「デジタルネイティブ」が社会の一線に躍り出るとき、デジタルマーケティングはどう変わるのか?(前編)

2019.5.16 ライター:大久保 惠司

ザッカーバーグの最年少記録を塗り替えたのは、21歳の女性、カイリー・ジェンナー

アメリカの経済誌「フォーブス」が世界長者番付「The World's Billionaires」の2019年版を発表しました。今、世界一の大金持ちは、米Amzon.comのジェフベゾスです。

2019年版では、保有資産額10億ドル以上のビリオネアは2,153人。その中で21歳のカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)が史上最年少で初のランキング入りを果たしました。これまでの最年少記録はフェイスブックのマーク・ザッカーバーグの23歳(2008年)だったので、ザッカーバーグの持つ記録をカイリーが塗り替えたことになります。

カイリー・ジェンナーは大人気のコスメブランド「カイリー・コスメティクス」を18歳で立ち上げ、たったの18ヶ月で売上高4億2000万ドル(約462億円)を達成しました。彼女は、短期間のうちに、若い女性たちに大人気の化粧品ブランドを育て上げたということになります。

カイリー・コスメティクスの成功の裏には、ソーシャルメディアの存在が大きく影響しています。彼女は元々セレブの家に生まれ、小さい頃からテレビに出演したり、モデルとして活動するなど、すでに有名人でした。そんな彼女のInstagramのフォロワー数は、1億2,170万人(2018年)。

彼女自身が
「ソーシャルメディアは素晴らしいプラットフォーム。本当に簡単にファンや顧客にアクセスできるんだもの」
と語っている通り、ソーシャルメディアとそれによるトレンド・セッティングが、彼女のビジネスのほとんど全てと言ってもいいでしょう。

Instagram、twitter、Snapchatなどの既存のSNSに加え、自身のアプリをリリースしたり、有料のWebサイトを運営したりして、デジタルメディアを駆使している彼女。カイリー・ジェンナーはミレニアル世代を代表するデジタルネイティブなインフルエンサーと言えるでしょう。

ミレニアル世代が社会の第一線に躍り出す

ミレニアル世代とは、西暦2000年代に米国で成人、あるいは社会人になる世代を指し、1980年〜2000年に生まれた人々のことを言います。社会に出るか出ないかの頃に、世界経済の転換点となった「リーマンショック」に遭遇し、それまでとは大きく違う価値観や経済感覚、職業観を持っています。

米国のミレニアル世代を研究している「Global Millennial lab」によれば、その人口ボリュームはベビーブーマーの7400万人を超え、1億人と言われています。この世代のデモグラフィック的な特徴を、2015年の米国勢調査局の発表から見てみると、アメリカのこれまでのどの世代と比べても白人人口が少なく、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系など非白人系民族に属する人が全体の44.2%に達し民族的に多様になってきています。

前述のように、2000年代初頭の「ITバブル崩壊」、2008年の「リーマンショック」に遭遇し、とりわけ厳しい経済環境のあおりを受けた世代で、若年期の頃の失業率が高く、晩婚化や親との同居率がアメリカの歴史上最も高い世代となっています。

その特徴を「Global Millennial lab」の分析から紹介すると…

  • デジタルネイティブである
  • 健康志向が高い
  • 90%がSNSの推薦を信頼している
  • 広告を信頼しない
  • 社会貢献や自然保護を支持している
  • 物よりも体験に価値を見いだす
  • ブランドとの関係構築は必須
  • 異文化への興味が高い
  • ミレニアル世代の半分は独身(ただし、結婚する気はある)
  • 可処分所得が高い(世帯年収はおよそ8万ドル)

特に、「生まれたときから身の回りにデジタル機器が存在していた『デジタルネイティブ』である」というのが彼らの大きな特徴です。彼らは10代の頃から恵まれた情報通信や、急速に普及したデジタル機器の恩恵を受けて、欲しい情報をすぐに得られる環境で育ってきています。SNSなどを通じて、友人との共感を重視したコミュニケーションが定着しているのもこの世代の特徴で、モノよりも経験を重視し、広告よりもSNSを介した口コミを重視しています。

2030年代の半ばにはミレニアル世代に属する全ての人が40歳を超え、社会の中核になっていく事から考えてみても、彼らの価値観がこれからの社会の新たなトレンドになって行くのではないでしょうか。つまり、従来のマーケティングが通用しない人々が社会の第一線に躍り出て、消費生活をリードする存在になって行くのです。

本記事のライター
大久保 惠司(おおくぼ けいじ)
SOCIALING LAB LLC 代表
社会というエコシステムの中で、共生できる企業、組織、ブランド、商品をクライアントとともに考えています。

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