セミナーレポート

富士通
マーケティング
フォーラム2020

基調講演

「2025年の崖」問題を克服するためのデジタルトランスフォーメーションと我が国の政策展開

経産省の「DX推進指標」診断結果からわかった「DX推進上位5%企業が取り組んでいること」とは
経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」問題。この問題を乗り越えるため、企業はどのようなかたちでDXへの取り組みを加速させていけばよいのでしょうか。2020年2月13日に開催された「富士通マーケティングフォーラム 2020」の基調講演「『2025 年の崖』問題を克服するためデジタルトランスフォーメーションと我が国の政策展開」から、そのヒントを探ります。


本セミナーでは基調講演に先立ち、富士通マーケティング 代表取締役社長 広瀬 敏男 が登壇。今年で8回目となる「富士通マーケティングフォーラム 2020」の概要と、富士通マーケティングがお客様の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」推進を支援する取り組みについて紹介しました。

株式会社富士通マーケティング
代表取締役社長
広瀬 敏男

8回目の開催となる「富士通マーケティングフォーラム 2020」のメーンテーマは「これからを、一緒につくる。お客様と共に新しい価値を創造する」です。

富士通マーケティングは2020年4月に創業73年、10月には社名を「株式会社富士通マーケティング」に変更してから10年という節目を迎えます。現在、全国58拠点に約3400名を擁し、約500社のパートナー企業と連携。コンサルティングからICTシステムの導入、保守・運用、サポートまで幅広く事業を展開しています。RPAによる業務効率化の社内実践をはじめ、お客様に専門的な知識やスキルがなくても、ICTシステムの導入・活用が可能となるクラウドサービス「AZCLOUD IaaS」「AZCLOUD SaaS」の提供にも注力し、2019年にはお客様のDXの推進につながるデジタルビジネスに関する相談が約500件に達しました。

そして2020年には、商用サービスが始まる「5G」を活用した新たなビジネスが生まれてくることが期待されます。富士通マーケティングは、5G、AI/IoT、マルチクラウド、デジタルマーケティング、ビッグデータなど最新のデジタル技術を活用。これからもお客様と共に、デジタル技術革新における新たな価値を創出に継続的に取り組んでいきます。

「2025 年の 崖」問題を克服するためにデジタルトランスフォーメーション(DX)推進政策を理解する

広瀬に続いては、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 ソフトウェア・情報サービス戦略室長の田辺 雄史氏が登壇。「『2025 年の崖』問題を克服するためデジタルトランスフォーメーションと我が国の政策展開」と題した講演で、政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進政策の具体的な内容、経産省の「DX推進指標」にもとづき、DXへの取り組みがどの程度まで進んでいるのかを調査した結果を説明しました。

経済産業省 商務情報政策局 情報産業課
ソフトウェア・情報サービス戦略室長 田辺雄史 氏

「2025年の崖」問題の本質は企業が「経営刷新」に踏み切れるかどうかにある

「2025年の崖」は、大企業の基幹システム(レガシーシステム)刷新の必要性を訴えるものですが、レガシーシステムだけが対象なのではありません。最終的には「経営刷新」を求めるものです。なぜ経営刷新が必要なのでしょうか。2017年の企業IT動向調査報告書によると、日本の企業は「ラン・ザ・ビジネス」と呼ばれる、既存システムの「維持・メンテナンス」にIT予算の80%の予算を割いており、価値を生み出すための投資は20%にとどまっています。一方、企業のIT投資を日米で比較すると、アメリカは2013年の時点で既に、「ITによる製品/サービスの開発」に最も多く予算を割いています。しかし、日本は「業務効率化/コスト削減」にもっぱら予算を割いており、戦略的なIT投資、「攻めのIT投資」には予算を割いていないのです。だからこそ、経営刷新が必要なのです。


日本は「業務効率化/コスト削減」といった「守りのIT投資」が多い

経産省の「DX推進政策」は、攻めのIT投資の重要性を踏まえ、企業におけるIT投資の適切な配分をすすめるという考えの中から生まれた政策です。そして、経産省では、2025年までにDXを推進するためにどのような取り組みをすべきかを「DX推進ガイドライン」としてまとめ、2018年12月に発表しました。

