「再起動にせよバックアップにせよ、運用への影響を意識することなく、いろいろなことができるようになりました」
[ 2009年4月6日掲載 ]
導入事例概要 | |
業種: | 医療 |
ソリューション: | 院内ポータルシステム 他 |
製品: | PRIMERGY RX200 S4、PRIMERGY RX300 S4、ETERNUS2000 ディスクアレイ モデル200 |
米国聖公会の宣教医師ルドルフ・トイスラー博士によって1902年に創設され、キリスト教精神の下、患者中心の全人的医療を実践する財団法人 聖路加国際病院(以下、聖路加国際病院)。100年以上にわたりその歴史を刻み続ける中で、医療の現場はもちろん、医療を取り巻く環境もめまぐるしく変化してきました。情報化の急速な進展に伴い、インフラには以前にも増して高い信頼性、安定性の確保が要求されており、乗り越えなければならないハードルは増える一方です。いかに最新技術を取り込みつつ、より自由度の高い情報活用を推し進めていくか。このテーマに対し同院が出した答えは、ハードウェア、ソフトウェアを含めた情報活用基盤の刷新でした。
導入前の課題 | 導入による効果 | |
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ハードウェアの老朽化に加えソフトウェアのバージョンも古く、信頼性、安定性の不安を解消したい。 |
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ソフトウェアを含む情報システム基盤の刷新により、最新技術を採用した堅牢かつスケーラブルな情報活用環境が整った。 |
システムの可用性を高めると同時に、障害時における迅速なリカバリーを可能にしたい。 |
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冗長化したサーバ群と高性能・高信頼ストレージにより、運用管理の負荷を抑えたいつでも止められるシステムを実現できた。 |
投資を最大限に活用できるようなITサービスを提供したい。 |
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Windows Server 2003 のMSCS やNLB( ネットワーク負荷分散機能) と組み合わせることで、これまで提供できなかったIT リソースの有効活用が可能になった。 |
医療情報の漏えい、紛失、誤用といったセキュリティリスクへの対応も急務となっています。同院も例外ではありません。10 年間使い続けてきたハードウェアの老朽化に加え、基盤となるソフトウェアのバージョンが古く、不具合の発生が顕著になっていました。最新技術を利用できないもどかしさも手伝って、運用面やセキュリティ面はもちろん、残るサポート期間を考えても、早い段階でのアップグレードが必要なのは明らかでした。
こうしてシステム基盤の刷新が現実的になる中で、職員の情報活用環境においても問題が浮上。同院では、自前で構築したイントラネットサイトが1998 年より稼動しており、さらに2006 年には、イントラネット環境でのファイル共有を目的としたアプリケーションを導入。ポータルとしての機能強化を試みたものの、院内に分散した情報を一元化するには、依然として力不足でした。医療情報センターの副センター長を務める嶋田元氏は、「一番の問題は、とにかく探したいものが探せないこと。アクセス経路が複雑なだけでなく、正確な情報にたどり着けない。これでは誤った情報の下に誤った判断をしかねません」と語ります。ハードウェア、ソフトウェアの両面から既存環境に限界を感じていた同院にとっては、セキュアで使い勝手のよい情報活用基盤を確立し、一日も早くこれらの課題を解決することが最優先だったといえます。
リプレースへの動きが本格化しようとしていた 2007 年11月、同院はマイクロソフトから絶妙なタイミングで紹介されたMicrosoft Office SharePoint Server 2007の導入を決断。ハードウェアのリプレース、サーバOS やメール環境のソフトウェアアップグレードと併せて、新しい院内ポータルの構築に踏み切ることにしました。この決定を受け、構築・導入を任されたのは、株式会社富士通ソフトウェアテクノロジーズです。同社は、院内ポータルの運用を支えるインフラの信頼性に特に重点をおき、サーバには高性能、高信頼のラック型2WAY サーバ「PRIMERGY RX200」と「PRIMERGY RX300」を、ストレージシステムには、コンパクトでコストパフォーマンスに優れた「ETERNUS2000 ディスクアレイ」を提案。さらに、冗長化の実現を重要な柱として、障害発生時のリカバリー対策やディスクの拡張性までを視野に入れた構成を練り上げました。
