仮想化スペシャリストBlog
土村忠生の「仮想化の風に言の葉をよせて」

第17回 VMware Cloud Native Day 2019, VMware vFORUM 2019 Tokyo, VMware Day 2019 Osakaフィードバック

2019年12月20日掲載

仮想化ソリューション企画のプロフェッショナル土村 忠生

2005年からVMwareに携わってきましたが、年々新しいテクノロジービジョンが示されては実装され、お客様が事例講演をされるという流れは変わっていません。ヴイエムウェア社の方々も立ち上げ当初からお付き合いのある方とイベントでお会いする機会が減り、代わりに新しい方々がどんどん増えています。
特に VMware Cloud Native Day新しいウィンドウで表示では、若い熱気あふれる方々がデモや講演に取り組んでおり、VMware InfrastrctureのOEM立ち上げ当時の熱気を思い出してしまいました。
VMware OEM立ち上げ当初は、お客様も仮想化には触れたことがない方々ばかりで、現状のシステムから何が変わり、何が変わらないのか、留意することは何かを正確にお伝えするために、ヴイエムウェア社のテクニカル担当の方から、機能説明ならぬ、機能の動作原理を徹底的に教えて頂き、たくさん質問攻めにして困らせたものでした。
私も大分長くやってきましたので、現在は後進の育成に取り組み始め、旧知のヴイエムウェア社の方に声をかけ、私が主催する技魂塾でvSphereの性能に関する講義をして頂くことになりました。お客様に仮想化を届ける私たちベンダーは、マニュアルに記載されている機能を知る以上に、そこに明示されていない機能の特性や実装を理解し、富士通だから出来るシステム視点を持ち、トラブルの芽を事前に摘み、適正な機能・構成設計をお助けすることが仕事であり、技術者としての矜持です。
そういう考え方を伝承していければと思い、「技魂塾」という名をつけました。

クラウドネイティブ志向が動き出す

今回ヴイエムウェアは初のクラウドネイティブに特化した、VMware Cloud Native DayをvFORUMに先駆けて開催しました。

VMware Cloud Native Day基調講演より(VMware Japan Twitter)

見据えているのはコンテナ基盤とそれらをマネージするクラウドサービスです。私が注目したのは、VMworld 2019で衝撃を受けたProject Pacific – Technical Diveです。スピーカーの大久さんは、冒頭Deep Diveではないとわざわざ断りを入れていましたが、既存のIT運用者にとっては十分ディープでしたよ。Project Pacificで実装されるKubernetes(K8s)の基本的な操作は、YAMLファイルに定義されたものが実行される仕組みの説明や、専用に用意されるKubectlコマンドで環境を構築するなど、vCenter操作以外のコンテナ運用者向けの話から始まった時点でハードルがあがりました。ネットワーク払い出しでNSX-Tが必須になることや、K8sのマスターVMは3VM必要といった構成の話だけでなく、物理のLinuxよりESXi実装のK8sのほうが8%速いのは、ESXiに実装されているCPUのNUMA(注1)スケジューラの圧倒的な性能に起因する話など、現在入手可能な情報がてんこ盛りでした。好奇心旺盛な私は、こういったプレゼンは好きなスタイルです。

  • (注1)
    NUMA(Non-Uniform Memory Access):
    共有メモリ型マルチプロセッサコンピュータシステムのアーキテクチャのひとつで、複数プロセッサが共有するメインメモリへのアクセスコストが、メモリ領域とプロセッサに依存して均一でないアーキテクチャ

展示コーナで目を引いたのは、ブロックを組み合わせて作成したロボットが、ルービックキューブを解くデモンストレーションです。ルービックキューブを解くクラウドネイティブアプリを使い、Plus IoT Centerでロボットを制御するプログラムを展開し、運用管理するという説明でした。
Plus IoT Center新しいウィンドウで表示は、一昨年のVMworldで 富士通がプログラムの差分配信の技術新しいウィンドウで表示を提供して、コネクテッドカーのプログラムを高速に書き換えるデモ展示をしていたこともあり、私にとってはなじみ深いものです。
vFORUMでは、もちろんvSphereにKubernetesを統合した「Project Pacific」とそれを包含した運用管理体系の「 Tanzu新しいウィンドウで表示ポートフォリオ」が、トップメッセージだったと言っても良いでしょう。

