私はストレージアセスメントサービスのチームを率いておりまして、本多と堀越は実行部隊のメンバーで、堀越は窓口も担当しております。小林は、ソフトウェアを拡販する部署に所属しておりますが、われわれのチームの一員として活動しています。
今回立ち上げたストレージアセスメントサービスのサービス開発は、ここにいる全員で行っています。
山崎
企業では、業務におけるICTインフラの役割が大きくなるにつれて増えていった物理サーバを、仮想化統合することで物理的な集約を進めてきました。しかし今度は仮想サーバの増加が管理を複雑化し、データも引き続き増大の一途。企業はインフラ投資を抑制する観点から、ストレージに対してお金をかけることができなくなっています。
小林
海外では、複数の企業を渡り歩くストレージ専門の技術者がいて、専門スキルを持つ彼らにストレージの管理を任せる、ということが行われているようです。しかし日本では、サーバ管理者が、片手間にストレージの面倒を見ている、というのが実情のようですね。
堀越
ストレージの専門家がいなくなっている一方で、データが価値を生む時代になり、価値あるデータを格納するストレージを効率的かつ安全に管理することが求められています。
そのために次々と先進的なストレージ技術が登場しており、お客様が運用スキルや最新技術を得ることがますます難しくなっているという背景もあります。
山崎
こういった状況において、サーバの観点からは業務や性能を分析していても、ストレージの観点から分析はしたくでもできないという企業が増えてきました。そこでわれわれは、お客様にとって分かりやすい方法でストレージ環境を見える化することで、お客様のインフラ環境の改善をお手伝いしたいと考えました。
本多
例えば、データの転送速度やシステムの応答が遅くなる場合は、ストレージがボトルネックになっていることも要因として考えられます。この場合、コントローラやディスクの負荷、伝送路の応答レベル、さらには、RAIDやボリュームといった構成要素の情報を分析することで、ストレージの潜在的な問題を発見できることがあります。
しかし、サーバ視点の分析ではこういったストレージ内部の情報までは見ることができず、根本的な解決に至らないということも多いようです。
小林
サーバ側からストレージを見る場合、サーバ-ストレージ間のI/Oは把握できても、ストレージ内部まで把握するのは難しい。もちろん、ストレージの共通規格はありますし、ストレージ自体が性能情報を取れる仕組みになってはいますが、その情報はベンダー固有の方法で保持されているため、そのベンダー仕様に対応したツールが必要になります。
堀越
本サービスは、調査ツールや問診表を用いてお客様のサーバおよびストレージの課題を見える化し、改善策となるストレージの活用方法や導入プランをご提案します。調査ツールは、ツールをインストールしたPCをお客様のシステムに接続するだけですから、お客様のサーバにソフトウェアをインストールしたり、お客様の業務に影響したりすることはありません。
調査ツールの特長としては、サーバとストレージの各種情報を1つの時間軸で分析できる点が挙げられます。通常であれば、サーバ用とストレージ用それぞれのツールを個別に実行し、人の手で時間軸を合わせる必要がありますが、本ツールは人の勘に頼らず、ズレのない相関分析を可能にします。また、マルチベンダーに対応しており、富士通以外の主要ベンダーのストレージからも情報を採取できます。
調査報告書においても、単にどのディスクの負荷が高いかを示すだけではお客様にとって分かりにくいもの。最初のヒヤリングでお客様がどのような業務を稼働しているかをお聞きしてシステムの構成情報と紐づけ、「この業務で使っているこのディスクの負荷が高いですよ」といったアプローチで結果をご報告します。
堀越
最初に、ヒヤリングでお客様の環境や業務についてお聞きします。次に、ツールもしくは問診表を使って調査を実施し、採取したデータを基にお客様環境を分析し、調査報告書を作成。結果をご報告するとともに、既存システムに課題がある場合は改善案をご提案します。
本多
所要期間は最短で、調査・分析・報告書作成に各1週間で、計3週間ですが、調査を2週間に延ばしたり、分析の時間を長くとって深堀りしていくなど、お客様のご要望をお聞きしながらスケジュールを決定します。
山崎
