制御事業でグローバルNo.1を目指す横河電機は、グローバル戦略を支えるYGS (YOKOGAWA Global System)において統合ストレージを刷新。今回の重要なテーマは蓄積した基幹データを活用し経営に貢献することでした。自動階層制御の柔軟な運用、システム停止時間の制約の厳しい中での移行などの課題に同社と一緒に取り組むパートナーとして富士通を選択。新統合ストレージにETERNUS DX8700 S2を導入し10年分のデータ蓄積が可能に。また自動階層制御により運用負荷の軽減はもとより、パフォーマンスの向上を図りデータ活用の可能性を広げています。
[ 2014年7月10日掲載 ]
導入事例 横河電機株式会社様 (1,021 KB)(A4・2ページ)
国名 | 日本 |
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業種 | 計測・制御 |
ハードウェア | FUJITSU Storage ETERNUS DX8700 S2 ディスクストレージシステム
Brocade 7800 エクステンションスイッチ FUJITSU Server PRIMEQUEST(MSCSクラスタ構成) FUJITSU Server PRIMERGY |
ソフトウェア | FUJITSU Storage ETERNUS SF Storage Cruiser
FUJITSU Storage ETERNUS SF AdvancedCopy Manager |
「利用者は期末などの繁忙期も普段と同じパフォーマンスで利用できることを求めています。自動階層制御の比率を手動で調整する仕組みが必要でしたが、当社の要件に応えてくれたのは富士通だけでした」
導入前の課題 | 導入による効果 |
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北原 卓 氏
横河電機株式会社
コーポレート本部
情報システム部
部長
生産改革や設備の最大活用、安全確保などに欠かせないのが生産制御システムです。1915年、計測機器事業からスタートした横河電機は1975年に世界で初めて各種プラントにおける生産設備の制御・運転監視を行う分散形制御システムを開発。販売開始以来、制御分野のリーディングカンパニーとしてグローバル市場で高い評価を受けています。また制御と計測の技術を活かし省エネルギーや新エネルギー創出を支援するソリューションの提供など、お客様に高付加価値を提供するソリューション・サービス・カンパニーへの変革を進めています。
制御事業でグローバルNo.1を目指す同社は、グローバル企業としての基盤整備に取り組んでおり、2013年3月期には海外売上高比率(連結)が60%以上に達し、海外ネットワークは34カ国71社に及んでいます。同社のグローバル戦略を支えるICT基盤がYGS(YOKOGAWA Global System)です。
「YGSはグローバルで営業、会計、生産、物流といったサプライチェーン全体を担う基幹システムです。2008年から順次、海外主要拠点への展開を進めており、現在、日本を含め7カ国10拠点に導入し今後も拡大していきます。上流から構築・運用、活用まで携わる当社の情報システム部では、YGSにおいて業務を標準化し見える化を実現したうえでどう活用していくかに取り組み始めています。しかしデータを蓄積し活用するベースとなるYGSの統合ストレージは、ERPだけで年2TB近く増加するデータ量への対応と、蓄積したデータを利用者が快適に利用するためのパフォーマンス向上が急務でした」と、コーポレート本部 情報システム部 部長 北原卓氏は振り返ります。
蓄積した基幹データを活用し経営に貢献するためのストレージを模索していた同社が着目した機能が、ストレージの自動階層制御でした。データの活用時にスピードが求められる場合は高性能なSSD、日常業務はSASディスク、あまり活用しないデータはニアラインSASディスクへと、データの利用頻度、ライフサイクルに応じた階層管理の自動化によりコストを抑えながら最大限のパフォーマンスを実現できます。しかし同社が運用していくうえで自動階層制御では対応が困難なケースがありました。
「営業や生産部門などの利用者はデータ活用がピークとなる期末や月末でも通常時と同じパフォーマンスで利用できることを求めています。またYGSの海外展開に伴う大規模な移行作業の際、すべてのデータを一時的に高性能なSSDにのせることができれば作業の迅速化が図れます。ストレージ自動階層制御の割当て比率を手動で調整(注1)する用途が生じた場合に対応できる仕組みが必要でしたが、当社の要件に応えてくれたのは富士通だけでした」と、コーポレート本部 情報システム部 ICT企画Gr 衛藤弘樹氏は話します。
衛藤 弘樹 氏
横河電機株式会社
コーポレート本部
情報システム部
ICT企画Gr
野口 龍太 氏
横河電機株式会社
コーポレート本部
情報システム部
ICT企画Gr
新しいストレージの採用でもう一つ重要なポイントとなったのが移行計画でした。「時差などを考慮したうえで移行作業のためにYGSを止められるのは8時間だけです。時間の制約とともに万一の際には戻せることも不可欠でした。富士通の移行計画は事前検証の実施、リカバリープランやコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)など綿密に練り上げられており安心して任せることができました」と、コーポレート本部 情報システム部 ICT企画Gr 野口龍太氏は話します。
(注1) ETERNUS SF Storage Cruiserオプション製品で実現
2013年4月、技術や機能、プロジェクト遂行力、コストなど様々に検討を重ねた結果、総合的観点から富士通の採用が決まりました。「YGSの構築・運用の支援に携わっている富士通北陸システムズは当社がICTを使ってやりたいことに対し一緒にチャレンジしてくれる。当社の視点に立ったうえで富士通と一体となり課題を解決していく姿勢が採用の決断を後押ししました」と、コーポレート本部 情報システム部 ICT企画Gr グループ長 林田智也氏は話します。
移行作業では、人事システムの統合に伴う他社ストレージからの移行もありましたが、計画通りに進み、2013年9月に本稼働しました。