Project Pacific:vSphereをKubernetesと共に再設計

Project Pacificは、既存ITの中核を成す仮想化ハイパーバイザVMware vSphereに、DX-ITの中核を成すコンテナ管理を担うKubernetesを統合したものです。
既存ITとDXのITとが一つになります。
VMware Tanzuは、Kubernetes対応ソフトウェアの開発支援ツールおよびサービス群が用意され、Kuberntes対応のモダンなアプリケーションのビルド、実行、運用管理を支援します。
クラウドネイティブアプリケーションに寄り添ったITインフラの運用が手の届くところまでやってきたのですね。
ベンダー側のメッセージに対して、お客様側はどうなのか?
vFORUMのお客様事例講演でのメッセージは、オンプレミスの環境はvRealize Operations, vRealize Automation, NSX-Tなどを活用し、徹底的に効率化・自動化されたプライベートクラウド運用を実施しているということ。そしてその余力を持って、次のステップとして、ハイブリッドクラウド、コンテナ基盤、マルチクラウド(DXに向けたクラウドネイティブサービスの活用)へ進むという、まさに王道のクラウドジャーニーそのものを示されていました。
クラウドサービス側はどうでしょうか?
お客様が採用されたハイブリッドクラウドを構成するクラウドサービスプロバイダの環境には、VMware Cloud Foundation基盤が導入され、お客様のVMwareベースのオンプレミス環境と同じ操作で一貫した運用が出来るようになっています。
非ヴイエムウェア環境で構成されるマルチクラウドも、VMwareのクラウドサービスでオンプレミスを含めて一貫して管理できるビジョンを示しています。
これは私が描いていたクラウドジャーニーへのベストプラクティスとほぼ同じでしたので、間違っていなかったという自信にもなりましたが、すでにこんなにも多くのお客様が先に進まれていらっしゃったのかという衝撃もありました。
ただ、私たちのご提案では「インフラ視点」だけではなく、「システム視点」を忘れないようにお伝えすることを心がけています。拡販することだけを意図した情報とは何が異なるのかは、ITmediaに記載した記事を是非ご覧ください。( DXに向けた「ハイブリッドクラウド」を支えるITインフラを再設計するポイント新しいウィンドウで表示

既存ITとDXのITとの融合がIT部門にもたらすこと

Project Pacificは既存ITとDXへのIT、なかでもよりアプリケーションセントリックな運用管理で一番注目されているコンテナ技術とを融合させるとても素晴らしいアプローチです。VMwareで従来のITを運用されている方々が、コンテナ技術を活用したDX(クラウドネイティブなアプリケーション)基盤に取り組むためには、まったく新しい知識が必要になります。IT部門の方々は、サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化、オープンソース、パソコン、OS、セキュリティなどなど、今でさえ抱えきれないほどの多様なスキルを保有して運用されています。ここに、まったく異なるスキルを詰め込む余地があるとはとても思えません。まさにIT部門にこそ働き方改革が必要です。
そのためには、既存のITはシステムごとに要否を検討し、断捨離したうえで、残すものは徹底的に効率化・自動化を図り、新しい技術に取り組める余地を作り出す必要があります。
富士通では、既存ITをそのままDXで活用する仕組みと、運用を効率化する仕組みをご提供しています。既存ITをDXでそのまま活用出来るの?と疑問に思われる方が多いかもしれません。我々のアプローチは、既存ITをモダナイズ(刷新)することなく、 ミドルウェアを介して既存ITの代表でもあるメインフレームのデータをDXでも活用させる新しいウィンドウで表示というものです。詳細はリンク先をご覧ください。

また、既存IT運用の効率化には、 インフラ運用を楽にするHCI新しいウィンドウで表示をご提供しています。
今回のvFORUMでは、お客様の事例講演を中心に聴講しましたが、先ほども述べたように、DXに向かわれている方々は、例外なく既存ITの効率化・自動化に取り組んでから、ハイブリッドクラウドやコンテナ、クラウドネイティブ活用へと歩まれていらっしゃいました。
事例では、既存IT環境の効率化・自動化を徹底するために vRealize Operations新しいウィンドウで表示を使い、システムの払い出しを効率化・自動化するための vRealize Automation新しいウィンドウで表示NSX新しいウィンドウで表示を使うというものでした。VMware製品だけでは補えないところは、Ansible Towerを取り入れていたり、SaaSの運用管理を使われていたり、様々な工夫がちりばめられていました。もちろん、富士通のHCIにも昔からOEMしている vRealize製品やNSX新しいウィンドウで表示などを組み合わせてご利用できますし、HCIに組み込まれている運用管理ツールInfrastructure Manager は、ずいぶん前から Ansible用のモジュール新しいウィンドウで表示をGitHubでご提供しています。
こういったITインフラ運用を成功に導く既存の仕組みを上手く活用して、早期にDXに向かう余力を蓄えて頂ければと思います。
では、DXで活用されているコンテナ基盤に簡単に取り組めるかと言えば、なかなかそうはいきません。前提となる知識が既存のITのスキルとはかけ離れているため、それらの技術を一から学び取り入れていくには時間や工数もそれなりにかかることを覚悟する必要があります。
しかし、この課題を解決するために、ヴイエムウェアから既存ITの中核を成すVMware vSphereにコンテナ管理Kubernetesを統合した「 Project Pacific新しいウィンドウで表示」が提供されようとしています。
これは、既存ITで使い慣れたvCenter Serverから、仮想マシンをデプロイするのと同じようにKubernetesのコンテナ環境をデプロイすることを目指し、DXに取り組むIT部門の運用へのハードルを大きく下げてくれるのです。Project Pacificに興味がある方は、ヴイエムウェアの椨木さんがSlideShareに公開されている 日本語の概要資料新しいウィンドウで表示も合わせてご覧ください。
このコンテナ環境を管理する Tanzu Misson Control新しいウィンドウで表示は、オンプレミスのProject PacificのKubernetesも、主要なクラウドサービスプロバイダで動作するKubernetes基盤も同じように管理することが出来、運用の一貫性を実現しています。これらは既存ITを運用するIT部門にとって、とても素晴らしいアプローチと言えるでしょう。

