負荷分散入門
本連載では、信頼性の高いシステムを構築する上で欠かせない要素となってきた負荷分散技術と負荷分散装置(ロードバランサ)について解説します。
これまでの連載
- 第1回 負荷分散の必要性
- 第2回 負荷分散装置の基本機能
- 第3回 リクエストの分散機能 (1/2)
- 第4回 リクエストの分散機能 (2/2)
- 第5回 コンテンツ単位の負荷分散機能
- 第6回 セッション維持機能
- 第7回 故障監視機能と自動切り離し機能
- 第8回 連続サービス機能
第8回 連続サービス機能
システムの可用性を高めるためには、障害時だけでなく、サーバの増設や保守などのシステムのメンテナンス時にもサービスを継続することが必要です。
また、複数のサーバの障害や、全サーバの障害といった、万が一の状況にも対応できなくてはなりません。
IPCOMは、この様な目的の為に、次の機能をサポートしています。
- 連続サービス機能
- バックアップサーバ機能
今回は、これらの機能について説明します。
連続サービス機能
「 連続サービス機能」は、サービスを停止することなく、サーバの増設・保守・修理を可能にする機能です。
オペレーターが負荷分散装置において操作するだけであり、サービスを停止する必要はありません。
- 分散対象のサーバの増設
システム拡張のためにサーバを増設する場合、負荷分散装置の設定(ポリシー)を変更するだけで、分散対象のサーバを増設することができます。 - 分散対象のサーバの保守・修理
サーバの保守・修理を行う場合、負荷分散装置に保守・修理するサーバの使用停止を指示し(切り離し指示)、分散対象から切り離します。負荷分散装置は、そのサーバに対してリクエストを送信しなくなり、サーバの保守・修理ができる状態にします。 - 保守・修理の完了したサーバの復旧
保守・修理したサーバを再び分散対象に組み込む場合、負荷分散装置にサーバの使用再開を指示し(組み込み指示)、分散対象に組み込みます。負荷分散装置は、そのサーバに対してリクエストの送信を再開します。
図 1. 連続サービス機能
IPCOMでは、スムーズな切り離し/組み込みをサポートするため、次の機能を提供します。
- シャットダウン制御 (保守・修理の場合)
- スロースタート制御 (増設・復旧の場合)
シャットダウン制御
保守対象のサーバを単純に切り離すと、たまたまそのサーバを使用中であった利用者からは、サーバが故障したように見えます。 このため、サーバの切り離しは利用者が一人もいない時に行う必要があります。
「 シャットダウン制御機能」は、サーバを分散対象から切り離す際、利用者の通信に影響を与えないように制御する機能です。
IPCOMにサーバの切り離し指示を出すと、それ以降、IPCOMはそのサーバに新しいリクエストを振り分けなくなります。 その後、あらかじめ指定された時間( シャットダウン時間)を経過した後、このサーバを分散対象から完全に切り離します。
切り離し指示を出したときにサーバを使用中の利用者がいても、その利用者の通信はシャットダウン時間が経過するまで保証されます。
図 2. シャットダウン制御機能
スロースタート制御
サーバを分散対象に組み込むとき、分散方式として動的分散方式を採用している場合には、注意すべき点があります。
分散対象に組み込んだ直後のサーバは、処理中のリクエストが全くない状態にあります。 この時、負荷分散装置は、動的分散方式のアルゴリズムに従い、このサーバに優先的にリクエストを振り分けます。 このため、このサーバの処理するリクエストは短時間の間に急激に増加します。 すると、本来なら処理できる量のリクエストであっても、サーバの動作が不安定になることがあります。
「 スロースタート制御機能」は、サーバが分散対象に組み込まれたとき、新たなサーバに対して、徐々にリクエストの送信量を増やしていく機能です。こうすることで、サーバの安定稼動を図ります。
図 3. スロースタート機能
バックアップサーバ
負荷分散機能によってサーバの故障によるサービス停止を防ぐことはできますが、分散対象のサーバが減少することで、システム全体の処理能力が低下してしまいます。
IPCOMでは、あらかじめバックアップサーバを用意しておくことができます。
「 バックアップサーバ機能」は、分散対象のサーバが高負荷になった場合や故障した場合に、正常時には使用しないサーバ( バックアップサーバ)を、分散対象として組み込む機能です。
バックアップサーバ機能を利用することで、システム全体の処理能力の低下を防ぐことができます。
図 4. バックアップサーバ
おわりに
「負荷分散入門」の連載は今回で終了です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
負荷分散機能は、IPCOMの持つ高信頼化機能の一つです。信頼性の高いIPネットワークを実現するため、これからもIPCOMは発展していきます。
今後とも、IPCOMにご期待ください。
これまでの連載
- 第1回 負荷分散の必要性
- 第2回 負荷分散装置の基本機能
- 第3回 リクエストの分散機能 (1/2)
- 第4回 リクエストの分散機能 (2/2)
- 第5回 コンテンツ単位の負荷分散機能
- 第6回 セッション維持機能
- 第7回 故障監視機能と自動切り離し機能
- 第8回 連続サービス機能
負荷分散装置(IPCOM)のラインナップ
負荷分散装置 IPCOMシリーズは、システムに合わせて搭載機能を追加し、段階的な統合を可能にすることにより、常にシステムに最適なネットワーク環境を実現します。