDF化により利便性向上と関連業務の効率化を実現 |
3 | 海外拠点の財務会計システムとの連携や経営データを可視化したい | ![]() |
オープン化でグローバルでのデータ連携とリアルタイム性を実現 |
第一実業は、モノづくりに必要な産業用機器・設備の販売を事業の柱とする総合機械商社。海外拠点はアジアを中心に米州から欧州まで34カ所におよび、グローバルに広く展開している。
同社の事業では、数百億円のプラント用設備から数万円の機械部品まで幅広い商品を扱う。
津田 徹氏
第一実業株式会社
代表取締役副社長
基幹業務では、販売管理における売買約定などにおいて同社独自の手法を用いており、強固な経営体質と競争力の源となっている。
そのような独自の業務を支えているのが内製の基幹システムである。
同社代表取締役副社長 津田 徹 氏は「販売管理をはじめとする基幹システムは、業務の独自性の高さゆえに適合するパッケージソフトがなく、古くからメインフレーム上にCOBOLで自社開発してきました」と話す。
同社は2013年5月、中期経営計画で地域軸経営から事業軸経営への移行を打ち出した。
これまでの地域軸での数値管理に事業軸での数値管理を加える経営分析には、オープン化と従来のメインフレームの仕組み(VSAM(注1))によるデータ管理からの脱却が必須だった。
同社執行役員経理本部長 鹿毛 之 氏は「情報活用のさらなる高度化やシステム運用保守の効率化などを狙い、メインフレーム上の基幹システムをオープン化することに決めました。その際、独自ノウハウが詰まったCOBOLアプリケーションは、機能、操作性をそのままにマイグレーションする必要がありました。経営課題を解決する上で、マイグレーションの採用が最善策でした」と語る。
鹿毛 之氏
第一実業株式会社
執行役員 経理本部長
押川 誠二氏
第一実業株式会社
経理本部 情報システム部長
同社が扱う帳票の枚数は約定書ベースで年間約8万枚にのぼる。
帳票の電子化による利便性向上と業務の効率化が求められていた。
同社経理本部情報システム部長 押川 誠二 氏は「約定書などの書類をワークフローシステムで稟議申請する際、出力した紙をわざわざスキャンして電子化する必要があり、スピード経営の足かせとなっていました」と振り返る。
データの有効活用も課題の一つであった。
同社経理本部情報システム部システム企画開発グループ長 秋山 吉丘 氏は「海外取引が全体の半数以上を占めます。財務会計システムは全拠点で使え、IFRS(注2)準拠なども視野に入れると、今後はグローバルスタンダードなパッケージソフトを用いるのが得策です。そうすると、基幹システムには財務会計のパッケージソフトとデータ連携できる仕組みが必要です」と説明する。
秋山 吉丘氏
第一実業株式会社
経理本部 情報システム部 システム企画開発グループ長
同社は基幹システムのうち、約定管理システムや在庫管理システム、為替管理システム、輸出入諸掛システムなど、主業務の7つのオープン化を決定した。
津田氏は「COBOL資産で継続運用できること、既存のCOBOLアプリケーションに大きく手を入れなくても帳票の印刷・PDF出力ができることです。さらにはデータ活用・連携とシステム運用の保守性向上も重視しました」とオープン化のポイントを挙げる。
これらのポイントを踏まえてミドルウェア製品を選定し、COBOL開発環境にNetCOBOL、帳票の電子化にPDFを生成するInterstage List Creatorを採用した。
帳票をPDF化することで24時間の閲覧、印刷、配信が可能になる。
Interstage List Creatorは高速で小サイズのPDFを生成できるため、配信時の回線負荷を軽減できる。
さらに、PDF生成の際にパスワードを設定して暗号化できるため、情報漏えいや改ざん防止にも役立つ。
外字もPDFファイルの中に埋め込むため、利用PCへのフォント配付の必要がない。
「内製のCOBOLアプリケーションのマイグレーションや帳票の電子化のみならず、オープン化によるシステムの柔軟性や拡張性、運用保守性から、データ活用や外部連携などを含め、当社ICTの将来を見越した富士通のトータルな提案を高く評価しました」(鹿毛氏)
