社員16万人の「知」を共有し、働き方改革を実現させた仕組みとは?

仕事が暗礁に乗り上げた。同じような経験をした人から解決につながるアドバイスがほしいが、誰に聞けばいいのか分からない──。こうした悩みを解決するには、組織に散在する「知」を簡単に見つけ出せる仕組みが必要だが、その構築は一筋縄ではいかない。全世界にグループ社員16万人を抱える富士通も以前は同様の課題を抱えていた。同社は、この課題をどのように解決し、働き方改革を実現したのか。具体的な取り組みと、そこで得られた成功に向けたノウハウを見ていこう。
※このコンテンツは2017年3月にTechTargetジャパンに掲載したものです。

「組織の生存は知識労働者の仕事ぶりによって左右される。最高の知識労働者を惹きつけ留める力こそ、最も基礎的な生存の条件である」。経営学の巨人、ピーター・ドラッカー氏は1999年に出版した『明日を支配するもの』で、知識が組織の競争力を決定する最大の資産であると説いた。

それから約20年、企業組織における「知」の重要性は高まる一方だ。デジタル・ディスラプション(破壊)が様々な産業で起こり、多くの企業がビジネスモデルの再構築を迫られている中、仕事に占めるルーティンワークの比重は下がり、誰もが変革と創造のために「知」を活用しなくてはいけない時代になった。

それは個人の知識を増やすことにとどまらない。組織を構成するメンバーそれぞれが持つ「知」を共有し、目的に応じて自在に出し入れできる環境が不可欠となっている。

それを実現するのが「ナレッジマネジメント」のICTシステム。既に20年以上前から様々な企業で構築、活用されてきた。

「ナレッジマネジメントシステム」が抱えた課題

だが課題も多い。例えば、富士通でもかつてはこんな具合だった。

  1. グループ会社や部門ごとに縦割りのシステムが構築されているため、あるキーワードに関わる情報を探索するには複数システムに順にアクセスしなくてはいけない
  2. システムで入手した情報についてもっと詳しく知りたくても、担当者が分からない。もしくは担当者へのアクセス手段がない
  3. ナレッジマネジメントシステムが扱う情報や活用規定を細かく設定すると、システムが複雑になる

こうした課題を放置しておくと、「手間をかけてナレッジマネジメントシステムに情報を収容しても、検索や閲覧がやりにくくて活用されない。情報を提供する人のモチベーションも下がって情報が蓄積されなくなる」という悪循環に陥ってしまう。結果的にナレッジマネジメントシステムが形骸化したり、運用自体をやめてしまったりする羽目になる。

これを反面教師とするなら、「知」の共有のための仕組みには以下のような要件があるといえるだろう。

  1. 情報の物理的な所在に関わらず、利用者が1つのキーワードで統合的に検索できる利便性の高さ
  2. 情報やノウハウの「持ち主」にスムーズにアクセスできるコミュニケーション機能
  3. ナレッジマネジメントシステム用に改めてコンテンツを作らなくても、日々の仕事で得た情報やノウハウを自然に蓄積し、公開できる仕組み

上記のような環境が実現すれば、利用者は「ビジネスモデルの転換」といった大きなテーマから、「日常業務の課題解決」に至るまで、日々社内の「知」を活用して目的を達成できるようになる。

それはどのような姿なのか。富士通の「グローバルコミュニケーション基盤」活用術を例に考えてみよう。

統合コミュニケーション基盤の3つの目的

グローバルコミュニケーション基盤とは、電話、メール、インスタントメッセージ、Web会議、社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、企業内動画(ビデオ)、VDI(デスクトップ仮想化)、そして個人やチーム専用のワークスペースなどを統合した統合インフラを指す。2014 年までに全富士通グループの社員16万人に展開した。

同社がグローバルコミュニケーション基盤を活用して進めている取り組みは大きく3 つある。「コミュニケーションの強化」「場所と時間を選ばない環境(テレワーク)」、そして「グローバルでの知の共有」だ。

本題の「知」の共有に入る前に、その前提となる「コミュニケーションの強化」の実践に触れておこう。

グローバルコミュニケーション基盤は、同グループ内の社員同士のコミュニケーション方法を大きく変えた。世界のどこにいる相手とも、インスタントメッセージやWeb会議などでつながることができる。相手が在席しているかどうかをコンタクトする前に確認できるプレゼンス機能もある。使用する端末はパソコンでも、スマートフォンやタブレットでも構わない。

グローバルコミュニケーション基盤を導入する2010年以前は、海外を含め約200のグループ会社が個別にメールサーバーを運用、社員同士のコミュニケーションはメールが中心だった。だが相手のレスポンスが悪かったり、複数のメンバー間では行き違いが生じたりすることもあった。相手がメールを見ていない可能性があるため、会議を開く際も日程に余裕を持たせなくてはいけなかった。

「現在は、コミュニケーションをとりたい社員はまず相手が席にいるかをプレゼンス機能で確認し、聞きたいことをインスタントメッセージで送ります。ほとんどの場合は、その方法でリアルタイムに問題が解決します。それでも解決できない場合は、会話が有効であればWeb会議に移ります。Web会議は、資料やお互いのデスクトップ画面を共有しながらコミュニケーションが取れるため、メールと異なり要点だけ伝え合うことができ、コミュニケーションが非常に早くなりました」。導入したコミュニケーション基盤の活用状況を、富士通IT戦略本部グループ共通サービス統括部シニアマネージャー中村元晃はこう説明する。

5分~10分の短い会議だけでなく、深い議論が必要な会議についてもWeb会議を活用しており、移動時間や出張旅費の削減など効果を発揮している。

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組織の「知」を共有するコミュニケーション基盤はこう作る

概要

  • 「ナレッジマネジメントシステム」が抱えた課題
  • 統合コミュニケーション基盤の3つの目的
  • グループ16万人社員の「知」を共有
  • 社内イノベーターを発掘、取材してメディアで発信
  • 「第3のスペース」で仕事、隙間時間を有効活用
  • マルチクラウド環境への移行が進行中

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