真の働き方改革達成には現状の「見える化」が重要
コア業務の比率が約2割増加したAIの活用による改革とは

2019年度から「働き方改革関連法」が施行されたことを受け、あらゆる企業が働き方改革へ取り組むことが急務となっている。では、現状の働き方をどのように変えたらいいのか。厳密な残業管理や有給休暇取得の徹底だけが、働き方改革だと思っているなら大きな間違いだ。働き方改革の本質をとらえ、より的確な対策を取ることが必要になる。そこで、人工知能(AI)を活用して日々の業務の全体像を業務ごとに分類、客観的に“見える化”し、労働時間を増やすことなくコア業務の比率を約2割増加させた働き方改革の実践法を紹介する。

  • 本ペーパーは2019年5月に開催された「富士通フォーラム 2019」の講演より、再編集されたものです。

40年後、労働人口は3割になるという衝撃

富士通株式会社
シニアエバンジェリスト 松本 国一

日本企業を取り巻くビジネス環境は年々厳しさを増している。このような環境下で、従業員の労働時間を単純に減らせば、企業の競争力は低下するだろう。そもそも働き方改革とは、何を目指した取り組みなのか。

「働き手の生産性を高め、近未来の社会環境に対応しながら、日本企業のビジネス競争力を維持・向上していくことこそが、働き方改革における真の目的なのです」と、富士通 シニアエバンジェリスト(働き方改革担当)の松本国一は説明する。さらに働き方改革を実践するために重要なこととして、「日々の業務の中に潜む不要な業務をやめることや、無駄な手順の変更をすることなど、非効率な作業を見直し、より効率的な方法に変え、企業価値と従業員の生活の質を高める取り組みが求められています」(松本)。

これからの日本は、超少子高齢化社会という未曽有の状況が待ち受けている。内閣府による平成29年版少子化対策社会白書の中では、2020年から2060年までの40年間に、15歳以上65歳未満の労働人口が約4割減ると試算されている(図1)。しかも、職場の高齢化も進み、2025年には企業従業員の2人に1人は50歳以上が占めるという。

さらに深刻なのは、介護に関わる問題だ。多くの従業員が親の介護に時間を割かなくてはならず、介護と仕事の両立ができる環境を整えなければ、間違いなく離職者は増える。無策なままでは、どんな優良企業であっても人材不足で今の事業は存続できなくなる。

労働時間を単純に短くしても生産性は向上しない

このように人材不足の危機が顕在化しつつある今、働き方改革は企業の至上命題だ。このため既に多くの企業が働き方改革に取り組んでいる。IDC Japanが発表した「2019年国内働き方改革ICT市場企業ユーザー動向調査」によると、働き方改革に取り組んでいる割合は大企業で78.3%、中堅企業で53.5%という結果となった。
これらの企業で実践されている具体的な施策は、大きく2つに分けられる。1つは、「残業時間の短縮」「子育て介護支援」「フレックス勤務制度の導入」といった制度の変更。もう1つは、「残業時間の管理」や「テレワーク」、「仕事の進捗の見える化」に代表される仕組みの導入だ。そのいずれもが社員の就労時間の短縮を目的とした施策であり、生産性の向上を目指したものとはいえない。

なかには、テレワークを導入して、社員がより効率的に時間を使って業務を遂行できる環境を整備する企業も増えている。しかし、テレワークを実施している社員の時間管理や業務内容把握が難しいという問題があるとともに、企業情報の漏えい防止には細心の注意を払わなくてはならないといった運用上の課題も内在している。

図1: 2060年の労働人口は、2020年比で最悪3割以下になってしまうことも考えられる

このような働き方改革の現状に対して松本は、「企業は、残業時間の罰則付き上限規制や有給休暇の取得義務化などを定めた法律を、忠実に守ることだけに注力しています。しかし、法律の意図は、働き手の生産性向上を目指すことである点を認識する必要があるのではないでしょうか」と警鐘を鳴らす。多くの企業が現場を見ることなく、表層的成果を求める働き方改革しか実施できていない。

このため、本来は働き方改革の恩恵を受けるべき社員に、実感は乏しい。一般社団法人日本能率協会が2018年に20代~60代の働く男女1000人を対象にして実施した調査によると、働き方改革が進んでいることを「(全く+あまり)実感していない」と答えた人が68.8%を占めた。最も多い理由として、「無駄な業務・会議が減らないから」と回答。本来、働き方改革とは、例えば営業であればお客様向けに提案資料を作成するなど、部門において本来やるべき主要業務である"コア業務"に注力できる体制をつくり、企業価値と社員の生活の質を維持・向上すべきである。しかしながら、伝票整理や社内発注業務など付帯業務である"非コア業務"が多いにも関わらずそれに気づかず、無駄な業務削減をするとともに業務の進め方の改善に着手できていないというのが現状だ。

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真の働き方改革達成には現状の「見える化」が重要
コア業務の比率が約2割増加したAIの活用による改革とは

概要

  • 40年後、労働人口は3割になるという衝撃
  • 労働時間を単純に短くしても生産性は向上しない
  • 働き方改革の起点は職場の見える化、業務に潜む無駄と非効率をあぶり出す
  • 有給休暇取得を1.5倍に増やしながら、コア業務の時間を16%増加

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