その内容は、経営側の「DX推進のための経営のあり方、仕組み」とシステム側の「 DX を実現する上で基盤となるITシステムの構築」の2つに分かれています。このうち、「DX推進のための経営のあり方、仕組み」のパートは、DXの実現やその基盤となるIT システムの構築に向けて経営者が押さえるべき事項を明確にし、取締役会や株主が DX の取り組みをチェックできる内容になっています。


「DX推進ガイドライン」ではDX推進のための経営の在り方、仕組みが示されている

「DX推進ガイドライン」と「DX推進指標」で具体的なアクションにつなげていく

DXとは経営刷新であるという考えに立てば、経営者自らがリーダーシップを取り、データとデジタル技術の活用によるDXで目指すべき方向性を示し、持続的な経営改革を進めることが重要になります。その推進のために、ガイドラインの内容をより具体的に指標化して示したのが「DX推進指標」です。指標をもとに自己評価することで、DX推進における「自社の現在の立ち位置」を知ることができます。企業と経営者にとっては、これまでシステムの「維持・メンテナンス」のために使ってきたIT投資を、これからはどのような経営戦略で「攻めのIT投資」に振り分けていくべきなのかの道筋を明確にできる指標です。

「DX推進ガイドライン」と「DX推進指標」は、経営者の方がDXを推進し経営改革を行っていくにあたり、気づきの機会を提供し、アクションにつなげていくためのツールです。
例えれば、健康診断の問診票や血液検査のようなもので、自己診断の結果が出ることで、自社の遅れている部分、弱い部分、あるいは伸ばしていきたい部分を認識することができます。そして、必要に応じて精密検査(戦略コンサルやITベンダーによる詳細診断)や、専門医による治療(各社支援によるITシステムの構築・改修・刷新)につなげていくことができるのです。


「DX推進指標」による自己診断は、健康診断における血液検査や問診票。必要に応じて人間ドックや専門医による治療へとつなげていく最初の一歩

DXを推進する上位5%の企業が「意識して実践している」こととは

この「DX推進指標」をもとに、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が、2019年11月に233件の診断結果を分析しました。それによると233件のDX推進における「成熟度レベル」は1.4でした。1.4とは「一部での散発的実施」と「一部での戦略的実施」の中間ぐらいの成熟度です。「従業員規模300人以上の中堅から大規模企業が対策を始めている傾向である」という結果と考えられます。

なお、233件の回答の上位5%、10社の平均値は「3.41」でした。この上位の回答に位置するようなDXを推進する企業へのヒアリングを通じてわかったこととして、これらの企業が意識していることは次の5つであることが見えてきます。


DXを進めている企業の共通項例

また、指標の項目の中からその差を見ていくと、高いスコアを出した企業が共通して意識していることは「危機感」です。また、「顧客や市場、業務内容に精通しつつ、デジタルで何ができるかを理解し、DXの実行を担う人材の育成・確保に向けた取組み」に注力していることも共通しています。さらに、人材融合に積極的に取り組んでいることも共通していました。「技術に精通した人材」と「業務が融合した人材」が融合してDXに取り組む仕組みが整えられるように、工夫をされているのです。

一方、システムの構築や刷新に関する取り組みで、高いスコアを出した企業に共通していることは「廃棄」です。これは、「価値創出への貢献が少ないもの」「利用されていないもの」を「廃棄できている」ということです。そして、各事業部門がITシステムの導入・活用において「オーナーシップを持っている」ことも共通しています。「ITのことはよく分からないからベンダーに任せる」ではなく、各事業部門が、「こうやりたい」という意思を明確に持ち、それに対して「責任を持って取り組んでいる」ことの表れと言えます。さらには、ITシステムを導入・構築できたかどうかを評価のポイントとはせずに、「ITシステムを活用してビジネスがうまくいったかどうか」までを評価しています。こうした取り組みをするかしないかによって、DXの進捗度にも差異が生まれてくると考えられるのです。

2019年の臨時国会では、情報処理の促進に関する法律の一部が改正され、「国としてDXを進めていこう」という方針が法改正に込められました。国としても、社会システム全体をデジタル前提の仕組みに作り直さなければいけないことを認識し、新しい技術を迅速に、ビジネスに結び付けていくことを意識する必要があると考えています。これからは、多くの企業が、ITシステムやデジタル技術を導入するだけではなく、どう活用してビジネスとして成果をあげていくかが重要になります。その助けとなるのが、政府によるDX推進事業でもあるのです。

ページの先頭へ