Project Pacificをシステム視点で考えてみる

ただし、気になる点が無いとは言えません。
既存ITとDXのITの特性の違いと言うよりは、求められる要件の違いとどう折り合いをつけるかということです。具体例をあげてみましょう。
既存ITを支えてきたvSphereのサポートポリシーは5年です。製品のバージョンアップは約1年サイクルです。お客様が第一に求めるのは「安定稼働」です。その事から、場合によってはパッチ適用すら見合わせるお客様もいらっしゃいます。自分たちで検証済みのこのバージョンの組み合わせで運用を統一するポリシーを掲げているお客様も少なくありません。我々はその声に応えるために、富士通のHCIに添付される管理ツール「 Infrastructure Manager新しいウィンドウで表示 」では、ファームウェアからハイパーバイザまで、このバージョンで統一するというインフラのベースラインを定義したら、それと外れた組み合わせの定義違反のインフラを表示し、警告する機能を実装しています。これほどまでに、システムの安定稼働を重視させるお客様は、バージョン管理にセンシティブなのです。
では、Kubernetesはどうでしょうか?
バージョンアップは約3カ月サイクルです。サポートはおおよそ、最新から2つ前までくらい。つまり1年に満たないのです。また、機能追加だけではなく、機能削除やインタフェース変更も起こり得ることを覚悟する必要があります。安定稼働第一というより、効率化や新機能実装第一というスタンスに見えます。
このように、志向も性格も異なるもの同士を一つに統合するということは、とてもチャレンジングな試みであり、リスクも抱え込みます。既存ITを運用される方々にとっては、まだ使わないKubernetesのスタンスに引っ張られて頻繁にvSphereのバージョンアップを余儀なくされたら、運用スタイルを大きく変えなくてはいけなくなります。塩漬け運用など不可能になりかねません。まさにDXを前提とした運用形態へのマインドチェンジを求められることになります。
一方でこういう方向性も考えられます。DXよりもまだまだ運用の中心である既存ITを重視して、Kubernetesのバージョンアップを既存のvSphereに合わせるというものです。今度は各種クラウドサービスが適用するKubernetesのバージョンとの乖離が広がっていくことになり、将来ハイブリッド・マルチクラウドへと進んだ時にどういう影響が出てくるのか、これもリスクがあるかもしれません。
図らずも、どちらにも対応できるように、長期サポートと短期サポートの2つのサポートラインにvSphere製品がわかれる未来が来るかもしれません。現在情報がないので何もお伝え出来ないのがもどかしいです。

新vSphereのサポートポリシーはどうなる!?

そう遠くない未来に、Kubernetesと統合された新バージョンのvSphereが登場してきたとき、vSphereのサポートライフサイクルがどうなるのか、KubernetesのバージョンアップはESXiに影響を与えないような実装になっているのか、みなさんと注視していきたいと思っています。

VMware Day OSAKA

11/19日にVMware Day OSAKAで講演しました。
タイトルは「ハイパーコンバージドインフラの進化を知る」です。
このブログの愛読者の方々に感謝を込めて、特別に講演資料を公開します。

VMware Day OSAKA講演資料(増補版)新しいウィンドウで表示

今後とも、このブログをご愛読頂ければ、嬉しいことこの上なしです。

では、また次回をお楽しみください。

VMware Odysseyに参加した仲間とともに

企画のプロの視点と仮想化の知見で、毎月情報発信します。

  • シニアプロダクトプランナー(仮想化ソリューション企画のプロフェッショナル)
  • 10年以上VMware技術支援に従事しVMware Loveな日々を過ごす
  • 米国ヴイエムウェアより9年連続 VMware vEXPERT AWARDを個人受賞
 
 

著者紹介

Tadao,Tsuchimura

土村 忠生

本文中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。


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