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  7. 半世紀にわたる磁気テープ装置の変遷と富士通の開発の歴史

VOICE ~ETERNUSの現場から

1つの技術・製品は、開発、販売、サービスなど、数多くの担当者の手を経て世に送り出されます。「VOICE ~ETERNUSの現場から」では、富士通ストレージシステム「ETERNUS(エターナス)」の技術・製品にかかわる担当者にスポットをあてて、開発や販売にまつわるエピソード、製品への熱い想いなどを紹介します。

LTO対応テープライブラリなど「ETERNUSテープ製品」
半世紀にわたる磁気テープ装置の変遷と富士通の開発の歴史

今回は、ETERNUS LT250, LT270 テープライブラリなどのラインナップを誇るETERNUS テープ製品について。現在に至るまでの磁気テープ装置開発の長い歴史を聞きました。


  • 富士通株式会社
    • ストレージシステム事業本部
      ストレージインテグレーション統括部
      シニアスタッフ 大森 治
    • ストレージシステム事業本部
      シニアスタッフ 加藤 恵一
    • ストレージソリューション事業部
      プロジェクト部長(テープライブラリ担当)勝山 幸男

――磁気テープ装置が登場したのは1951年。Remington Rand(現Unisys)が開発したUNIVACⅠというコンピュータに用いられたのが最初である。人間で言えば還暦を迎えた、最も長い歴史を持つ記憶装置だ。そして、富士通におけるテープ装置開発もまた長い歴史を持つ。

富士通がテープ装置の開発を始めたのはいつ?


(大森)富士通初の磁気テープ装置、FACOM 601を世に送り出したのが1960年です。その後、1964年にFACOM 603を発売しました。どちらも私が入社する前の製品です。FACOM 603は当時のベストセラー製品で、海外にも出荷したという話を聞いています。

(加藤)富士通は、黎明期でも初期段階から磁気テープ装置を開発しています。その歴史は古く、常に最先端のところで製品開発を行ってきたため、技術的な蓄積も大きいです。FACOM 603がヒットした要因は、富士通が独自技術により、テープを1つのモーターだけで制御するシングルキャプスタン方式を日本で初めて導入したところにあったと思います。


1964年発表 FACOM 603M 磁気テープ装置

――1970年代から1980年代にかけては、IBM互換の装置が主流であった。つまりテープ装置で読み書きするデータは、IBMのテープ装置でも読み書きが可能でなければならない。そのなかで、テープ装置ベンダーは独自性を打ち出すために、高性能化、小型化に積極的に取り組んでいった。富士通も、オートローディング機能を搭載したFACOM 610(1975年)、GCR(Group Coded Recording)方式の採用により9トラックで記録密度を6250bpi(bits per inch)まで高めたFACOM 611(1976年)など、さまざまな製品を発表していった。

当時開発した機種で特に印象深いものを教えてください。


大森近影

(大森)私はFACOM 615(1979年)という機種で初めて設計を行いましたが、そのとき最初に決まっていたのは筐体のサイズだけ。リールの大きさは固定なので、四角形に丸を2つ描いた状態の設計図を何度も書き直しました。28歳くらいのときです。かなり苦労したおかげで、なかなかの販売数でした。

(加藤)私もFACOM 615のコントローラーの設計を担当しました。FACOM 615は、小型化のためにいろいろなところを削って小さくしようと頑張りすぎたきらいがあります。当時は、それまでより小型で、低コストの製品への強いニーズが確かにありました。けれど、何もかもを小さくすると、テープに傷がつきやすくなったり、状況によって性能が落ちることがあったりします。小型化していく過程で、どのような状況でも高性能を発揮する信頼性を確保していくというバランスを取ることが非常に難しかった。

