ストレージ市場でホットな話題は何? これからの動向は? 他社の運用管理者が考えていることは?
こんな、ストレージ管理者が知りたいと思われる最新の情報をお届けするのが、この連載だ。その1回目のテーマは「バックアップの課題」。中小規模の企業に注目しながらバックアップにどんな対応をしているのかを、IDCのレポートを基に分析してみたい。
(注)本連載ではIDCのレポートを基に、中小規模の企業=1人~999人以下、大規模の企業=1000人以上と定義している。
ビジネスにおいて情報はその重要性を増し、保管庫となるストレージの役割も重くなっている。では、その管理者はストレージにおいてどのような課題を抱えているだろうか。これをIDCのレポートから探ってみたい。IDCは世界的なIT調査会社で、そのデータのきめ細かさと信頼性で評価が高い。
その課題のベストテンが以下のグラフ。これによると、中小規模の企業(1人から999人)では「バックアップの効率化」がトップ。2番目が「データ量増大への対応」となっている。
そして、興味深いのが次から続く「ストレージ管理者のスキル不足」「ストレージ管理者の不足」だ。これが、以降の設問の解答からもその深刻さが垣間みれる。
ではストレージ管理者が常に意識しているバックアップには、どのような課題があるのだろうか。これもIDCは調査している。ダントツは「バックアップ時間の短縮」と「バックアップデータ増加への対応」の2つ。これは互いに関連している。データが増加して、そのバックアップに時間がかかり、業務時間にも影響を与えるようになったということである。
3番目に「バックアップ作業の負荷軽減」とあることから、ストレージ管理者は急増するデータ量に悲鳴を上げ、日常のバックアップに時間を費やされ、その効率化に頭を悩まされている像が思い浮かぶ。特に中小規模の企業では、人員不足、人員のスキルが不足しており、この課題が深刻となる。
次にバックアップ手法に注目し、なぜバックアップ作業の負担が大きいのかを確認してみたい。バックアップ手法のトップは圧倒的に「サーバごとのローカルバックアップ」(55.0%)。これよりも半分近く落ち込んで「ネットワークバックアップ」(30.7%)が続く。過半の企業は未だサーバにぶら下がっているストレージを、個々にバックアップしているのである。このあたりにバックアップの時間や作業負荷が減っていない原因があると考えられる。そして、ネットワークバックアップはどうしても、社内LANの負担になる。これがバックアップデータ増加への対応を困難にしている。
もっとも2年以内に導入/検討中の「リモートバックアップ」「WAN経由の拠点間バックアップ」は、ともに拠点に配置しているサーバをまとめてバックする手法。前者がVPNなどの通信回線を利用し、後者が自社WAN回線を利用している。また、「LANフリーバックアップ」と「サーバフリーバックアップ」はともにSAN(Storage Area Network)を利用し、既存ネットワークに負荷をかけないバックアップである。これらの値は拮抗しており、さまざまなバックアップ方法を模索している様子を読み取ることができる。
では、特に中小規模の企業では、どのようにバックアップをしているのだろうか。下図は「導入済み」と「2年以内導入/検討中」を棒グラフにしたものである。これによると、現状圧倒的に多いのが「テープドライブ」によるバックアップ。確かにこれでは時間もかかるし、メディア管理の負荷も大きいかもしれない。
ただ、興味深いのがD2DやNASも多く利用されていることであり、「2年以内導入/検討中」でもこれらは高い値を示している。これは、バックアップ時間の短縮と、万一の際のリカバリーを素早く実施したいという表れであり、今後も目的に応じた導入計画が進んでいくと予想される。
関連情報
掲載日:2009年5月7日
更新日:2009年5月26日