現在の業務で何が起きているかを把握し、将来予測に役立てたいというお客様や、特定業務に不安があるがどこを見ていいか分からないから調査して欲しいというお客様、さらには、リプレースが近づいているため現状を可視化し、投資効果の高いストレージを検討したいお客様など、様々です。また、富士通以外のストレージをご利用のお客様からも、客観的な評価を求めて依頼されるケースもあります。
本多
仮想化環境に関して言うと、当社にはサーバ仮想化の環境に特化した「仮想化アセスメントサービス」があり、それぞれがサーバとストレージを担当して分析するケースも多いですね。仮想化環境では物理的なストレージは抽象化されて見えなくなっていますから、その見えない部分を本サービスが担当することで、システム全体を一気通貫で分析することが可能になります。サーバとストレージの両方を持つ当社ならではのサービスです。
堀越
お客様の既存のシステム環境に最適なストレージをご提案するサイジングが可能なので、商談の際に営業部門から依頼されるケースも多いですね。ある製造業のお客様で、仮想化による統合でシステムが複雑化し、現場のSEも分析が困難な状況になっていたケースがありました。本サービスを使ってシステムが遅くなっている原因を報告し、サイジングをご提示したところ、「富士通の提案は一番根拠がある」と評価していただきました。
堀越
苦労した点はたくさんあります。その1つが、マルチベンダー対応です。ストレージだけでなく、物理サーバや仮想サーバも含めて広範にサポートする必要があるため、ツールの品質を高めることに最初は苦労しました。
本多
もともとあったサービスではなくて、ゼロから我々の中で立ち上げたサービスですから、実際に調査した結果をどう分析し、お客様に分かりやすくご提示するかといった、われわれ自身のスキルを高めることにも時間をかけました。
堀越
サーバやストレージの組み合わせは無限にありますから、ツールですべての組み合わせを検証してサポートするというわけにはいきません。時にはわれわれが知らない内部の仕様に直面することもあります。そうした時は、「サポートしていないので調査できません」ではなく、経験を生かしつつ泥臭く取り組んでいます。そしてその経験をノウハウとして蓄積し、我々の強みに変えていきたいと思っています。
山崎
このチームは、本当に細かいところまで突き詰めるメンバーがそろっています。突き詰めたことで原因が浮きあがり、お客様に喜んでいただけることもありますから。メンバーのバックグランドが様々なのも強みです。ハードウェア開発、ミドルウェア開発、ソフトウェア開発、フィールドサポート、製造検証、インフラ構築、コンサル等々。しかもみんな、ストレージの分野で複数のバックグランドを持っています。
小林
ソフトウェア開発をしてきた私にとって、お客様の環境を実際に見る機会は本サービスが初めてです。お客様がどういうことで困っているかが定量的な数値として見え、なおかつお客様の生の声も聞ける。この恵まれた環境で得た情報を開発部隊にフィードバックし、今後の製品に活かしていきたいです。
本多
まずは対応するストレージをさらに増やしていくことと、分析スキルも一層上げてよりよいサービスにしていきたいです。
堀越
お客様にとっての最適なインフラを考えれば、クラウドやデータセンターといった規模でのアセスメントも必要になるでしょうし、グローバル展開も考えていきたいです。
山崎
管理者にとっては将来を見据えた費用対効果の高いインフラ、利用者にとっては必要な時に必要なデータにストレスなくアクセスできるシステム。そのどちらにもストレージはかかわってきます。本サービスは、現在はアセスメントの段階ですが、将来的にはコンサルティングサービスとして、お客様が目指すシステム環境をご提案できる存在になれるよう、メンバー全員で取り組んでいきます。
サーバの観点からでは見えないストレージの潜在的な問題が、システム全体に影響を及ぼすこともある。定量的な数値で現状を見える化することは、現状の課題の可視化のみならず、将来に発生しうる問題への早期対応にもつながる。富士通は、ストレージアセスメントサービスを通して、お客様のシステム環境の最適化を支援していく。
(注)取材日:2014年6月6日
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掲載日:2014年7月4日