(大森)その後に出したFACOM 617(1981年)やFACOM 618(1982年)にはFACOM 615の経験をうまく活かせたと思います。

(加藤)FACOM 617は、筐体内に入れる真空のポンプを工夫して小さくして、それまでの製品より半分ほどのサイズにすることができました。テープ装置については、FACOM 613という機種からOEMにも力を入れていましたが、FACOM 617で出荷数が大きく伸び、続くFACOM 618でも急増していきました。

――1980年代後半に大きな変革が訪れる。それまでのオープンリール方式に代わり、CMT(Cartridge Magnetic Tape)方式のテープ装置が主流となったのである。そして、CMT方式の普及とともに、ロボット機構によりカートリッジ式のテープをドライブに自動的に入れ替えて大量データの記録を可能にする、テープライブラリ装置も登場した。

富士通で最初のカートリッジ方式の製品は?


(勝山)1985年に出したFACOM 6475です。当時、IBMからカートリッジ方式のテープ装置が出るといううわさがあったのですが、なかなか出ない。富士通でもカートリッジ方式を以前から検討していたので、オリジナルのものを出そうということになりました。FACOM 6475は、ちょうど普及し始めたVHSをカートリッジに採用したテープ装置です。
その後、シングルリールカートリッジのテープ装置、IBM 3480が出ました。富士通でも、1987年にIBM 3480互換のFACOM 6470を出しています。


1985年発表 FACOM 6475 カートリッジテープ装置

(加藤)テープに大容量のデータを高速に記録するためのテクノロジーが進化していき、1980年代後半からカートリッジの時代になりました。それに続いて、単なるテープドライブでなく、棚に収めた大量のカートリッジテープをロボットが自動的に取り出してドライブにかける巨大なライブラリ装置が作られるようになった。四角い形状のカートリッジテープはロボットがつかむのにはちょうどよかったんですね。

テープライブラリ装置の開発もその頃から?


(勝山)1984年に、FACOM 6460というライブラリ装置を開発しました。FACOM 6460では砲弾形のカートリッジテープを蜂の巣のように格納していましたが、1986年にFACOM 6475対応のテープライブラリ装置としてFACOM 6453を、1989年にFACOM 6470対応のETERNUS F6455を出しています。

――1980年代後半から1990年代、ストレージ市場ではオープンシステム化が急速に進んでいった。オープンシステム用のテープ装置に注力するベンダーもいたが、富士通では、オープンシステム向け製品ではなく、メインフレーム用のテープライブラリ装置の開発に注力するという戦略を取った。

オープンシステム化にはどのように対応を?


(大森)市場がオープンシステム化に向かうことは早くから予想していました。そのため、1980年代後半には、オープンシステム向け、すなわちIBM以外のTandemやNCR製のコンピュータ用のテープ装置を開発しています。

加藤近影

(加藤)早期参入を開始していた富士通でしたが、残念ながらリソースには限界があります。2000年まではメインフレーム向けの巨大なライブラリ装置の開発に注力することで、オープンシステム向けの装置開発からは一時撤退することを決めました。そちらのほうが富士通にとって利があると判断したからです。

2000年以降は?


(大森)オープンシステム向けのテープ市場は、1980年代後半から1990年代前半は8mmデータカートリッジの製品が、1990年代半ばから2000年初頭まではDLT(Digital Linear Tape)の製品がほぼ独占状態にありました。しかし、2000年に入ると、IBM、HP、Quantumが共同開発した規格、LTO(Linear Tape-Open)が一世を風靡し、8mmやDLTは消えていきました。

(勝山)2000年以降はメインフレーム向け市場が急速に縮小し、富士通もオープンシステム向けの製品開発に移行します。ただ、LTOドライブに関してはすでに他社がシェアを占めている市場に遅れて乗り込むことになります。そこで、後発でテープドライブ開発を行うより、ドライブを利用するライブラリやオートローダーなどのシステム開発に専念したほうがよいということになり、現在はLT250やLT270などのテープライブラリを中心に展開しています。

