セミナーレポート

富士通
マーケティング
フォーラム2020

経営革新

中堅企業の経営革新の正しい処方箋 ~いかにデジタルを正しく活用するか~

講師
慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授
岸 博幸 氏

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが広がっています。一方で、従来の発想とは全く異なる思考の枠組みが必要なことから、DXへの理解が進まない企業も少なくありません。本セッションでは、企業や地域産業の支援に携わる、元通商産業省(現・経済産業省)官僚で現慶應義塾大学大学院教授の岸博幸氏が登壇。中堅・中小企業が、DXへの苦手意識を払しょくし、自らイノベーションを起こして成長を続けていくためのヒントを、テレビでもおなじみのキレのあるトークでわかりやすくお話しいただきました。


低迷する経済成長の中で企業は自力で生産性を上げる

岸氏は冒頭で、潜在成長率がアメリカは2%を超えているにもかかわらず、日本は0.9%と1%を割っており、オリンピック後の2020年代は低空飛行が続くだろう、との見解を示しました。また、潜在成長率を高めるには、企業は政策をあてにせず自ら生産性を高める努力が必要であり、イノベーションを連続して作り出すことが求められると述べました。

イノベーションとは「new combination」であり、今までにない全く新しいものを生み出す「発明」ではなく、すでに世の中に存在するものを新たに組み合わせて、1+1=2以上の効果を生み出すことです。岸氏は一例として、ピーク時には6000億あった市場が2500億まで縮小した音楽業界で、new combinationを作り続けて成長するアイドルユニットや、パフォーマンスグループを擁する中堅企業の商法・戦略を紹介し、これはあらゆる産業において応用可能で、企業の規模にかかわらず実践できることを強調しました。

DXに必要な人の力(=デザイン思考)

「デジタル化の土俵では、中堅・中小企業でもアイデア次第で市場をリードするチャンスがあります。最先端のデジタル技術を導入することが、イノベーションの第一歩です」と岸氏は語り、IT導入に後れをとっていた中堅・中小企業にとって、今が高品質のデジタル技術をリーズナブルに導入できる環境下にあると指摘しました。ただし、ビジネスの核となる製品やサービスの戦略領域でイノベーションを創出するには、デジタル技術のフル活用に加え、人の力=デザイン思考(デザインシンキング)が重要だとし、大学でのメソッドを使いながら、DXに欠かせないデザイン思考を解説しました。

デザイン思考を進める7つのプロセス

デザイン思考には、(1)顧客・ユーザを観察するフィールドワーク、(2)手を動かしフィールドワークの経験を形にする、(3)多様な人材によるチームメンバーで共創する、という3つの重要なエッセンスがあります。これをふまえて、以下の7段階のプロセスで実践していきます。

  • 【第1段階】哲学とビジョンの構築
  • 【第2段階】フィールドワークと技術の棚卸し
  • 【第3段階】コンセプトとモデルの構築
  • 【第4段階】デザイン
  • 【第5段階】実証
  • 【第6段階】実証に基づくビジネスモデルの構築
  • 【第7段階】オペレーション

改良・改善が得意な日本の中堅・中小企業こそイノベーションが起こせる

講義のまとめとして、以下のポイントがあげられました。

  • デジタル化した世界は限りなく資本の差を小さくできる
  • 中堅・中小企業を取り巻く環境は悪くはない
  • 必要なのはアイデアとデザインの力
  • デザイン経営はゼロベースで考えることから始めるべし
  • もう一度顧客とのコミュニケーションをゼロから考える
  • 顧客に必要なもの「以外」を正しく捨てるには技術が必要

最後に岸氏はこう締めくくりました。「必要なのは観察力とアイデア、デザイン力、そして見えない情報を可視化する最先端のデジタル技術です。中堅・中小企業を取り巻く環境は、決して悪くありません。『環境の変化に適応するものだけが生き残る』進化論的視点を持ち、DXとデザイン思考を組み合わせれば、業界、資本力に関係なくイノベーションを起こせる、ゲームチェンジを仕掛けることができるのです」

ページの先頭へ