YGSの新しい統合ストレージは高性能・高信頼性、大容量ディスクストレージシステムETERNUS DX8700 S2です。基幹IAサーバ PRIMEQUESTとMSCSクラスタ構成にすることで可用性を高めています。またエクステンションスイッチ Brocade 7800を導入しFCIPトンネリングを利用することでETERNUS DX8700 S2のエクステンデッド・リモート・アドバンスト・コピー機能と連携し、本社から300km以上離れたバックアップサイトとの間でWANを介して遠隔地コピーを実現。TCP/IP上の圧縮転送により、WAN回線の帯域幅を有効活用できることからコストを抑えながらDR(Disaster Recovery)を実現しています。
同社は年に二度、DRをチェックするため計画的にシステムの切り替えを行い、1週間程動かした後に切り戻す運用を実施しています。「計画切替時の切り替えと切り戻しはそれぞれ4時間以内です。既存のETERNUS8000は東日本大震災のときもDRサイトに切り替えて事業を継続できました。今回も災害対策の基本的な考え方は変わりません」(林田氏)。
YGS(基幹系・生産系システム)構成概略イメージ図
① ベンダーの異なる複数ストレージを高信頼・高性能なETERNUS DX8700 S2へ統合
② ストレージ自動階層制御機能(ETERNUS SF Storage Cruiserが制御)によるデータ保存コスト・運用管理コストの最適化
③ DX8700 S2およびBrocade 7800(FCIPトンネリング機能)による既存WANを活用した遠隔地コピーの効率化
林田 智也 氏
横河電機株式会社
コーポレート本部
情報システム部
ICT企画Gr グループ長
2013年9月に本稼働後、9カ月が経過し導入効果がはっきりとあらわれています。「自動階層制御では、現状において最大の性能を達成するのではなく、今後の運用や拡張を見据えてパフォーマンスを最適化することにこだわりました。SSDやSASディスクの利用率を制御することでオンライントランザクションのパフォーマンスを20%向上し、その維持を図っていきます。利用者からは『これまで60分かかっていた検索が15分でできる』、『条件を広げて検索しても納得のいく時間で検索結果がでてくる』といった声が寄せられています」と林田氏は話します。
大容量のETERNUS DX8700 S2の導入により、YGSにおける既存ストレージの5年分を含め10年分のデータ蓄積が可能になりました。また自動階層制御によりストレージの運用管理の負荷軽減を図っています。「これまではパフォーマンスを維持するために物理ディスクの管理をきめ細かく行っていましたが、今はデータの再配置などを考える必要がありません。またベンダーに依頼していたディスクの拡張作業も情報システム部門で容易に行えるようになり、利用者の要望への迅速な対応やコスト削減を実現しています」(野口氏)。
今後の展望について「YGSを安定稼働させながら海外拠点に展開していくことは今後も重要なテーマです。またETERNUS DX8700 S2の導入により快適なデータ活用が可能になったことで経営への貢献度を高める活動も本格化できます。富士通にはグローバルビジネスのパートナーとして変わらぬサポートとともにタイムリーかつ積極的な提案をお願いいたします」と北原氏は話します。
2015年に100周年という節目を迎える横河電機。グローバルでさらに成長する同社の事業活動を富士通は総合力と先進技術で支えていきます。
(手前左から)横河電機株式会社 衛藤 弘樹 氏、野口 龍太 氏、北原 卓 氏、林田 智也 氏
(後方左から)株式会社富士通北陸システムズ今井 明、北田 知洋、富士通株式会社 佐々木 彩
今回、ストレージのリプレースが成功できたのは横河電機 情報システム部様のご協力があったからこそと深く感謝しております。ストレージの自動階層制御においても現場で実際どのように使われるのかは富士通としてもまだまだノウハウが不足しているところもあり、いろいろと勉強させていただくことも多々ありました。横河電機様をはじめお客様のご要望をお聞きすることが富士通製品やサービスの品質向上につながります。
YGSはまだ海外展開が進行中であり、基幹インフラのリプレースも控えています。今後も横河電機様のシステムを熟知したメンバーをそろえ、パートナーとして横河電機様とのコミュニケーションを大切に課題解決に取り組んでまいります。
今回、ストレージのリプレースでは移行が大きな課題でした。限られた時間、数十台のサーバという厳しい条件の中で移行をいかに成功させていくか。事前検証は富士通のストレージ部隊と連携し環境を構築して実施しました。またリスク回避のためにプライオリティを考慮した移行の順番や、万一のときに元の状態に戻すプランなど、計画の立案や実行において横河電機様にご協力いただきながら何とかプロジェクトを遂行できました。
ストレージの自動階層制御は新しい機能であり、ストレージ事業部、ソフトウェア事業部と連携して設計・設定に関する課題を一つ一つ解決していきました。横河電機 情報システム部の皆様は技術力が高く、一緒に仕事をさせていただく中で私自身が新たな気づきを得るシーンも多くありました。これからも横河電機様とともに考え、課題解決の一助となるべく力を尽くしてまいります。
所在地(本社) | 〒180-8750 東京都武蔵野市中町2-9-32 |
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代表取締役社長 | 西島 剛志 |
創立 | 大正4(1915)年9月1日 |
資本金 | 434億105万円 (2013年3月末現在) |
従業員数 | 2,958人(個別) 19,837人(連結) (2014年3月末) |
事業内容 | 制御事業、計測機器事業、航空機用計器事業など |
ホームページ |
http://www.yokogawa.co.jp/ |
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は掲載日現在のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。なお、社名敬称は省略させていただいております。
ETERNUS DX8000 S3 series ハイブリッドストレージシステム
多様なビジネス要件に応える柔軟性と、データ保護を実現する抜群の信頼性を提供