主業務の7システムはWindowsサーバ上に再構築。COBOLアプリケーションは稼働資産分析などを行い、整理しつつ移行した。
帳票はCOBOLのパラメーター追加のみでInterstage List Creatorを呼び出し、基幹システムからPDFを出力できるようにした。
さらに、パラメーターに送付先を追加すれば、Interstage List Creatorを呼び出すだけでPDFを自動でメール配信することもできるようになった。
松浪 敦史氏
第一実業株式会社
経理本部 情報システム部 システム企画開発グループ 主事
基幹システムでは操作画面にもこだわった。
同社経理本部情報システム部システム企画開発グループ主事 松浪 敦史 氏は「実務担当者が日常業務で使う画面は、構成、デザイン、操作性ともメインフレームのものを踏襲しました。操作画面が変わることで、業務への影響を排除するためです」と述べる。
また、データはすべてRDBで一元管理する方式に大きく変更した。
「富士通のSEはシステム構築中、高い"現場力"で手厚く支援してくれました」と押川氏は話す。
【第一実業株式会社様導入事例 システム概要図】
同社の新たな基幹システムは2015年4月に本格稼働し、以降は安定稼働を続けている。
「自社開発のCOBOLアプリケーションをWindows環境へ確実にマイグレーションできました。当社の強みを支える独自性の高い手法による業務を狙い通り遂行できています。また、移行時の整理によって、COBOL資産を約30%削減できました」(鹿毛氏)
帳票電子化の基盤も想定通り整備できた。
押川氏は「基幹システムから帳票をPDFで出力し、印刷やメールでの自動配信もできるようになり、利便性が向上しました。さらに、帳票設計機能も利用可能になり、今後は大幅な業務効率化に加えてシステム開発の効率化も見込めます」と期待をかける。
その上、オープン化とRDBによるデータ管理によって、基幹システムとパッケージソフトとのデータ連携も可能になった。
「販売管理など基幹業務における当社の独自性確保と、財務会計における国際基準対応の両立が可能となりました」と松浪氏は語る。
同時に、データ活用体制も最適化でき、その恩恵を「例えば、文書作成などに必要なデータを基幹システムから取り出すために要する時間が約10分の1に短縮されました」と述べる秋山氏。鹿毛氏も得られた効果を「海外を含めた全拠点のデータを横串で比較・分析可能になったことで、グローバルでの経営動向をリアルタイムに可視化でき、より迅速かつ適切な経営判断が可能となりました」と続ける。
津田氏は今回の基幹システムオープン化を総括し、「富士通の支援によって、5年後から10年後を見据えたICT基盤を整備でき、ICTのさらなる戦略的活用が可能となりました」と強調する。
今後同社は、残りのシステムのオープン化など、「事業軸経営を支えるICT基盤整備の推進」を加速していく。
あわせて、海外拠点の財務会計システムの導入と基幹システムのデータ連携をはじめ、IFRS対応、与信管理の効率化など、グローバル体制をシステム面からより強化していく。
第一実業株式会社様と富士通営業 / SE
社名 | 第一実業株式会社 |
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本社所在地 | 東京都千代田区神田駿河台4-6 御茶ノ水ソラシティ17階 |
設立 | 1948年8月12日 |
資本金 | 51億500万円 |
代表取締役社長 | 山片 康司 |
従業員数 | 単体:440名 連結:1,058名(2015年9月30日現在) |
事業概要 | モノづくりに必要な産業用機器・設備を販売する独立系総合機械商社。グループの連携によって、エンジニアリングやアフターサービスを含めたトータルソリューションを提供。海外に広く展開するネットワークと豊富な実績・ノウハウにより、グローバル化する製造業を世界各地で支える。
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仮想化・システム集約により店舗システムを最適化
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