医療情報センターシステム運用室のマネージャー青木宏之氏は、「とにかく、ハードウェア投資を有効活用できるような構成を依頼しました。せっかく冗長化しても、1台が遊んでしまうようではもったいないですからね」と説明します。まもなく院内の稟議が通り、2008年1月には早くもプロジェクトがスタートしました。
冗長化を目指した新システムでは、ドメインコントローラーをはじめ、Exchange Server 2007、Office SharePoint Server 2007 などを配置した「PRIMERGY」をすべて2台構成とし、FC スイッチを介してRAID を構成した「ETERNUS2000」に接続。ハードウェアの信頼性や安定性を確保しつつ、Windows Server 2003 のクラスタ サービス(MSCS)やネットワーク負荷分散機能(NLB)を組み合わせることで、さらに可用性を高めています。また、日々のバックアップ作業を自動化するために、バックアップソフトウェアにはARCserve を採用。導入を支援した株式会社富士通ソフトウェアテクノロジーズは、「運用面では、ほぼ限界まで管理者の負荷を最小化するよう設計しました。これも、当社が長年培ってきたノウハウを投入した結果です」と自信を覗かせます。
既存環境からの移行にあたっては苦労もあったものの、「株式会社富士通ソフトウェアテクノロジーズの支援があったおかげで、これまで中途半端に構築してきたシステム基盤をきれいに整理することができました。そのうえ、課題への対処も早かったですね。解決しないままズルズルと進むことはなく、次の会議までには必ず方針が立っているという印象でした」と青木氏。遅延なく進行できた理由は大きく2つ。1つは、ペーパーレス化の徹底によってコミュニケーションの密度を高めたこと。もう1つは、導入を担当した株式会社富士通ソフトウェアテクノロジーズのプロジェクトマネジメントのノウハウです。国際規格であるPMP(Project Management Professional)の資格取得者がプロジェクトをリードしたほか、Microsoft Office Project による正確な進捗管理を実施。メンバー全員がスケジュールやクリティカルパスを共有し、致命的な問題を回避しながら進めることができたのです。
システム構築は順調に進み、院内ポータルのコンテンツ開発に着手したのが2008 年6 月。開発作業は院内で行われました。こうして2008 年9 月、ついにユーザー数2,000 名、クライアント数1,600 台という大規模な情報活用環境が整いました。
「ようやく普通のことが普通にできるようになりました」と嶋田氏。懸案だったセキュアな情報共有が可能になったことに加え、院内に分散していた情報を集約することで、情報のスピードと質が飛躍的に向上。システム基盤の信頼性が確実に高まり、管理者の負荷は大きく軽減されています。これで、当初の課題はほぼ解決されたといえるでしょう。「ハードウェア面のメリットを意識してしまうようではダメ」との青木氏の言葉を補足するように、医療情報センター システム運用室の春田潤一氏が語ります。
「不具合がなくなったのは当然ですが、いつでも止められるシステムを実現できたことが大きい。再起動にせよバックアップにせよ、運用への影響を意識することなく、いろいろなことができるようになりました」。
現場における院内ポータルの活用はこれからが本番とはいえ、運用面での安心感は大きな強み。情報活用環境の刷新を機に、堅牢かつ拡張性に優れた基盤を手に入れたことで、医療の現場に新たな可能性が広がりつつあるようです。
設立 | 1902年(明治35年) |
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院長 | 福井 次矢 |
所在地 | 東京都中央区明石町9-1 |
事業内容 | 総合医療 |
病床数 | 520床 |
外来患者数 | 約2,500名(1日平均) |
URL | https://hospital.luke.ac.jp/ |
(注)2009年1月現在
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