――テープ製品はその長い歴史の中でさまざまな変遷を遂げてきた。富士通は、市場動向の先を読み、長年の実績と技術的蓄積に基づき、より良い製品を提供しようと努力し続けている。開発に携わってきたなかでの苦労話を聞いた。

製品開発ではどのような苦労がありましたか。


(加藤)コントローラーの設計を行ってきましたが、鮮烈に記憶に残っているのがLSIのリメイク(作り直し)です。装置を小型化するためには、新しいテクノロジーが必要になります。そうすると、処理用にLSIチップを新しく作らなければならない。半導体ですから、回路の集積度が高くなると、その分コストがかかります。リメイクするとコストは数千万単位になる。リメイクは1回くらいなら許されたんですが、ある機種では5回もリメイクすることになってしまったんです。OEM出荷する製品だったので、スケジュールも遅れてしまうし、ものすごく怒られて、最後には頭を丸めろとまで言われました。
チップには名前を付けます。データの流れを制御するチップだったんですが、何度かリメイクを繰り返したとき名前が悪いと言われました。Binary Arithmetic Decoding、略してBAD。まさかと思いましたが、名前をBAC(Binary Arithmetic Complete)に変えたら5回目でうまくいったんです。名前って大切ですね。

勝山近影

(勝山)私は機構設計を行っていたんですが、やはり小型化には苦労しました。作るのはIBM互換機ですが、他社と同じものを作っても何の面白みもありません。1990年代前半に、8インチフォームファクタ(筐体の形状)の小さな製品を開発したのですが、A3くらいの大きさにどのように部品を詰め込もうか非常に頭を悩ませました。テープ装置では、テープの安定走行が命になります。けれど、データの転送速度や記録密度を上げるためには、とにかくテープの走行速度を上げなければならない。テープを走らせる距離が長ければ安定しやすいのですが、8インチフォームファクタという制約の中でどのように距離を確保するか。いろいろと実験をして、最後にこれだと最適な方法が見つかったときは最高の気分でした。
また、安定走行のためには、空気の膜を作ってテープを浮かせたような形で走らせ、極力テープの磁性面に傷をつけないようにする必要があります。けれど、8インチフォームファクタでは、中に収めるポンプも小さくしなければなりません。小さなもので最大のパワーを得る。そういうところにものすごく苦労しました。

(大森)装置のテストでも大変な思いをしたことがあります。たとえばテープのオートローディング機能のテストでは、テープのロードは装置が自動的に行ってくれますが、テープの入れ替えは人手で行わなければなりません。耐久テストで、数百回もテストしなければならないんですが、徹夜でテープを入れ替えるために座ったり立ったりを繰り返して、しまいには立てなくなったこともありました。
温度や圧力などの環境試験も大変でした。OEMで出荷するために標高2000メートルの場所での圧力でも大丈夫かどうかを試験しなければならないんですが、長野の山にトラックで製品を持ち込んで、スキー場の電源を借りてテストしたこともあります。自動車の高地試験用の設備を借りてテストを行ったときには、空気を吸引して圧力を下げるところをオペレータが操作を間違えて空気を吐き出してしまったんです。それまで自動車の排気ガスを吸い込んでいたわけですから、黒い空気がぶわっと出てきて、その場でテストを行っていた担当者が真っ黒になってしまった。今ではテスト用の設備が整っていますから、そのように理不尽な苦労をすることはなくなりました。

――大容量、低コストというメリットからバックアップなどに活用されてきたテープ製品だが、ハードディスクの大容量化、低コストが進むにつれ、取って代わられるのではないかとの懸念が大きくなっている。しかし、テープのテクノロジーが向上し続ける限り、テープ製品が死ぬことはないと関係者は断言する。では、今後、テープ装置はどのように進化していくのだろうか。

(注)取材日:2011年1月25日
本稿記載の肩書きや、固有名詞等は取材日時点のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。

次回 「LTO対応テープライブラリなど『ETERNUSテープ製品』
磁気テープ装置の技術的進化と将来の展望」

掲載日:2011年4月4日


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