サステナブルな社会を生きる企業のDXとは~FUJITSUファミリ会秋季大会レポート~

目次
  1. 企業に求められるSDGs対応を異業種交流で考える「FUJITSUファミリ会」
  2. 富士通はサステナブルな社会に向けて、カルチャー変革にどう「本気で」取り組んでいるのか
  3. 業種リーダーのSDGsの取り組みとは
  4. 2030年に向けた私たちの舵の切り方

企業に求められるSDGs対応を異業種交流で考える「FUJITSUファミリ会」

FUJITSUファミリ会(以後ファミリ会)は、今年で57年目を迎える国内最大の情報通信システムユーザー団体です。2021年10月現在で約3,900企業が在籍し、様々な業種の会員交流を通して、それぞれの課題解決やビジネス成長に向けた最新の情報共有をはじめ、DX人財の育成も目的として活動しています。
ファミリ会の年度最大のイベントである「秋季大会」を、2021年11月24~26日の3日間にわたってオンラインで開催しました。「サステナブルな社会を生きる企業のDXとは」をテーマに、SDGs達成やESGにおいて企業がとるべきDXについて情報交換を行いました。そのポイントを、ファミリ会運営事務局がレポートします。

図1 図1 FUJITSUファミリ会活動

富士通はサステナブルな社会に向けて、カルチャー変革にどう「本気で」取り組んでいるのか

SDGsという言葉が社会に広く浸透し、ビジネスの世界でもSDGsの達成やESGへの貢献が求められています。しかし一方で、社員からは自分たちの業務との関係性が見えにくく、サステナブルな世界をどう実現していけばよいのか分からないという声も聞きます。富士通も同様の課題を持っていますが、どのようにして乗り越えようとしているのでしょうか。現在進行中の取り組みについて、まずは、富士通執行役員常務/CIO/CDXO 福田 譲さんの講演をレポートします。

富士通株式会社 執行役員常務/CIO/CDXO 福田 譲さん

「富士通では、2030年のサステナブルな世界を実現させるためには、富士通自身も大きな変革が不可欠であると考え、2010年10月、全社DXプロジェクト『フジトラ』を開始しました。ここでいうDXとはデータやデジタル技術活用のことだけでなく、自らの業務プロセスや組織、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することです。『フジトラ』では現在までに約150ものテーマの改革に取り組んでいます」(図2)。

図2 図2 フジトラでの変革取り組みテーマ例

「富士通の事業をSDGs・ESGに近づけるため、事業ポートフォリオとビジネスモデル変革にも取り組んでいます。先月、サステナブルな世界の実現を目指す事業ブランド「Fujitsu Uvance」を策定しました。Uvanceは、あらゆる(Universal)ものをサステナブルな方向に前進(Advance)させるという2つの単語を合わせた造語です。2030年のサステナブルな世界を想像した際、世界が直面しているであろう社会課題から7つのKey Focus Area(重点注力分野)に絞り、事業を進めると決意しました」(図3)。

図3 図3 7つのKey Focus Area(重点注力分野)

「富士通は昨年、『イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていく』という企業パーパス(存在意義)を掲げました。このパーパスのもと、7つのKey Focus Areaに代表する社会課題を解決するには、社員ひとりひとりがパーパスを持ち自己認識することが重要と考え、各個人のパーパスを対話を通じて掘り当て言葉にする『パーパス・カービング』のプログラムを、全社員13万人に実施中です(関連記事:DX実現のカギは、〈個人のパーパス〉)。社員ひとりひとりのパーパスと富士通のパーパスとの重なり合いが、変革への原動力になるという想いから実施しています。」
なぜ13万人全員に実施するかの理由について、福田さんは「気候変動やエネルギー問題など様々な課題が深刻な今の時代、ここで富士通の根本を変えないと、20年後の富士通はあるかどうか分からない。同時多発的に様々な変革を行っていくには、経営陣だけが変わるのでは足りない。全員で変えていきたい」と力強く話していたのが印象的でした。

業種リーダーのSDGsの取り組みとは

ファミリ会では、様々な企業のサステナブルな取り組みについても知ることができる点が魅力です。秋季大会では会員企業の代表として業態の異なる4社の事例発表を行いました。そのうちSDGs実現に向けた取り組みが進まれている2社についてご紹介します。

JFEシステムズ株式会社
JFEシステムズは、川崎製鉄株式会社(現JFEスチール株式会社)の情報システム部門から独立し設立されたユーザ系情報システム会社です。「JFEグループのDX戦略~巨大製鉄所の生産性向上とカーボンニュートラルへの挑戦~」をテーマに、代表取締役社長 大木哲夫さんにご講演いただきました。
JFEスチールグループを含む、製造流通業界向けのデジタルトランスフォーメーションの推進部署としてDX推進部を新設(今年4月)。最新のデジタル技術の導入と豊富なデータ・ノウハウ・技術を最大限に活用し、グループ全体で事業変革を推進、新たな付加価値商品やサービスの創出、環境変化のリスクを成長機会へと繋げるなど多角的な取り組みを行っています。
また、カーボンニュートラルについては、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を掲げ、“2050年カーボンニュートラル”(2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする)を目指して、グループ全体で長期的な挑戦をし続けるとのことでした。

JFEシステムズ株式会社 代表取締役社長 大木哲夫さん

株式会社髙島屋
持続可能なビジネスを続けられるかという危機感は、百貨店業界でも同様です。「百貨店危機―髙島屋は持続可能であり続けられるか」をテーマに、髙島屋の執行役員 大川さんにご講演いただきました。
多くの百貨店では、大量の電力消費、廃棄物(廃プラスチック・食品ロス)、アパレル商品の過剰在庫が重大な事業リスクとして認識されています。百貨店業界が抱えるこれら構造的課題を直視し、改革断行による持続可能な業態への転換が急務です。
髙島屋は創業当時より、お客様の大切な着物や帯が綺麗に長く着られるようにと、和装の染み抜きや仕立て直しといった技術やサービスを提供してきました。この様に根底として流れる伝統的な意識を反映した、衣料品の回収・再生・販売の循環型スキームDepart de Loop [略して“デパルー”(大川さんはこの“デパルー”を一般用語として広めたいとのこと)]を構築。売りっぱなしで終わることなく、再生し続ける仕組みを提供しています。再生可能エネルギーの導入や生ごみのメタンガス発電への活用など、事業活動を通じて様々な取り組みを提案し、サステナブルなビジネスモデルへの変革を推進しています。

株式会社髙島屋  執行役員 情報システム部長 大川秋生さん

2030年に向けた私たちの舵の切り方

秋季大会ではこのように、様々な会員の取り組み事例発表のほか、最終日の3日目には、研究分科会の入賞報告も行いました。異業種の会員どうしが共通テーマについて1年間研究を重ねた成果の発表です。これらの研究は、DX人財の育成に大きく貢献していると評判の高いプログラムです。
SDGs・DXについての最新情報を知り、様々な業種との交流を通じた活動が可能なファミリ会。ファミリ会会員と富士通との関係性について、福田さんは次のように述べています。「時代の変曲点である今、皆さまの本業をどう変えていき、そこに富士通のテクノロジーをどう掛け算し、一緒に社会にインパクトを与えていくのか。ともに考え、お互いの事業を支えあう関係性を一層高めていきましょう」
持続可能な社会の実現は、1社だけでは達成できるものではありません。ぜひファミリ会に入会いただき、ともに持続可能な社会をつくりあげていきましょう。

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